記事

手負いのオバマ政権は中国にどう向き合うか?(渡部 恒雄 上席研究員)

1/2

オバマ政権は中間選挙で痛手を負うもアジアからは期待



11月2日の中間選挙でオバマ政権は歴史的な敗北を喫した。民主党は下院で62議席、上院で6議席を失ったが、これは1938年の中間選挙で当時のフランクリン・ルーズベルト政権下の与党民主党が下院で72議席を失って以来の敗北だ。結果として、与野党の勢力図は上院では民主党53対共和党47とかろうじて過半数を維持したが、下院では民主党193対共和党242議席と、ライバル共和党が大きく過半数を上回る議席を獲得することになった。このような中で残りの任期の二年におけるオバマ政権の力の低下というものが、懸念される事態になっている。

しかし、同時にこれまでの米国の政権の歴史を振り返ると、議会の賛成が必要な国内政策は、政権当初の勢いのあるうちに成立させ、残りのレイムダックの時期は、議会に大きく縛られない外交に専念するというパターンが多くみられることも忘れてはいけないだろう。

皮肉なことに、国内では支持を失っているオバマ政権だが、アジア地域においては、むしろその存在への期待感が増している。なぜなら、北朝鮮の韓国領への砲撃、南シナ海における中国と東南アジア諸国との領有権問題(筆者の9月のレポート参照)などを抱え、米国の同盟国である日本と韓国をはじめ、ベトナム・インドネシア・フィリピン等の東南アジア諸国からも、米国の軍事プレゼンスは極めて重要だと認識されているからだ。これは、ブッシュ政権時代に、米国自身がその一国主義的姿勢ゆえに、世界の安定への不安定要因と認識されていた頃とは大きな様変わりといえよう。

経済面でも外交面でも米国内で中国への不満が高まる



今回の米国の中間選挙において投票者が最も重視した政策は経済・雇用であり、出口調査の62%を占めていた。景気が悪く雇用問題が深刻化している米国内で、人民元安が国民の不満のターゲットになっている。各地の選挙運動でも、中国は格好のスケープゴートとなった。10月9日付のニューヨークタイムズ紙によると、特に今回、全般的に優位に立っている共和党候補へのネガティブキャンペーンとして、中国との自由貿易を支持している議員を攻撃する民主党からのTV広告が多かった。例をあげれば、オハイオの民主党下院候補は、対抗馬の現職の共和党候補を、オハイオの職を中国に輸出する「自由貿易」支持者だというTV広告を流した。画面には大きな竜が現れ、「謝謝(シェシェ)、ミスターギブズ」というアナウンスが入る。

経済上の不満に加え、尖閣諸島沖での中国漁船の日本の海上保安庁との衝突事件や、軍と市民に死傷者がでた北朝鮮の砲撃という暴挙に対して寛容な姿勢を取り続ける中国外交に対して不満がたまっている。

実のところ、尖閣事件以降、米国の中国を見る視線は大きく変化したといってもいいだろう。問題は尖閣事件ではなく、むしろ日中の駆け引きの最中に、日本向けのレアアースの輸出を滞らせるというような経済的手段を使ったことが、大きく影響したと考えられる。それまでは、日中の問題を中立的に見ていた米国メディアの論調が、ある時点で大きく変わった。9月23日にニューヨークタイムズ紙上で、中国から日本向けのレアアースが事実上の禁輸になっていることが報じられたことがターニングポイントだった。(1)

これを受け、9月29日には、下院本会議はこれまで90%以上を中国からの輸入に依存しているレアアースの自給体制の確立を目指す法案を可決した。

米国内で崩れた「中国ステークホルダー論」への幻想



中国の姿勢が米国の対中観に大きな変化をもたらした理由は以下のようなものだろう。これまでオバマ政権がブッシュ政権から引き継ぎ、米国政府と世論の中心であった経済の相互依存関係に基づき、中国を責任ある利害共有者(ステークホルダー)に誘導しようとする関与政策というものが、しょせんは幻想にすぎないのではないかと米国人が考え始めたからだ。

9月27日のワシントンポスト紙は社説で、「この数週間での中国の行動は、中国が国家的な領土欲求を持ち、経済力をその政治的および軍事的な目的に使用していくような思想を持つ独裁国家であることを世界に再認識させることになった」と中国に厳しい表現を使った。(2)

そして尖閣衝突事件での中国の動機は、日本の新しい政権と日米同盟が機能するかどうかのテストではないかと示唆し、日本や韓国、オーストラリアとの同盟関係を強化して、中国に対して毅然とした姿勢を示すべきと提言している。どちらかといえば、リベラル系のワシントンポストが、コラムニスト個人の意見ではなく、社説でここまで厳しく中国を批判するのは珍しい。

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。