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焦点:来年の米中間選挙、共和党員が頼るトランプ氏の神通力


[ケルソー(米ワシントン州) 18日 ロイター] - シアトル南方、農業中心のワシントン州カウリッツ郡。先週、白人高齢層の有権者を前にして、4人の共和党員が次期選挙で同党のジェイミー・ヘレーラ・ブートラー下院議員を落選させるという決意表明を展開した。同氏が、共和党員であるにもかかわらず、暴徒による連邦議会議事堂襲撃事件を扇動した件でドナルド・トランプ前大統領を弾劾する決議に賛成した議員だったからだ。

マスクをしていない参加者も目立つ集会で、次々に登場した4人の候補者は、15分の持ち時間を使ってトランプ氏への揺るがぬ忠誠を披露した。その後、インタビューに応じた候補者らは、ワシントン州第3選挙区における来年の中間選挙で、10年にわたり議席を守っている現職ヘレーラ・ブートラー議員に勝つために、皆がトランプ氏による支持を求めていると語った。

新人候補の1人、退役軍人のジョー・ケント氏はロイターに対し、トランプ氏は共和党内で「今なお現役」であり、彼の支持は「非常に大きい」と語った。ケント氏によれば、前大統領の支持を勝ち取るために、強い人脈を有するコンサルタントと契約することを検討しているという。

2022年の下院議員選挙、州議会議員選挙に向けた党内の予備選の開始まで1年以上もあるが、共和党の出馬予定者はトランプ氏の支持を確保するために奔走している。ロイターの取材に応じた出馬予定者10数名とトランプ氏の顧問2人によれば、支持を勝ち取るためにすでにトランプ氏に働きかけたか、あるいはそれを予定している出馬予定者は何十人にも及ぶという。

2人の顧問によれば、あまりにも多くの支援要請が持ち込まれるため、トランプ氏は誰を支持すべきか検討するための正式なプロセスを定めたという。検討プロセスには、息子のドナルド・トランプ・ジュニアや、ジャスティン・クラーク氏、ジェイソン・ミラー氏など以前からの選対幹部が関与するという。

トランプ氏の広報担当者は、支援対象候補の検討プロセスや関与している人物についてコメントを控えている。

<穏健派・無党派層が離反する懸念>

トランプ政権下で共和党は大統領選、上下両院選で敗北した。にもかかわらず、トランプ氏の支持獲得に向けた競争が始まっている状況は同氏が引き続き共和党内で影響力を維持していることを裏付けている。

共和党主流派は、前大統領の歓心を買うための競争のせいで、予備選では過激なトランプ氏支持の候補者が勝利を収め、それによって本選挙では穏健派・無党派の有権者が離反してしまうのではないかと懸念している。昨年11月にトランプ氏が民主党ジョー・バイデン候補に敗北した際には、こうした有権者の離反が大きな要因になっていた。

かつて共和党全国委員会のトップ幹部だったダグ・ヘイ氏もそれを心配する1人だ。「怖いのは、(略)郊外地域の有権者にそっぽを向かれてしまうような言動をする一方で、トランプ氏のような投票率向上につながるような不思議な魅力を持たない人物を候補に指名してしまうことだ」。 

トランプ氏は、1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件を扇動した件による同氏の弾劾決議に賛成した共和党下院議員に対し、落選させるための運動を起こすことを明言している。上院での弾劾裁判においてトランプ氏の有罪に票を投じた7人の共和党上院議員のうち、唯一来年の中間選挙で再選をめざすリサ・マーコウスキー上院議員も標的の1人だ。

トランプ氏は2月、オーランドで行われた「保守政治行動会議」における怒りに満ちた演説の中で、「奴らを全員落とせ」と述べた。また顧問らによれば、トランプ氏は連邦上院・州知事をめざすオープンな競争の中で自らお気に入りの支援候補を選びたがっているという。

ワシントン州でトランプ支持派の攻撃に直面している現職のヘレーラ・ブートラー下院議員の広報担当者によれば、同議員は「共和党保守派であることに変わりはなく、その立場を変えるつもりはない」という。

政治専門家によれば、党内での候補者選びに介入しようというトランプ氏の姿勢は、大統領経験者としては前例がない。ほとんどの大統領経験者は、党内での争いとは距離を置き、本選挙において支持するだけだったという。

ノースカロライナ大学のマーク・ヒザリントン教授(政治学)は、「このような例は見たことがない」と話す。

ヒザリントン教授によれば、トランプ氏のファンは共和党内で最も活気ある支持者層で、次期選挙でトランプ氏の協力を取り付ければ、彼らの支持を高めることができる。とはいえ、トランプ氏が自分を裏切ったと見なす共和党議員を標的にすることによって党内に分断が生まれ、最終的には民主党を利することになりかねない、と同教授は言う。

「(共和党は)自らの力を損なっている」とヒザリントン教授は言う。「その力は、公衆の中へと漏れ出ている」

<トランプ氏、すでに介入開始>

支援候補者の選定プロセスに関与するトランプ氏の上級顧問は、トランプ氏に支援された候補は本選挙では弱いという見方は当たらないとしている。昨年11月の選挙では、トランプ氏を前面に押し立てて戦ったことで、共和党は下院の議席を回復し、当選した共和党の女性下院議員候補は過去最多となり、ヒスパニック系有権者にも食い込む結果となった。

共和党当局者は、2022年の中間選挙で上下両院とも勢力を逆転させる可能性があると同氏は述べている。

2016年の選挙においてトランプ陣営の政治顧問を務めたサム・ナンバーグ氏は、「(トランプ氏は)共和党から煙たがられる状況に甘んじるつもりはない」と話す。

また、共和党全国議会委員会のトップで、下院議員選挙に向けた戦略・政治資金調達部門を率いるミネソタ州選出のトム・エマー下院議員は、トランプ氏支持をめぐる党内の分断についてはコメントを控えつつ、自ら率いる組織について、予備選での争いでは中立を守ると述べている。

トランプ氏はすでにいくつかの指名争いに介入している。トランプ氏は、1月の弾劾決議に賛成した10人の共和党議員の1人、オハイオ州選出のアンソニー・ゴンザレス下院議員に対抗するマックス・ミラー元大統領補佐官への支持を表明している。

トランプ氏の上級顧問がロイターに語ったところでは、ミラー氏は出馬を決断する前にトランプ氏の支援を確保するために働きかけてきたという。ミラー氏にコメントを求めたが回答は得られなかった。ゴンザレス氏のオフィスもコメントを控えている。

<「マールアラーゴ詣で」>

オハイオ州の別の選挙区では、引退するロブ・ポートマン上院議員の後継の座をめざし、ジョシュ・マンデル氏とジェイン・ティムケン氏が共和党の候補指名を争っており、トランプ氏への献身ぶりで相手より1歩先んじようと懸命だ。

ティムケン氏は15日、オハイオ州北東部にあるモスキート・レイク州立公園をトランプ氏にちなんで改称しようとする地方議会の法案を支持すると発表した。元オハイオ州共和党議長だったティムケン氏は、トランプ氏の弾劾を支持したゴンザレス下院議員に辞任を求めたこともある。

対抗するマンデル氏の陣営責任者であるスコット・ガスリー氏は、トランプ氏に対する忠誠という点ではマンデル氏の方がさらに上だとして、「この戦いにおいて掛け値なしにトランプ派と呼べる候補はマンデル氏だけだ」と述べている。

一方、トランプ氏の豪奢な別荘「マールアラーゴ」には、同氏の支援を求める共和党の出馬予定者が吸い寄せられている。リチャード・グレネル元駐独大使は先日、かつてのボスであるトランプ氏とマールアラーゴで夕食を共にした。事情に詳しい情報提供者がロイターに語ったところでは、2人の間で交わされたさまざまな話題の中には、カリフォルニア州知事選挙に向けてグレネル氏が共和党の候補指名をめざす可能性も含まれていたという。

グレネル氏はコメントを控えている。

<トランプ頼み>

ワシントン州カウリッツ郡に話を戻そう。先週、第3選挙区での選出をめざす共和党出馬予定者のためのフォーラムでは、トランプ氏の党内での影響力が鮮明になった。

会場の入口では、トランプ氏とメラニア夫人の等身大パネルが有権者を出迎えた。フォーラムの半ばで聴衆の1人が出馬予定者にこう尋ねる。「2016年と2020年の選挙のとき、皆さんは実際のところ、ドナルド・トランプ候補の選挙運動にどのように貢献したのですか」

過去3回の大統領選挙において、共和党の大統領候補は、この広大な選挙区で毎回勝利を収めてきた。とはいえ、人口が最も急速に増大しているクラーク郡では、リベラルなオレゴン州ポートランドと隣接していることもあり、バイデン候補がトランプ候補を上回った。

2016年、トランプ氏はこの第3選挙区で民主党のヒラリー・クリントン候補を7ポイント差で破った。だが昨年11月に同区でバイデン候補につけた差は4ポイントまで縮まっており、ますます接戦になる選挙区において共和党が抱えるリスクが高まっていることを示している。

一方、この選挙区の現職下院議員であるヘレーラ・ブートラー議員は昨年11月の選挙で13ポイント差で勝利した。支持が低下したトランプ氏とは対照的な強さを見せ、トランプ氏が獲得できなかった穏健派共和党支持者や無党派の票を集めたことを示唆している。

ヘレーラ・ブートラー下院議員にインタビューを申し込んだが、応じてもらえなかった。

ライバル候補は、同下院議員が弾劾決議に賛成したのは「裏切り行為」であると称し、国内各地の複数の裁判所や選挙当局者がすでに否定しているトランプ氏の「不正選挙」の主張を触れ回っている。

ヘレーラ・ブートラー下院議員の選挙陣営で広報担当者を務めるパーカー・トゥルアックス氏は、対立候補について「根拠のないデタラメで選挙の敗戦理由を説明するのは、どれだけ多くの人がそれを試みるとしても、ワシントン州南西部で選挙運動を成功させる基盤にはならない」と評する。

ペンシルベニア州では、マイク・ケリー下院議員が、任期切れを迎えるトム・ウルフ州知事(民主党)の後継をめざして州知事選に出馬するか、引退するパット・トゥーミー上院議員の議席を狙うことになれば、トランプ氏との人脈を活用する、と話している。

ケリー下院議員は、大統領選での敗北という結果を覆そうとするトランプ氏の試みを連邦議会から支援した最有力の支持者の1人である。ケリー氏は、ペンシルベニア州における数百万票もの郵便投票の無効を求めて連邦最高裁まで争って敗れた訴訟の急先鋒となっていた。

「大統領に電話して支援を仰ぐことは可能だろう」とケリー氏は言う。

トランプ氏は昨年11月の大統領選で、フィラデルフィア及び近郊において穏健派の離反を招いたことで、ペンシルベニア州を失った。ケリー氏によれば、それでも州内の一定の地域ではトランプ氏の支援を得ることが「非常に力になる」という。

(Nathan Layne記者、Steve Holland記者、James Oliphant記者、Deborah Bloom記者、翻訳:エァクレーレン)

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