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米中間選挙とティーパーティー運動 中山俊宏

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オバマ大統領は、個々の政策の合理性をしっかりと説きさえすれば、国民の支持を取りつけられるという自信があったに違い。2008年の大統領選挙を思い起こすならば、オバマ大統領が自分の口から発せられる言葉の力を信じていたことはむしろ当然だろう。

アメリカが多くの困難に直面する中、政府が「大きい」「小さい」という二項対立的な発想を乗り越え、「スマートな政府(いわば効率的に結果を出していく政府)」こそが、アメリカ国民が求めているものだとオバマ大統領は確信していたはずだ。

しかし、その確信はアメリカの保守派の思考を根深いところで規定している「原風景的な感覚」に対する感性を鈍らせてしまったのではないか。それは「大草原の小さな家」的な感覚(とにかく自分のことは自分でやるんだという感覚)に依拠し、自分の生活圏に連邦政府が不当に介入してきたならば、咄嗟にガラガラ蛇のように攻撃を仕返そうとする。

この、とにもかくも「放っておいてほしい」「自分たちの生活圏に介入してくるな」という衝動が、ティーパーティー運動を突き動かしているといえる。オバマ政権は、アメリカの保守主義の底流に横たわるこのような不安を意図せずして刺激してしまったのではないか。

ティーパーティー運動は、共和党の側にある不満を吸収して大きくなった、必ずしも中心をもたない、ムードに依拠した無定形(アモルフ)な抵抗運動だ。そのため、場合によっては、共和党に不利な動きをすることもある。デラウェア州の共和党上院議員候補クリスティーン・オドーネルはその典型例だ。

またティーパーティー運動の中には、首をかしげてしまうような突飛な発言をする人、オバマ大統領の属性、つまり、彼がアフリカ系であることや、ミドルネームがフセインであることなどに正面から違和感や嫌悪感を表明するような人たちも含まれている。しかし、この運動を単なる「反動的右翼運動」や「人種差別主義者」と片づけてしまうと、この運動の中核にあるエネルギーを見落としてしまうだろう。

オバマ大統領もアメリカ政治がイデオロギー的に二極分化していることは十分に承知していたはずだ。しかし、2008年の大統領選挙で広範な支持を得て当選した自分に、正面から牙をむいて襲いかかってくる保守的な草の根運動の急激な台頭には、オバマ大統領自身も驚いたに違いない。

* 本稿は2010年10月29日に放送されたNHK教育テレビ「視点・論点」(米中間選挙とティーパーティー)の原稿を加筆・修正したものである。

■中山俊宏:東京財団「現代アメリカ」プロジェクトメンバー、青山学院大学教授

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