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小選挙区選挙は廃止しかない(その1:民意切り捨て・・・56%の死票)

はじめに

(1)先日(2012年12月16日)、衆議院議員総選挙の投票日だった。

その開票結果は、以下の報道の通りである。
日経新聞2012/12/17 3:12
300小選挙区が確定 自民が237獲得

 衆院の300小選挙区が確定した。自民237、民主27、維新14、公明9、みんな4、未来2、社民1、国民新1、無所属5。前回選挙で221をとって政権交代した民主が約10分の1に激減。自民は64から約4倍近い議席を獲得した。
日経新聞2012/12/17 10:12
衆院選の議席確定、自民294 民主57・維新は54

 16日に投開票された衆院選の全480議席が17日午前、確定した。自民党は最終的に294議席となり、現行制度では2005年の296議席に次ぐ大量当選を果たした。民主党は57議席で選挙前の230議席を4分の1に減らす歴史的な敗北。第2党が2桁議席にとどまる異例の結果になった。初の国政選挙に臨んだ日本維新の会は54議席で民主党に迫る第3党に躍進した。

 公明党は10議席増の31議席。自民、公明両党合わせて325議席となり衆院再可決が可能となる定数の3分の2以上を確保した。

 みんなの党は選挙前から10増やして18議席。日本未来の党は小選挙区で2議席、比例代表を含めても9議席にとどまった。このほかの獲得議席は共産党8、社民党2、新党大地1、国民新党1、無所属5となった。
(2)衆議院議員を選出する選挙制度については、簡単な説明をしておこう。

議員定数は480である。
小選挙区選挙と比例代表選挙で構成されており、両者は別々の選挙であり、有権者はそれぞれに投票する仕組みである。

小選挙区選挙は各選挙区から1人しか選出されず、議員定数は300なので300名の衆議院議員が選出され、比例代表選挙は、全国11ブロックに分かれており、各ブロックで議員定数が定められており(各ブロックの議員定数はここで省略)、得票率に比例して各政党などの議席数が配分され、合計の議員定数は180である。

ただし、比例代表名簿の同一順位に小選挙区選挙の立候補らを登載すると、小選挙区選挙で当選した立候補者を除く重複立候補者について、小選挙区選挙における惜敗率で、その順位が決められることになっている(この点で、小選挙区選挙の結果が比例代表選挙に持ち込まれている)。

(3)480の議員定数のうち、小選挙区のそれは300なので、小選挙区選挙中心の選挙制度である。

私が問題視するのは、小選挙区選挙である。
それは、主に、以下の著書・論文で指摘してきた。

・上脇博之『政党国家論と憲法学』(信山社・1999年)
・上脇博之「議会における政党政治」『法学セミナー』599号(2004年11月号)26~29頁
・上脇博之「これはほんとうに『民意』なのか」『世界』745号(2005年11月号)106~111頁
・上脇博之「議会制民主主義の危機」明治大学軍縮平和研究所編『季刊軍縮地球市民』3号(2005年)86~91頁
・上脇博之『政党国家論と国民代表論の憲法問題』(日本評論社・2005年)
・上脇博之「政党政治の変容」憲法理論研究会編『“改革の時代”と憲法』(敬文堂・2006年)123~136頁。
・上脇博之「政党政治の現実と議会制民主主義の復活!?」『法律時報』988号(2007年10月号・79巻11号)1~3頁。
・倉持孝司・小松浩・上脇博之「『政治改革』と憲法原理」民主主義科学者協会法律部会編『改憲・改革と法』(法律時報増刊・2008年)81~86頁。
・上脇博之「政党政策としての『安全・安心』」森英樹編『現代憲法における安全  比較憲法学的研究をふまえて』(日本評論社・2009年)648~681頁。
播磨信義・上脇博之・木下智史・脇田吉隆・渡辺洋『新・どうなっている!?日本国憲法〔第2版〕』(法律文化社・2009年)
・上脇博之「間接民主制と直接民主制」浦田賢治・愛敬浩二編『演習ノート憲法〔第4版〕』(法学書院・2010年)14~15頁。
・仁比聡平・上脇博之「なぜ衆院比例定数削減を許してはいけないのか」『前衛』866号(2011年1月号)73~94頁。
・上脇博之「第6回公開研究会 現代の諸問題と憲法政党政治とその課題」『法学館憲法研究所報』第4号(2011年)18~36頁。
・上脇博之・井上哲士「対論 野田政権の登場と二大政党の行方」『前衛』876号(2011年11月号)30~47頁
上脇博之『議員定数を削減していいの?』(日本機関紙出版センター・2011年)
坂本修・小沢隆一・上脇博之『国会議員定数削減と私たちの選択』(新日本出版社・2011年)。
・上脇博之「比例定数削減問題と“真の政治改革”」『治安維持法と現代』23号(2012年春季号)13~19頁

(4)このブログでも、これまで小選挙区選挙の重大な問題点を指摘し、その廃止を訴えてきた。
その主要なものだけ紹介しておこう。

「上げ底政権」を作ってきた小選挙区選挙は廃止すべきだ

政治改革はやり直せ!(その2):小選挙区制は廃止しろ!

民意を歪める小選挙区制はやはり廃止するしかない!

09年総選挙の小選挙区選と比例代表選の各得票数の乖離と政策選挙

一人一票運動における今夜のツイッターでの呟き

(5)この度の総選挙では、マスコミでも小選挙区選挙の重大な問題点が指摘されている。
以下、マスコミ報道も紹介しながら、何回かに分けて私見を書くことにする。

1.民意の切捨て・・・56%の「死票」

(1)小選挙区選挙の重大な問題点としてまず指摘できるのは、主権者国民(投票者)の投票において膨大な「死票」が生まれることである。
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版2012年 12月 17日 17:01 JST 更新
死票率56%に上昇=民主は惨敗で8割超—衆院選【12衆院選】

 16日投開票された衆院選で、小選挙区で落選候補に投じられ、有権者の投票行動が議席獲得に結びつかなかった「死票」は、全300小選挙区の合計で約3730万票に上った。小選挙区候補の全得票に占める「死票率」は56.0%で、前回の46.3%と比べ9.7ポイント増となった。

 今回は「第三極」として新たに日本維新の会や日本未来の党が参戦して12党が乱立。共産党も前回までの方針を転換し、原則として全選挙区に候補者を立てた。当選者が1人の小選挙区制では、候補が多数で票が分散されれば当選ラインは下がり、落選候補の合計得票数が増える傾向があることから、前回より死票率が上がったとみられる。

 死票率を政党別にみると、小選挙区で237議席を獲得した自民党は12.9%で、大敗した前回の74.0%から大きく低下。一方、惨敗した民主党は前回の13.2%から82.5%に大幅上昇した。第三極同士で共倒れが目立った維新も81.9%。小選挙区全勝の公明党は0%だった。 
[時事通信社]
(2)そもそも死票が全く生じない選挙制度はないが、56.0%の投票(約3730万票)が「死票」になる選挙制度は、あまりにも異常である。

(中選挙制で最後に施行された1993年衆議院総選挙では、私の記憶に間違いがなければ「死票」は25%未満だった。)

このように異常に「死票」を生み出す選挙制度は、国民主権の国民代表制とは相容れないものである。
主権者・投票者の半分以上(今回は56%)の意思を切り捨てるからだ。

2.投票意欲の剥奪・・・低い投票率

(1)この問題との関係で指摘されうる、小選挙区選挙の問題点の第二は、投票率の低さである。
毎日新聞 2012年12月17日 12時07分(最終更新 12月17日 16時27分)
衆院選:投票率 戦後最低59.32%

 総務省は17日午前、衆院選小選挙区の確定投票率について、59.32%(男性60.14%、女性58.55%)と発表した。投票率が最も低かった96年衆院選の59.65%を0.33ポイント下回り、戦後最低記録を更新。前回09年は現行の小選挙区比例代表並立制で過去最高の69.28%を記録したが、一気に10ポイント近く下がった。

 当日有権者数は1億395万9866人(男性5020万4503人、女性5375万5363人)。比例代表の投票率も59.31%と低く、戦後最低だった96年の59.62%を下回った。情勢報道で自民党大勝が予想されたことに加え、過去最多の12党が乱立し、有権者が投票先を決めきれなかった可能性もある。

 小選挙区10+件投票率の下落幅は北海道、東北、北信越、中国、四国、九州などで軒並み10ポイントを超えた。都道府県別で投票率が高かったのは、島根65.74%▽山形64.86%▽山梨63.67%。全国で最も低かったのは高知の53.89%だった。【朴鐘珠】

画像を見る

(2)投票率の低下には幾つか理由があるが、「死票」を大量に生み出す小選挙区制もその一つとして挙げられる。

意中の候補者が当選しそうになければ、棄権してしまうからだ。
投票率の低下には主権者の側にも問題があるので、小選挙区制だけをその最大の理由にするつもりはないが、少なくとも大量の「死票」を生み出す小選挙区制を採用しているもとで、投票率の低下を有権者の責任にすることはできないだろう。

上記報道のクラブでも分かるように、1993年までの中選挙区時代に比べて投票率が低いのは、小選挙区制も大きな原因があるといえるだろう。

(3)主権者国民の投票意欲を奪っている小選挙区制は、この点でも重大な問題を抱えており、国民主権の国民代表制に相応しくない、といわざるを得ない。

(つづく)

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