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【読書感想】稼ぐ! プロ野球 新時代のファンビジネス

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稼ぐ! プロ野球 新時代のファンビジネス (PHPビジネス新書)

  • 作者:喜瀬 雅則
  • 発売日: 2021/03/19
  • メディア: 新書


Kindle版もあります。

稼ぐ!プロ野球 新時代のファンビジネス (PHPビジネス新書)
  • 作者:喜瀬 雅則
  • 発売日: 2021/03/19
  • メディア: Kindle版

なぜ、福岡ソフトバンクホークスが「ラスベガス」、北海道日本ハムファイターズが「街」を創るのか
「野球」だけがビジネスではない! データ活用、SNS戦略、グッズ展開、コミュニティ・・・利益と熱狂を生み出す“勝利の方程式"

プロ野球を見れば、いまのビジネスがわかる――。少子高齢化に伴う「野球離」が進み、これまでのようなビジネスモデルでは経営が立ち行かなくなったプロ野球。今後、コロナ禍により、深刻な経営難に陥る球団が出てくる可能性もささやかれている。だが、指をくわえて待つわけではない。かつてのチケット販売を主体とした収益構造から脱却し、独自のカラーを活かして経営を行なう「稼ぐ球団」が存在感を示している。

エンタメ施設の運営に乗り出した福岡ソフトバンクホークス、“異色の"新スタジアム建設を進める北海道日本ハムファイターズの狙いとは。さらに、映像権の販売やグッズ展開に汗を流す元プロ野球選手たち……。本書では、パ・リーグ球団を中心に、ファンを魅了し、収益を確保するビジネス戦略を解説するだけでなく、そこに携わる球団スタッフの働き方・生き方にもスポットを当てる。現場を訪れ、当事者の生の声から浮かび上がったプロ野球の課題と新たな可能性とは。野球ファンはもちろん、日々バッターボックスで勝負に挑んでいるビジネスパーソンにとって「希望の書」となるビジネスノンフィクション。

 「スポーツビジネス」って言うけどさ、結局は球団やチームの金儲けで、入場料は上がるし、そのスポーツとは関係のないエンタメ施設が周囲にできていくだけで、ファンにとっては、むしろ悪い面のほうが大きいのではないだろうか……みんな「アメリカは、スポーツでこんなに稼いでいる!」って言うけど、そのお金を払っているのはこちら(ファン)なんだし……
 というのが、僕の偽らざる本音でもあるのです。

fujipon.hatenadiary.com

 以前、この本を読んで、僕は考え込んでしまったんですよ。

 ポルトガルのリスボン空港を経営する「ヴァンシ・エアポート」というフランスの空港オペレーターがあります。最近、関西空港と伊丹空港の経営権を日本のオリックスと組んで購入した会社なので、お聞きになったことがあるかもしれません。

 そのヴァンシがリスボン空港を買った時、最初にしたことは、ターミナルの導線を変える改装工事でした。改装の内容は単純で、以前はエレベーターを上がるとまっすぐ搭乗ゲートへ向かうようになっていた直線の動線を、わざと迂回させ、店舗エリアを通らなければ搭乗ゲートへ行けないようにしたのです。たったそれだけのことですが、店舗の売上は目に見えて伸びたのです。
 第1章で紹介した新石垣空港の動線——両側にショップが並ぶ狭い通路を通らせて購買意欲をかき立てる——は、これと同じ発想ですね。到着口にカフェを配置し、待つ人にコーヒー1杯でも飲んでもらうというのも、海外空港では当たり前の光景になっています。

 「ビジネスを行う側」からすれば、これは良案なのでしょう。
 でも、飛行機で移動したい人にとっては、買い物をしてもらうためということで、わざわざ遠回りさせられるのは、不快だし、非効率的じゃないかと思うんですよ。
 僕がそういうことに過敏なだけで、大部分の人は、お土産とかブランドショップを眺めながら歩くのは苦にならないのかもしれませんが……

 そういう僕の「なんで野球を観ることに集中させてくれないんだ?」という疑問に対して、この本は野球界が抱えている現状を踏まえて、答えてくれているのです。

 長年、プロ野球の球団経営は、巨人や阪神などの一部の人気球団、あるいは、経費を削減して「まず黒字であること」を前提としていた広島を除いては「赤字を親会社が埋め合わせる代わりに、球団を持っていることでの宣伝効果を得る」という構造になっていました。

 2004年度にオリックスと近鉄の球団合併に端を発した球界再編騒動時の経営状態について、著者はこんなデータを示しています。

 2003年度(平成15年)の赤字額は、近鉄が約38億8000万円、オリックスは約37憶円。年間経費は、近鉄が約84億円、オリックスは約71億6100万円。
 ただ、その内訳に関しては「球団は上場企業でないから」と公表されなかった。
 経営実態は、事実上”ブラックボックス化”されていたのだ。

 僕も球団再編騒動の頃は、「プロ野球チームを減らすなんて!」と憤っていましたが、今、こういう数字をみると、経費の半分しか稼げず、年間40億円近くの赤字を垂れ流している状況をなんとかしたい、と考えるのは当然だと思うのです。
 
 あの「チームが減るかもしれない不安」、そして、「近鉄の消滅」という経験があったからこそ、プロ野球チーム、とくにパリーグのチームは「親会社依存、前例をただ踏襲する、というのではなく、自分たちのチームで稼いでいく、さらに、プロ野球という人気コンテンツを生かして、さらに大勢の人を集め、お金を稼げるシステムを作り上げていく」ようになりました。

 僕は長年、広島カープのファンなのですが、「カープ女子」が話題になり、黒田、新井の復帰、セリーグ3連覇を成し遂げられたのは、「スカウティングをしっかりやって、良い選手を獲得し、強くて魅力的なチームになったから」だと以前は思っていたのです。

 でも、あらためて考えてみると、カープが強くなったのは、それまでの老朽化した広島市民球場から、マツダスタジアムという「ボールパーク」に本拠地が移り、観客数が増えたことが大きかったのです。
 オールドファンとしては、市民球場に懐かしさを感じずにはいられないのですが、観戦の快適さという点では、(混雑していてチケットが取りづらいことを除けば)マツダスタジアムに軍配が上がります。

 長年低迷してきたチームをみてきたファンからすれば、「チームが強くなればお客さんが増える」と考えがちなのです。
 しかしながら、僕がカープファンとしてあらためて考えてみると、「観戦が快適になり、情報発信がうまくいったことによって、球場を訪れるファンが増え、チームの財政も改善され、そのことによって良い選手を獲得できるようになったし、選手のモチベーションも上がって強くなった」というのが本当の順番なのではないかと思います。

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