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ハーバード大学はギャップイヤーがお好き?!~現役ハーバード女子大生(元ミスコロラド州)が"ギャップイヤー指南書"作りにクラウドファンディング活用!

ハーバード大の女子大生であるモニカ・ルッツさん(20歳)はちょっとした有名人だ。彼女はコロラド州の田舎町ボルダ―の出身。同学年に2千人いる高校3年の時は頑張り屋さんで、成績評価値4.3と特Aクラス。運動クラブではレギュラー、「文武両道」を地でいく高校生だった。ばかげたことや友達づきあいは捨て去り、ひたすら高校の自治会役員をやり、のちにミスコロラド州に選ばれるほどチャーミング。家には各種トロフィーが飾ってあるほど "非の打ちどころがない女子高生だった。一つ欠けているところがあるとすれば、そろいすぎて、面白みにかけることかもしれない。

ところが、モニカさんは自分のすべてを賭けたアイビーリーグのハーバード、プリンストン、イェール、そして、スタンフォード、ジョージタウン大学等9大学は軒並み不合格通知を受け取る。滑り止めの州立大学のみ入学許可が出たという。一体どうしたことか。

これだけ見ると、なぜ主要大学に落ちたか、日本のような試験至上主義では皆目わからない。しかし、モニカさんの活動からは、米国の大学が入学に際して重要視しているノブレス・オブリージュ、社会貢献らしきものが感じられない。これは意外と不合格の主因かもしれない。京大・飯吉透教授(前MIT上級ストラテジスト)の「MITに入学してくるような学生や社会人のうち、98%は事前になんらかの社会貢献活動をしている」という話を思い出す。

とにかく17歳の彼女は涙にくれ、心の整理ができず、合格した州立大学には結局行かなかった。失意をバネに達成感が得られることを探して、彼女はギャップイヤーを選択する。だが、この選択には正直悩んだ。将来就職する会社がレールを外れた自分をどう思うか。将来の恋人も同じだ。大学までは寄り道より効率的なストレートが好きな思考法は、日本とさして変わらない。しかし、両親の「環境を変えたほうがよい」という勧めもあって、実行する。

彼女は今年ハーバード大学に入学するまでの2年間、移動範囲は「3大陸、6か国、9都市」にまたがり、12の厳しい環境下でのインターンを経験した。インド貧困地区でのソーラー発電事業を手掛け、土造りの小屋で寝たこともある。摂氏49°の灼熱地獄の中での生活も味わった。シンガポールではマーケティング会社、上海では高級ブランドの女性用ジーンズのデザインも手がけた。

その他、11日間の瞑想も経験し、英国ヒースロー空港では勾留もされる憂き目にあった。北京ではサソリの"から揚げ"を食し、ネパールのジャングルをハイキング中にはサイと出くわした。これらの活動経費は有給インターンと奨学金(ロータリークラブ等)、助成金で全て賄った。2年後ギャップイヤーを終えて自宅に戻ると、ハーバード大学から、合格通知が届いていたという人だ。彼女は、タフになって戻ってきた。ギャップイヤーの定義が、「親元や教員から離れた非日常性の2年以内での社会体験(ボランティアや課外留学)や就業体験(インターン)」なら、彼女はそれを地でいき、また網羅もしている。

ハーバード大学の入学合格通知書の裏や大学公式サイトに「入学延期制度」を使ってのギャップイヤー推奨文があるのはこのブログでも紹介したが、彼女の場合は、今年秋に入学できるかどうかわからない浪人時代のギャップイヤー期間中に出願したということが新しいといえる。また、ギャップイヤー支援法人が提供する既存の高価な「ギャップイヤー・プログラム」ではなく、費用は自分でファンディングし、個別に計画する(プラン)する道を選んだのも称賛に価する。

その彼女が、今度は入学早々クラウドファンディングで4500ドル(約40万円)の資金を集め、ギャップイヤーの指南書「Now What(どうすればいいの)」発行プロジェクトを始めた(現在3日を残し、あと500ドルで達成)。 Now Whatというこの本の由来は、岐路に立った時に、自ら問いかける質問のことだ。

大学に不合格になったときに起こる、思い描いていたものから、一挙に断崖絶壁となっていて、すべてが無になる瞬間。この本は、彼女の特異な経験やチャレンジをした採録のようなものといえる。2年にわたるギャップイヤー期間に身に着けた、プロフェショナルで知的で個人的なものを学究的なものに昇華して、自問自答したものだ。

だから大学入学に失敗した人には読んでほしいし、メンターやャリアカウンセラーも同様だと彼女は言う。モニカさんのギャップイヤー期間中の経験は、タイムやUSAトゥデイ、WSJなど多くの出版物でも活動が紹介されたが、売り込みも非凡なものがあるとも思う。

さて、コンテンツの章としては、 「ギャップイヤーってどんなもの?」「ギャップイヤー後には、ほんとうにみんな大学に入学するの?」「ギャップイヤーは自分の夢のキャリアをつかむチャンスになるの?」「恋人がいるが、一学期間ギャップイヤーで離れたら、関係が終わってしまわないか?」「方向音痴の私でもギャップイヤーはできる?」など、若者の知りたいことをくすぐる内容が続く。

ギャップイヤーは、今や世の中の受けも決して悪いものではなく、「口うるさいモーレツ・ママも過去の勝利の証明書も無用」で、このようなピア・サポート的なものが有効というのが、彼女のロジックだ。出版のスケジュールは、来年3月下旬にデジタルコピー、10月に書籍で発行という青写真だ。

モニカさんをネットやフェイスブックで調べると精力的で面白い。ギャップイヤー期間中に「ミスコロラド州」になるほど才色兼備を絵に描いた女性でもある。ベルサイユでEU諸国の国会議員とディナーをしたり、チベットでは"生きている仏"と会合し、現在ワシントンDCで議会の特別任務を与えられている。政治学専攻で財務と中国語が副専攻。。「情熱的で好奇心旺盛、そしてエネルギッシュ」という言葉が似合う。こういう人が、ギャップイヤーの啓発を世間に訴えて、書籍発行を考えているということに米国の奥深さを感じる。

最後になるが、それにしても、ハーバードは、ギャップイヤーを推進する女性が多い。
大学入学前の高卒者100名に1年間、南米でのボランティアを行う「ギャップイヤー・プログラム」を提供するNPOグローバル・シチズン・イヤーのアビー・ファリックさんは大学院出身。そして、今年ギャップイヤー経験学生によるピア・サポートセンター「ギャップイヤー・ハーバード・カレッジ」を立ち上げた日系米国人のキヨミ・レポンさんもバリバリの学部生だ。

ギャップイヤーは多様性を呼ぶということだろうか。

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