記事

「第3子に1000万円支給を」高所得者が子育て支援から外される"罰ゲーム"はなぜ続くのか

1/2

夫婦のうち、高い方の年収が1200万円程度を超える場合は、児童手当の特例給付を廃止する法案が閣議決定された。米国公認会計士の午堂登紀雄さんは、「高収入世帯は納税の時点で責任を果たしているのに、これは追加の罰ゲームではないか」と指摘。午堂さんが考える、本気の少子化対策案とは――。

哺乳瓶でミルクを飲む赤ちゃん
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/violet-blue

児童手当の「特例給付」廃止は、富裕層から大ブーイング

現在の児童手当は、中学校卒業までの子ども1人につき原則月1万円(第1子・第2子は3歳未満、第3子以後は小学校卒業まで月1万5000円)が支給されます。

ただし所得制限があり、「夫婦のうち高い方の年収」が960万円程度を上回る世帯には児童手当は支給されず、代わりに「特例給付」として年齢・人数にかかわらず子ども1人につき月5000円が支給されています。

ところが、2022年10月の支給分から、「夫婦のうち高い方の年収」が1200万円程度を上回る世帯には、この「特例給付」を廃止することが閣議決定されました。

待機児童解消に向け、2021年度から2024年度までの4年間で約14万人分の保育の受け皿を整備することを目指していることから、そのために必要な安定的な財源の確保策において、今回この「特例給付」を廃止し財源にする見込みのようです。

※実際には所得額で判定されますが、サラリーマン世帯が多いため、わかりやすく年収ベースで紹介しています。所得額は家族構成やその他の所得区分の有無、所得控除等で変わります。

富裕層や高所得層の間で、この改正案がとにかく大ブーイングとなっているのですが、私も同感です。

ではなぜ大ブーイングかというと、「手当てがもらえないから」などという矮小な発想からではありません。彼らはその程度の金額で一喜一憂するほど金銭的に困っているわけではありません。

そうではなく、改正の論拠に論理性がないこと、優先順位の不透明さ、説得力のなさ、思慮の浅さが透けて見える議論に異を唱えているのです。もっとはっきり言うと、「もうちょっとまともに考えられないの?」というわけです。

高額納税者への追加の罰ゲーム

そもそも子育て世帯を支援する制度は非常に充実しつつあり、そのおかげで夫婦共働きが実現しているという側面があります。

そしてその結果として高所得になったという人や家庭もあるはずで、政府は良い仕事をしていると思います。いろいろ課題はありますが、その点は肯定的に評価します。

そして高所得者は、所得税、住民税、社会保険料をふんだんに払っています。特に所得税と社会保険料は収入に連動するため、その貢献度は大きいと言えるでしょう。その一方で高所得世帯は、現状でも子育て関連ではほぼすべての制度で所得制限に引っかかり、補助金・助成金などは対象外です(そういえばわが家も以前、長男の保育料が月7万円、次男の保育料が2人目半額で3万5000円で月10万円を払っていた時期がありましたが、児童手当は二人で月3万円ではなく1万円でした)。

そもそも富の再分配機能としては、彼らは納税した時点ですでに貢献しているにもかかわらず、これでは追加で罰ゲームを与えられているようなものでしょう。

ほかにもっと削れるところがあるはず

民間ではたくさんお金を払えばより高付加価値なサービスが受けられるのが一般的ですが、行政サービスはむしろ逆で、納税すればするほど冷遇される状況です。

「高所得者は余裕があるからいいだろう」などという発想があるとしても、それは子育て関連ではなく別の分野に適用すればいいだけでしょう。本気で少子化対策を考えているなら、出産・子育てへのモチベーションを下げる施策に何の意味があるのかと疑問に思います。

子供と一緒に歩く若い両親
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RyanKing999

「もらえるものがもらえなくなる」という不満からではなく、わざわざここをターゲットにして小銭を浮かせて不評を買うくらいなら、「ほかにもっと削れるところがあるだろう」というのが私の周囲の共通した意見です。

「夫婦ともに年収1000万円」の場合は支給停止にならないおかしさ

それに、片方が年収1200万円なら支給停止となるのに、夫婦ともに年収1000万で世帯年収2000万あっても停止とならないというチグハグ感。これが制度の理念にマッチしているのか非常に疑問です。

おそらく「夫が外でフルタイムで働き、妻はパート」といういまだ昭和の固定観念を引きずる人たちが抱く家庭観に基づいているのでしょう。

さらに、「高所得者から税金を取る」「高所得者の優遇をやめる」のは庶民からの反発が少なくスムーズに採用できるだろうという姑息(こそく)な発想を感じるのは私だけでしょうか。

高所得者は納税という点ですでに義務を果たしているのだから、そこで終わりにしてあげて、本気で少子化対策を考えるなら子育て環境こそ平等にしてあげればいいと思います。そもそも子に罪はないのに、たまたま生まれてきた親の収入の影響を、政府が余計に大きくしてどうするのか、とも思います。

あわせて読みたい

「児童手当」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    ついに訪れた「PayPay手数料有料化」の激震!コンビニのサバイバル戦略

    文春オンライン

    05月12日 08:27

  2. 2

    【読書感想】禍いの科学 正義が愚行に変わるとき

    fujipon

    05月12日 10:15

  3. 3

    私がオリンピックを開催するためには、緊急事態宣言を7月上旬まで延長すべきと思う理由

    宇佐美典也

    05月12日 12:00

  4. 4

    ソフトバンクG孫正義さん、AI革命に熱意「10兆円でも満足しない」

    Ledge.ai

    05月12日 21:37

  5. 5

    「従軍慰安婦」というフェイク用語をばら撒いた朝日新聞の罪は重い

    PRESIDENT Online

    05月12日 11:30

  6. 6

    コロナおさまらない日本 風邪でも休まないビジネスマンとザルの水際対策

    中村ゆきつぐ

    05月12日 08:30

  7. 7

    かって1000万部の読売がNYタイムズに抜かれた!

    島田範正

    05月12日 16:30

  8. 8

    「人と違うことは個性だ」差別と戦い続けたプロサッカー選手・鈴木武蔵が見る日本

    清水駿貴

    05月11日 08:06

  9. 9

    茨城県境町の殺人事件 デマ情報に基づく誹謗中傷が被疑者の同姓男性のもとへ

    岸慶太

    05月12日 14:46

  10. 10

    現時点での民間企業テレワーク状況公表に反対。まず官公庁・大臣、そして国会議員の実情を公表すべき

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    05月12日 08:13

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。