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焦点:日本の官民連合、ミャンマーで不動産開発 土地賃料が国防省に


Ju-min Park John Geddie

[東京 25日 ロイター] - ミャンマーで総額300億円以上の不動産開発事業を進める日本の官民連合が、ホテルやオフィスなど複合施設を建設する用地の賃料を支払い、それが最終的にミャンマー国防省に渡っていたことが分かった。ロイターが取材した複数の日本企業、政府関係者が認めた。

「ヤンゴン市内都市開発(Yコンプレックス)」と呼ばれるこの事業が、ミャンマー国防省の利益につながっていたことを日本側が認めたのは初めて。日本側は賃料の支払い先が国防省であり、ミャンマー政府だと認識していたが、国防省は2008年に制定された憲法上、国軍の支配下にある。

同事業には日本から大手ゼネコンのフジタコーポレーション、大手不動産の東京建物のほか、日本政府が95%を出資する海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)が参画。政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)も融資をしている。

賃料を支払うのは違法ではないものの、事業が始まった2017年は、ミャンマー国軍によるイスラム教徒の少数民族ロヒンギャへの人権侵害が問題となっていた。国際司法裁判所は虐殺について調査を進めている。国軍は今年2月には軍事クーデターで政権を奪い、これまでに、抗議活動に参加した市民260人以上を殺害している。

ミャンマー国防省、国軍のコメントは得られていない。国軍はロヒンギャへの行為を武装勢力を対象にした「掃討作戦」だとし、ミャンマー政府は人権侵害や虐殺との国際社会からの非難を虚偽と否定している。クーデターで多数の死者が出ていることについては、抗議に参加した市民の責任だとし、放火や暴力行為を非難している。

<軍事博物館跡地に商業施設>

Yコンプレックスはシュエダゴン・パゴダ通りや中央駅に近いヤンゴン中心部の陸軍の所有地にあり、ミャンマーを60年近く支配してきた国軍に関係した資産の1つ。現地企業を介して賃料を支払っている日本側は、受け取り手はミャンマー政府であり、国軍ではないと認識していた。

JOINによる同事業への出資を認可した国土交通省はロイターの問い合わせに対し、国防省は政府機関であり、軍とは「直接的にも間接的にも」関係ないと判断していたと回答した。国防省は、軍事政権時代に起草され2008年に制定された憲法上、国軍の支配下にあるが、この点についてはコメントを控えた。

フジタと東京建物が、ヤンゴンの軍事博物館跡地にオフィスや商業施設、ホテルを建設・運営する事業に乗り出すと発表したのは2017年。JOINを含めた3社で作る特別目的会社を通じ、ミャンマーのヤンゴン・テクニカル・アンド・トレーディング(YTT)社と現地プロジェクト会社を設立し、総事業費は約377億円を計画している。

フジタ、東京建物、JOINはそれぞれロイターの取材に対し、共同で作った事業体が土地の賃料を支払っていることを認め、賃料は現地パートナーのYTT社を介して支払っていると説明。YTTは、農業や銀行、医療、不動産を手掛ける民間の複合企業アヤヒンターホールディングス傘下にある。JBICは2018年、特別目的会社との間で融資契約を結んでいる。

ロイターは、日本側から国防省に渡った賃料の総額を確認できていない。フジタ、東京建物、JOINとも、これまでに支払った賃料の総額、国防省に渡った総額にはコメントしなかった。

YTTのKyi Tha氏によると、土地は国防省からのリースで、最終的に収益を受け取るのはミャンマー政府となる。法律や規則で義務付けられていないとして、ミャンマー国軍による人権問題を精査する特別な措置は取っていないという。

加藤勝信官房長官は24日の記者会見で、JOINとJBICが特別目的会社を通じて事業に関与していることを認めた上で、いずれも国軍と直接取引をしていないと語った。

<内部告発サイトに流出>

国際人権法の専門家でミャンマー国軍の経済活動を調査しているクリス・シドティ氏は、外国の公的機関が関わる軍関連のプロジェクトは、この開発事業以外には把握していないと話す。

ロイターは事業に携わる日本側の関係者に契約条件を問い合わせたが、いずれもコメントを拒否した。

今年2月、ミャンマーの公式文書とされる情報が流出し、内部告発サイトを自称するDistributed Denial of Secretsに掲載された。それによると、賃料は50年間に渡って支払らわれ、金額は年平均200万ドル(2億2000万円)。ロイターはこの内容を確認できていない。国軍が受け取る金額についても確認できていない。

文書によると、2019年からの賃料は年間220万ドル。このうち180万ドルを、現地プロジェクト会社Yコンプレックス・カンパニーが共同口座を通じて支払うことで合意しており、残りはYTTが支払う。日本側はYコンプレックスに8割を出資している。

施工段階である2017年から18年の年間賃料はより少ない57万3160ドルで、うちプロジェクト会社が50万ドルを支払うことで合意した。実際に国防省にいくら支払われたのか、ロイターは確認できていない。

JOIN、フジタ、東京建物が同事業のために設立した特別目的会社の監査済みの決算報告書によると、3社は2019年、180万ドルの賃料を支払った。シンガポール当局に届け出たこの報告書には、賃料の支払い先は記載されていない。ロイターは3社に金額の確認を求めたが、いずれもコメントを拒否した。

なお、Yコンプレックスは、フジタと東京建物の発表では当初は2020年の竣工を予定していたが、JOINによると、今年2月のクーデター発生を受け安全確保のため現在は工事を休止している。

<日本の投資額は世界第5位>

ミャンマーの投資企業管理局によると、同国に対する日本の投資額は世界第5位。過去5年間の総額は14億ドルにのぼる。日本政府はこの地域で中国の影響力が強まることを懸念しており、複数の関係者は、ミャンマーに対する資金支援や学術交流、災害救援の訓練などの防衛交流に取り組んできた意義を説明する。

国軍との経済的な関係が明らかになったことで、日本政府や企業はミャンマーとの関係見直しを迫られる可能性があると、人権団体はみている。ミャンマーでビール事業を展開するキリン・ホールディングスは2月のクーデター後、国軍系の複合企業ミャンマー・エコノミック・ホールディングスとの合弁を解消すると発表した。会見したキリンの磯崎功典社長はクーデターに言及し、「キリンの考える人権尊重の考えに反する」と語った。

外交や安全保障が専門の多摩大学大学院の井形彬客員教授は、「JOINやJBICだけでなく、日本という国にとって深刻なレピュテーションリスク(評判による企業にとってのリスク)になり得る」と指摘。「人権侵害をする者とビジネスを続ける国だと思われかねない」と話す。

米商務省は3月上旬、ミャンマー国軍の支配下にある国防省と内務省に制裁を科した。米財務省はミヤ・トゥン・ウー国防相、その前任者などにも制裁を科した。

ジャスティス・フォー・ミャンマーやヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権団体は2月17日、国連の人権高等弁務官に対し、この土地開発事業と国軍の関係を調査するよう要請した。国連の広報担当者は嘆願書を受け取ったとしたが、それ以上はコメントしなかった。

JBICを所管する財務省にロイターが質問を電子メールで送ったところ、JBICに問い合わせるよう指示された。JBICは融資について「我が国の外為法に基づく適法性の確認を行うことに加え、他国の経済制裁との関係で特段問題ないことを事前に確認した上で、その意思決定を行っている」と回答。ミャンマーの状況を注視しているとした。

JBICが2018年に発表したニュースリリースによると、融資は三井住友銀行、みずほ銀行との協調で実施。両行ともロイターの問い合わせにコメントを控えた。

Yコンプレックスに対する今後の関与についてJOINの担当者は、コメントを避けた。現在の状況については「悩ましい。難しい」と述べるにとどめた。

フジタと東京建物はそれぞれ電子メールで回答し、状況を注視しながら関係者と協議し、対応を検討するとしている。

(Ju-min Park John Geddie 日本語記事作成:久保信博 編集:田中志保)

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