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日本郵政と提携するも楽天に感じる通信事業者としての先行き不安

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大幅赤字で足を引っ張る楽天モバイル事業

共同通信社

楽天が郵政から1500億円の出資を受け資本・業務面での全面提携を発表しました。楽天といえばつい先日、大赤字決算を発表したばかり。1500億円は決算上お荷物状態のモバイル事業につぎ込むとの報道ですが、この提携が楽天に明るい未来をもたらすのでしょうか。

まずは楽天の決算から。同社は2020年12月期決算で1141億円の最終赤字を計上。前期の318億円に続く2期連続の赤字決算となりますが、大幅に赤字幅が拡大しました。

数字上の悪化ぶりからは、楽天もまたコロナ禍によるダメージが大きかったのかと思われるかもしれませんが、主業務であるEC事業や金融事業はコロナによる巣ごもり需要の増大でむしろ好調に推移しました。

営業利益ベースでみるとそれぞれ前期比13%増、同17%増を計上し、コロナの影響はむしろ同社にはプラスに働いていることが分かります。ならば足を引っ張っているのは何かといえば、昨年4月に業務を開始したモバイル事業です。

「第4のキャリア」として期待されるも頓挫の背景

楽天のモバイル事業は451億円の売上げに対して、725億円もの営業損失を計上しています。その主な要因は、基地局整備にかかる投資負担です。

そもそも携帯電話業界の3キャリア寡占状態への風穴明けを期待され、政府肝いりで第4のキャリアとして免許が下りた同社モバイル事業でしたが、この基地局整備に対する考えの甘さ(大手通信キャリア幹部)からサービス開始が半年遅れたことが躓きの始まりでした。

予定を半年延期して開業という絶対に失敗が許されない環境の中で、当初予定していたコストを大幅に上回る投資を余儀なくされ、損益計画は大きく狂い始めたといえるでしょう。

さらに、ここにきて楽天を悩ませているのが、菅義偉首相就任で一気に加速した携帯料金値下げ要請です。そもそも実質談合状態にあった従来の携帯電話の価格破壊役を買って出た楽天は、昨年4月の業界参入時にデータ無制限月2980円を打ち出しました。

しかし、基地局整備の遅れなどで利用可能範囲が限られていることから、大きな波を起こすには至らず。これに業を煮やした菅首相は政権の座に就くや、政府が大株主であるNTTを動かしてもう一段の料金値下げを強行することで、本格的な値下げ競争を演出したわけなのです。

これにより、大手3キャリアが一斉に本体ブランドでの値下げに踏み切ったわけで、ドコモからは新料金プラン「ahamo(アハモ)」で楽天と同水準の料金設定を掲げられ、auとソフトバンクに至っては楽天水準以下の新プラン提示となったことを受け、楽天としてはもう一段の低料金プランを出さざるを得なくなってしまいました。

楽天からすれば、「業界地図の塗り替え」という政府の期待を背負った第4の通信キャリアとして新規参入したはずが、早々に「役立たず」と愛想をつかされた形であり、ブランドイメージの棄損も含めたダメージの大きさははかりしれません。

楽天モバイル”黒字化”は「絵にすら描けていない空想の餅」

BLOGOS編集部

楽天はモバイル事業参入時に黒字化のメドとして、700万回線の契約を掲げていました。

これは、先の2980円プランを基準にしたものであり、2980円プラン1件あたりの年間利益は非公表のため正確な数字は分かりませんが、単純に1回線あたりの利益が価格に比例して3分の2に縮小されると計算すると2分の3倍の契約数が必要になるわけで、少なく見積もっても1000万回線の契約に到達しないと事業単体での黒字化は難しいと考えられます。

1980円の新プラン導入後2月時点の契約数は約250万回線といわれており、まだまだ道半ばともいえない道4分の1を過ぎたあたりです。

今後は事業スタート時のような新規契約吸引力もなくなり、秋からは無料期間を終えたユーザーの逃げ出しも予想される中で、大手3キャリアが揃って大幅な値下げに踏み切ったために、新規契約獲得は一層の苦戦を免れ得ない状況にあるといえるでしょう。

大手3キャリアと伍して戦うには、まず何よりサービスの質のギャップを埋めるために早急な基地局の整備が不可欠であり、今回の決算発表でもその点は強調され、今期は4G基地局の増設投資を従来計画の6000億円から3~4割増やすとしています。

さらにその先に待ち受けるのは5G、6G対応です。ただでさえ、前述の如く新規契約数を採算ラインにのせるのですら苦労を強いられている中、多額の投資が今後も継続するという見通しを考えると、仮に今回郵政他から計2,400億円の出資を基地局整備に回したとしても兆単位の投資の前には焼け石に水。会見で「23年度には事業を黒字化したい」と述べた山田善久楽天モバイル社長の言葉は、「絵にすら描けていない空想の餅」に思えてきます。

通信事業者としての公的責任に楽天は耐えうるのか

通信事業というものは国家戦略にとっても、他国との駆け引きとも絡む大変重要な存在です。楽天の場合、基地局整備を甘くみて出鼻から大きな失態を演じ、それが尾を引く形での想定外の展開に苦戦しています。

基地局問題や通信不良等でたびたび行政指導を受けているにもかかわらず、またこの3月に顧客情報漏洩で個人情報保護法に違反したとして通算7度目の行政指導を受けており、もはや公共事業を担う企業にふさわしい資質を兼ね備えているとはおよそいえない状況にあるといえます。

国の承認を必要とする免許事業とは公共性が強いからこそ免許事業なのであり、楽天の躓きと事業の予想以上の苦戦からはそこをハナから履き違えていたのではないかとも思うのです。

5Gに関して申し上げれば、日本はオリンピック開催の延期等諸々の理由から国際的にみて現在大きく後れを取る形になっており、今後はその先の6Gも見据え国際水準を出し抜くレベルでの巻き返しが不可欠になります。

NTTが4兆円という莫大な投資をしてドコモを完全子会社化する決断をしたのは、携帯料金の値下げ原資をねん出するという単純な理由ではなく、長期的戦略の観点から5G、6G対応での勝ち残りを視野に揺らぐことのない盤石の体制を組むためです。今以上の値下げプランへの対応力という点からも盤石の体制といえるでしょう。

モバイル事業が今後も企業業績全体の足を引っ張っていくであろう楽天の実情をみるに、通信事業者としての公的責任の観点も含めて考えれば、モバイル事業をこのまま抱えていくことは荷が重すぎはしないかと思うのです。

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