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金融緩和政策は神風になるとは限りません

安倍総裁の「無制限な金融緩和」が党内からも批判を受け、少しデスカレートし「大胆な金融緩和」となったものの、それを政治の焦点としたことは戦術的には成功だったようです。もうテレビのバラエティ番組にいたるまで、さも「金融緩和」が日本を救うというムード一色です。金融緩和政策の代表格となった高橋洋一さんの株も上がってきていると思います。今や、高橋洋一さんは、自民党、維新の会、みんなの党の金融政策の後ろ盾となっていらっしゃるようですが、はめられたとも噂される事件での失脚からよくぞ再起されたものです。

それはそうと、市場は円安方向に触れていたところに、安倍総裁の「無制限な金融緩和」と「国土強靭化」と銘打った財政出動を受けてさらに円安が進み、それを好感して株価があがったことは、ほんとうに自民党にとってもラッキーでした。同時にマーケットは繊細に反応する生き物だと感じました。

この円安、株価上昇を受けて、やはり金融緩和が必要だと感じた人も増えたと思います。そして特にテレビメディアでは、経済学者はみんな金融緩和でデフレが克服でき、それが日本の景気浮揚になるとまことしやかな意見が飛び交い始めています。しかし不思議なことにそういったテーマには、ほんとうの経済学者はお呼ばれしていないのです。だから発言が余計にエスカレートします。金融緩和も結構ですが、金融緩和に浮かれるメディアにはうんざりします。それよりも番組の中で収録された街頭の声を聞くと、案外懐疑的な人が多く、国民のほうが賢いと感じたりもします。

さて、どのような政策でも、機会とリスクが同居しています。大胆な金融緩和によって解決できる問題と、逆にリスクが高まる問題があります。それが国民の選択に託されるとすれば、たとえば金融商品のように、リスクも伝えることがなければ詐欺行為、悪徳商法と変わりません。

実際にマーケットがどのように動くのかはよくわからない世界です。理屈を超えて変動します。しかも景気に「気」の文字がつくように、経済は理屈だけではなく、世の中の空気にも影響されるので、気分を変える効果があれば、それで変わる可能性も否定できません。それがいい方向に動くか、悪い方向に動くかは神のみぞ知る世界です。

金融の世界は金融緩和によって最初に敏感に動いてきます。しかし、実体経済が変化するのは時間を要します。

たとえば物価は、市場の需給関係、また競争関係で動くので、金融緩和したからと言って需要が伸びるものではないので、物価が上がるには時間を要します。金融緩和すれば給与があがると思っている人がいますが、それは企業業績があがってはじめてあがるのです。こちらもいきなりは上がりません。つまり庶民が実感できる変化はすぐさまは起こって来ないということです。少なくとも参院選までには起こりません。金融緩和政策は、実体経済を変える万能薬ではないからです。

しかし短期的に起こってくる変化もあります。市場関係者の多くは、日本が円安に振れていくと思っています。40年近く続いた円高時代の終わりだと。だから円売りのタイミングを見計らっているといわれています。

安倍政権が日銀と協力して、金融緩和を行えば、俗にいうお札を大量にすれば、その引き金を引くことになります。そうなると一気に円安が進行します。すくなくとも海外紙ではその論調が目立ちます。民主党が間違ったのは為替介入をしてしまったことです。それはグラグラと煮立っている鍋に、小さなコップで水を足すようなものだから効果が続きません。しばらくするとまた沸騰してくるのです。金融政策のほうが為替動向に影響します。

円安が進めば、輸出企業の株が買われ、株高になっていくという動きになってくるのでしょう。また「国土強靭化」による公共事業を見込んで、建設関係の株価もあがります。それは十分にありえる話です。株資産を大量に持っている高額所得者、とくに株を持っている高齢者にとっては朗報になります。

しかし一方で懸念されるのは金利が上昇してくることです。インフレ期待が生まれると、あるいはインフレを予想すると、当然そのインフレを織り込んだ金利水準になっていきます。変動金利で住宅ローンを組んでいる人にとっては大変です。

さらに金利上昇は国債暴落を引き起こす引き金になるかもしれません。そもそも消費税増税は、財務省が国債暴落を恐れて政治に決めさせたといわれていますが、その国債暴落がおこると、日本の金融はたっぷり国債を溜め込んでいるので大変です。また政府は借金の返済が増えるので財政がさらに悪化します。こちらがリスクです。

おそらく、安倍政権が誕生すると金融市場の動きが活発になってくると思います。こういった変化が市場を動かすからです。おそらく安倍内閣も実際にはあまり極端なことはやらないとは思いますが、市場の流れは確実に変化してきます。

しかし実体経済は変わりません。それで産業が大きく変わるというものではないからです。円安になったから海外で液晶テレビが売れ出したり、スマートフォンが売れるというものではありません。産業が変わるためには、投資が必要ですが、その投資マインドが日本の企業に取り戻されるかどうかで決まってきます。その投資意欲を引きだせるかどうかです。日本の経営は雰囲気に流されやすいので、投資が活発になるもしれません。

円安や株高で少しでも明るい材料を作れば、日本のなかに充満している閉塞感に風穴をあけることができればいいとは思いますが、同時にリスクも抱えていることも頭の片隅においておくべきです。ただ、積極的にリスクを取らなければ、なんら成果も得られないことは間違いありません。

金融緩和だけでなく、経済効果、また市場へのアナウンス効果を狙うなら、いっそ将来にツケとして残る公共事業は必要最低限に止め、法人税ゼロの大規模な経済特区をつくるぐらいのことをやればと思います。そちらのほうが経済再生には役立ちます。海外から資本も流れてくるでしょう。また、思い切った政策をやってきた、日本も変わろうとしていると海外からも注目されるのではないでしょうか。

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