3月10日に東京大学の合格発表があり、その直後に発売された週刊誌には、毎年恒例の高校別東大合格者数ランキングが掲載されました。なにがそんなに面白いのかという気もしますが、もはや風物詩のひとつみたいな感じがあります。夏の甲子園の出場校一覧を見るような感覚です。
実際のランキングを知りたいひとは週刊誌を買ってたしかめてほしいのですが、ここではある傾向に注目したいと思います。例年男子校が多いんです。
週刊誌の速報版には間に合っていないのですが、国立の男子校の筑駒がおそらく3位くらいにランクインしてくるので、最終的にはトップ10のうち、男子校が6校、女子校が1校、共学校が4校になるでしょう。いままで共学校は2校くらいのことが多かったので、これでも今年は共学校が多いほうだといえます。
ここで確認しておきたいのですが、全国の高校の中で男子校の割合はたった2%です。女子校は6%。それ以外はみんな共学です。それなのに、東大ランキングの上位を男子校が占めるのはバランス的に不思議です。でも、男子校だから頭が良くなるとか東大に入りやすいとか、そういう単純なことではなくて、歴史的からくりの力が大きいんです。
前提として、東大の女子比率は低い。現在でもやっと2割。日本社会では男性のほうが優位にいないと収まりが悪いというわけのわからない常識がありましたから、女性が東大に入ってしまうと結婚ができないなんていう理屈で、女性が東大に入ることを回避させようとする社会的な圧力がいまだにあるんです。
だから、東大合格トップ10には女子校がずっと入っていませんでした。初登場が1994年の桜蔭です。それでも1960年代までは東大合格ランキングトップ10の過半数は公立共学校が優位でした。ただし合格者は圧倒的に男子生徒が多かった。
しかし1970年代以降、入試制度の設計ミスで、公立高校の人気が急落します。それでランキング上位から公立高校がごっそり抜け落ちます。残ったのが私立男子校だったというだけの話です。ですから、ランキングを表面的に見て、男子の方が優秀だとか男子校に入れないと東大に行けないだとか、そういうふうには思ってほしくない。
逆に、男子校が上位を占めるようになったのはこの数十年で、そのころ卒業したひとたちが社会における重要なポジションを担うようになってきたのが、世代的にはようやくいまなんです。社会的に大きな力をもった東大卒のエリートといったら、いままでずっと公立共学校出身者が圧倒的に多かったわけです。
何が言いたいかというと、東大合格ランキング上位校が男子校だから男女平等参画社会にならないんだみたいなことをいうひとがいますが、それって事実誤認ということです。
今年の東大合格ランキングトップ10では共学校が例年になく多かったわけですが、合格者に占める女性の割合は21.2%と過去最高を記録しましたし、新年度からは東大は新総長のもと、執行部の過半数が女性になることも決まっています。少しずつかもしれませんが、時代は確実に変わってきています。
※2021年3月25日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容の書き起こしです。