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安倍政権はどこで「失望」に転じるのか

凄まじい大惨敗だった。民主党は前回の総選挙で獲得した308議席から今回、57議席へと激減し、史上例を見ないおよそ「5分の4」の議席を失うという敗北を喫した。

当ブログでも指摘してきた“リセット有権者”の厳しい審判は、予想以上のものだったことになる。現職閣僚8人が落選したこの選挙を、民主党の候補者たちは、「おまえたちの話など聞きたくない、さっさと消えろ、という“壁”を有権者との間に感じた」と表現する。

それほどの激しい反発を受けたのだから、3年3か月前に国民から受けた「期待」の大きさと、同時にそれを裏切った「失望」の大きさが窺える。

リセット有権者の傾向から見れば、「次」は、逆風を自民党が受ける番である。意地悪な見方かもしれないが、安倍政権への国民の期待がどこで「失望」に転じるのかと、私はどうしても考えてしまう。

私は、そのポイントは「2つ」あると思う。一つは、外交だ。中国・韓国のマスコミが本日、一斉に「タカ派安倍政権の復活」「日本右傾化の危機」と報じた。

だが、私は、これは日本にとって悪いことではない、と思う。中国や韓国の新聞が警戒感を強めているというのは、久しぶりに日本の“怖さ”を彼らが感じているということでもあるからだ。

民主党政権下の3年3か月、日米同盟にヒビを入れ、さらに領土を守るという気概さえ内外に示せなかった日本は、外国から舐められ、韓国とロシアの大統領による日本固有の領土への踏み込みを許し、さらには尖閣の海域への中国船による侵犯の常態化を招いた。

その上、反日デモによって日本企業は襲撃され、略奪まで受けるという重大な事態に見舞われたのである。国際社会では一度弱みを見せたら、際限なくつけ込まれていくのは常識だ。舐められるだけ舐められた民主党政権下の日本は、中国・韓国にとっては、実に“なぶりやすい国”だったのである。

だが、自民圧勝の選挙結果は、その中国と韓国に大きな衝撃をもたらした。私が驚いたのは、中国が、2006年に当時の安倍首相と胡錦濤主席が確認し合った「戦略的互恵関係」を再び持ち出してきたというニュースだ。

自分より「下」にしか見ていなかった日本が、安倍自民党が圧勝、新政権が発足するとわかった途端、いきなり危機感と警戒感を強めてきたのである。さらには、かつて合意した「戦略的互恵関係」まで持ち出し、これからは仲よくやっていこうぜ、と思えるサインまで送ってきたのである。

安倍首相が、堂々と日本の主張を両国に伝えていけるかどうか。それは「期待」であると同時に、仮にできなければ「失望」をもたらす。どれほどひどいことをされても、ひたすら「友好」しか言えなかった民主党政権の轍(てつ)をもし踏むなら、安倍政権はたちまち国民の非難と失望の対象となるだろう。

安倍政権は、堂々と日本の立場と主張を国際社会に訴え、中国や韓国に直接突きつけられる政権でなければならない。民主党の退場によって、もう“譲歩の時代”は終わったのである。そのことを期待されて誕生したことを安倍氏は忘れてはならないと思う。

もう「1つ」は、「公務員改革」と「行政改革」である。私は、安倍氏とみんなの党の渡辺喜美氏の関係に注目している。安倍内閣で規制改革の内閣府特命担当大臣となった渡辺氏は、行政改革と公務員改革に真っ正面から取り組んだ過去がある。

霞が関をすべて敵にまわしても、当時の安倍首相と渡辺大臣はひたすら改革に突き進んだ。だが、巨大な存在である霞が関官僚の抵抗を受け、ついに参院選の敗北を受けた安倍内閣の退陣によって二人の改革は、“志なかば”で潰(つい)えたのである。

その時、渡辺喜美氏の頬を無念の涙がひと筋流れたことを私は覚えている。その無念は、やがて「みんなの党」をつくる原動力となり、それから6年を経た現在、同党は衆院選で「18議席」を有する立派な政党となった。

安倍氏と渡辺氏は、その意味で、二人だけにしかわからない「言語」を持っている関係と言える。それは、絶対に公務員改革と行政改革を成し遂げるという“悲願”に基づく言語にほかならない。

いまだに「官僚統制国家」を突き崩せないでいる日本を立て直す二人の政治家といえば、安倍氏と渡辺氏である。その二人に、6年ぶりに悲願達成のチャンスが再び現れたのである。私はその点で二人に大いに期待している。

では、この2つの重要ポイントで、安倍政権が、ことなかれ主義を貫き、何もできなかった場合はどうだろうか。その時、安倍政権に対する国民の信頼は音を立てて崩れ去るに違いない。今回の民主党の惨敗は、明日は“わが身”である。

衆院で3分の2という議席を獲得して颯爽と再登場する安倍新首相。国民は、もう綺麗ごとの政治は望んではいない。安倍氏には、民主党の3年3か月への国民の怒りを掬い上げ、本音と覚悟で日本を毅然とした国家として生まれ変わらせて欲しいと心から思う。

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