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総選挙の結果にみる日本政治の課題

総選挙の結果が出た。選挙前から、自民党の政権復帰はほぼ確実視されていたが、これほど自民党が議席を増やし、民主党が議席を減らすことになると予期していた人は少なかっただろう。事前の選挙予測は各社相当の幅があったが、その中で最も極端な自民党の勝利を予想した社が最も実際の結果に近く、かつ、実際の結果はそれすら超えるものだった。

選挙のたびに、振り子のように大量の議席が移動する状況に対して、小選挙区制の弊害を指摘する声もあるが、かといって比例代表制を強化すれば、中小政党の乱立に拍車をかける可能性もある。

最近の日本の選挙が「風」に左右されやすい原因のひとつとして、政治の「対立軸」がはっきりしていないということが挙げられるのではないか。アメリカでは共和党と民主党、イギリスでは保守党と労働党の二大政党制が定着しているが、それぞれ、大きくいって「小さな政府」と「大きな政府」、あるいは「新自由主義」と「社会民主主義」の基本的な対立軸がある。そのため、いずれの政党にも一定の持続的な支持基盤があり、政策論争も深まりやすい。日本では、かつてのいわゆる55年体制では、「保守」と「革新」という思想的な対立軸はあったが、後者は必ずしも、政権交代可能な政策の選択肢を示すものではなかった。

近年では、民主党が自民党に匹敵する勢力として成長し、実際に政権交代が起きたが、政権交代を至上命題として様々な出自の政治家が集まった政党であったため、政策面での凝集性が弱く、政権を獲得した後の混乱につながることとなった。

日本では、長きにわたって、「小さな政府」と「大きな政府」、あるいは「低福祉・低負担」と「高福祉・高負担」といったトレードオフの選択肢が示されず、与野党ともに「支出は大きく、負担は小さく」という傾向に陥りがちとなり、負担を借金として後世につけまわすことが繰り返されてきた。今回、主要政党がまがりなりにも、負担なくして福祉は維持できないという当然の前提をある程度共有し、その中で現実的な政策を提示して選挙を戦ったことは、一定の進歩ともいえる。こうした現実的な政策論争が行われるようになったことは、2009年の政権交代により与野党の立場が入れ替わったことのひとつの成果ともいえよう。

しかし、このような、政策の前提となる「現実」と、その中での政策の対立軸が、十分に確立し、世間に浸透しているとは言い難い。そのため、現実的な政策の全体像を示さず、特定のイシューについて極端な主張を行う政党が乱立しがちであり、政治を分かりにくいものにしている。

今後、当然注目されるのは、新たな自公政権の政策であるが、それに加えて、一度政権与党を経験し、再び野党に戻る民主党がどのような行動をとるかが重要となる。それが、日本の政治を、現実的な政権選択制という新たなステージに進めるためのひとつの鍵となるのではないか。

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