- 2021年03月22日 20:47
少子超高齢化を克服するには科学技術革新よりも価値観のイノベーションを - 「賢人論。」第134回(後編)野依良治氏
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著名な有機化学者として知られる野依良治氏は現在、科学技術館館長(千代田区北の丸公園)として、休む暇なく次世代への教育に力を注ぎ続けている。世のために働く中で、「後期高齢者」という概念に強い違和感を覚えたと語る野依氏。少子超高齢化問題の解決に必要な「価値観のイノベーション」と、人生100年時代における年齢区分の見直しや働きがいについて話を伺った。
取材・文/盛田栄一
シルバー民主主義に向かわず若者の意見を尊重すべき
みんなの介護 2025年の日本では、4人に1人が75歳以上となり、少子化も加速し続けます。少子超高齢化問題とどう向き合っていけばいいとお考えでしょうか。
野依 21世紀の今、少子超高齢化の流れは止められません。私たちには科学技術を駆使するだけでなく、人びとの考え方を変革する「価値観のイノベーション」が求められていると思います。
この深刻な問題を解決するうえで重要なことは、孫世代、ひ孫世代に思いを寄せつつ、若者たちを議論に巻き込んでいくことです。介護を含む社会福祉制度は全世代にかかわる問題ですが、とかく現在の高齢者と現役世代の間だけで議論しがちです。しかし、高齢者を支えるのは間違いなく若者たちで、いずれ彼らも高齢者になります。だから、支えられる側だけでなく、むしろ支える側の意見を十分に尊重するべきです。
敬老精神は必要ですが、シルバー民主主義の方向に向かってはなりません。そして、多数の高齢者を支える若年層の人口分布を可能な限り分厚くする思い切った施策を考え、実現していくべきです。
みんなの介護 これから若年層の人口を増やすことは可能でしょうか。
野依 価値観のイノベーションを起こすことで、絶対に不可能ではないと思います。
未成年に投票権を与える「ドメイン投票方式」
野依 社会の年齢構成が大きく変化しました。生産活動の現役から退いた65歳以上、また知力が低下した我々世代の選挙権を引き続き認めるのであれば、明日を担う0歳から18歳未満の若者や子どもたちにも選挙権を与えるべきです。現行制度は民主主義の観点からもとても不公平と言わざるを得ません。ここで、未来を担う子どもたちの声を聞くための方法を一つ提案したいと思います。
アメリカの統計学者ポール・ドメインは、1986年にきわめて合理的な投票方式を考案しました。簡単に言うと、子どもの投票権を親が代行して行使するのです。例えば、選挙権年齢に達しない子どもが2人いる夫婦の場合、自分たちの分と合わせて4人分の投票ができることになります。
この「ドメイン投票方式」を採用すれば、子育て世代の意向が政治に強く反映されるようになります。認可保育所の数を3年で2倍にするとか、子どもが就学年齢に達するまで育児休業・休暇を取れるようするとか、大学の高い授業料を減額、ないし全額給付するとか…。現代社会の実態を踏まえ、良き明日をつくるべく意見が集約されます。政治家は、これらのまっとうな要望を選挙公約に掲げるようになります。子育てしやすく、また子どもたちにとって明るい社会環境が整備されれば、子どもを産みたいと思う夫婦は確実に増えるでしょう。結果として、少子化が緩和されるはずです。
みんなの介護 なるほど。きわめて現実的に有効な施策だと思います。
野依 この投票方式について、ドイツやハンガリーの議会で何度か議論されながら、まだ実際に導入されてはいません。しかし、出生率の減少と高齢化がさらに深刻なわが国こそ、世界に先駆けて導入すべきと考えます。



