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  • 2021年03月22日 16:28 (配信日時 03月21日 16:00)

大滝詠一の音楽の秘密は…伊藤銀次、杉真理、佐野元春の証言で迫る

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写真・井出情児

「40周年盤の『ロング・バケイション』は、2021年の時点で流通しているすべての音楽記録媒体でリリースする」

 大滝詠一さん(2013年没、享年65)は、30周年盤の制作時からこう語っていたという。そして、その時がやってきた。

 今回の『ロンバケ』は、CD、ブルーレイ、レコード、カセットテープ、そして音楽ダウンロード配信という形で、3月21日に発売された。

 新作ならともかく、カタログCDでこれほど大がかりな展開ができるのは、『ロンバケ』ならでは。

 あらゆる世代に支持されるエバーグリーンなアルバムであるという証明だ。短い期間で消費される近年の音楽と、大滝さんの音楽は、いったい何が違うのか? 

 その秘密に迫るべく、本誌は3人のアーティストに話を聞いた。大滝さんとともに、アルバム『ナイアガラトライアングルVOL.1』(1976年)に参加した伊藤銀次。『VOL.2』(1982年)の杉真理と佐野元春。

 いつの時代も爽やかな風とともに心に音楽が鳴り響く理由、「大滝詠一」は、どんなミュージシャンだったのかを──。

■“1”を語るなら“10”を知るべき

「ビートルズが好きなんだって? じゃあ、ビートルズがアメリカで契約したレーベルをすべて言いなさい。知らない? それでビートルズを知ってるだなんて、よく言えたもんだな」

 中学時代に聴いたビートルズに衝撃を受けた伊藤は、大滝さんと出会ったときに、こう言われたという。

「まさにこれが大滝さんの考え方。1を語るなら10を知れ、という。ビートルズだけじゃなくて、興味あることすべてに対して徹底していました」

 1972年、伊藤は大滝さんに誘われ、大阪から上京。東京・福生市にある大滝さんの住まいの近くに家を借りた。

「失礼だけど、『なんでこんな不便なところに住んでいるんですか?』と聞いたら、『岩手出身だから、のどかな環境でないとダメなんだ』って。

 都会でかわいいおねえちゃんをひっかけるために音楽をやるような人じゃない。ほとんどのロックンローラーはそうなんだけどね(笑)。

 大滝さんは、音楽の虜になっていた。山下(達郎)くん、杉(真理)くん、佐野(元春)くんもそう。ふつうの少年が、ある音楽に出会い、その世界に入り込んで、戻れなくなったんです」

 伊藤は、毎晩のように大滝さんの仕事場へ通い、音楽の講義を受けたり、ボードゲームに興じたり、落語を聴いたりした。多彩な趣味を持つ2人は、すぐに意気投合した。

「僕が子供のころに遊んでいた野球のボードゲームの話をしたら、ある日、『銀次くん、買ってきたよ』って。

 そして、『俺は巨人軍、君は南海ホークスだ。今まで所属していた選手を全部使っていいというルールにしよう』と。

 だから、大滝さんの巨人軍は、ファーストが川上哲治で、サードが長嶋茂雄。ボードゲームなのに、大滝さんは1球ごとにスコアブックをつけるんです(笑)」

 大滝さんは、伊藤のバンドメンバーやレコード会社のスタッフに声をかけ、野球チームを結成。チーム名は「福生エキサイターズ」だった。

「大滝さんは、『キャンプをやろう』って言うんです。キャンプといっても沖縄へ行くわけではなくて、近くの公園でランニングやキャッチボールをやるんです。大滝さんはクリーンアップを打つホームランバッターでした」

 大阪出身の伊藤は、お笑いが好きで、吉本新喜劇をよく観ていたという。

「大滝さんが、(ハナ肇と)クレイジーキャッツ好きだとわかって、僕が持っていた中原弓彦さんの『日本の喜劇人』『世界の喜劇人』という本を渡したら、狂喜してね。

 それから、自分たちが欲しいオールディーズとともに、クレイジーキャッツのレコードを集めるようになりました。

 水道橋のあるお店では、『この間、大滝さんがいらっしゃったわ。ハンチングにサングラス、マスクをしていたけど、すぐにわかった』って。常連だから変装していてもすぐにバレちゃう」

 伊藤が福生を離れたあとも、関係は変わらなかった。

「人生のいくつかの機微では、必ず大滝さんと話をしてきました。電話で話を始めると、2時間、3時間になりましたね。話題が尽きない人なので、話もおもしろいんです」

1981年に発売されたアルバム『ロング・バケイション』。

■歴史的名盤が生まれたその理由とは?

『ロング・バケイション』は、40年の歳月を経ても輝きを失うことはない。なぜか?

「『ロンバケ』の大滝さんの声は、イージーリスニングのように心にもスッと入っていく。会心のボーカルアルバム」(伊藤)

「大滝さんの声、趣向、時代の流れなど、いろんな焦点が一致したんですね。ジャケットのイメージもぴったりハマりました」(杉)

「メロディがいい。このアルバムに入っている曲は全部好きです」(佐野)

 前作の『レッツ・オンド・アゲン』(1978年)は、初回プレス1500枚、実売数百枚にとどまった。

 そんな大滝さんが1年がかりで制作した『ロンバケ』は、1981年度年間チャート2位を記録する大ヒットとなった。杉が語る。

「『君は天然色』では、日本のトップミュージシャン20人をスタジオに集めて『ウォール・オブ・サウンド』と呼ばれる豪華な音の壁を作りました。

 そして、歌入れになって、キーはもう少し低いほうがいいと、(サビを)ハーモナイザーですべての音を1音下げるという荒業を使ったと聞きました(笑)。

 そんな手法は、ビートルズによく似ています。すごく考えられている緻密な展開と、行き当たりばったりなところが混在しているんです。その混在具合が素晴らしい!」

 また、自身が体験し、積み重ねてきた音楽的な感性を、もっとも重視していたという。

「メロディにハーモニーをつけるとき、一般的には楽典的にこうだからって、セオリーをベースにします。

 でも、大滝さんは、『ロイ・オービソンはこうだろう』というアプローチをする。それを可能にするには、膨大な数の音楽を聴いて自分の頭の中に入れていないとできません」

 大滝さんのプロデュースとは、どんな手法だったのだろうか? 1982年のアルバム『ナイアガラトライアングルVOL.2』から紐解いてみる。

 そもそも、第二期の『ナイアガラトライアングル』は、佐野と杉が出演していたライブイベント「ジャパコン・ウイーク」のステージ上で、大滝さんによってサプライズ的に発表された。佐野が述懐する。

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