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菅政権半年など

 石破 茂 です。

 どの内閣でも発足当初の高い支持率は「期待値」であって「実績値」ではありませんが、現内閣はコロナ対策、デジタル化、女性に対する施策など地道に辛抱強く課題に取り組んできたのではないでしょうか。コロナの状況と支持率が連動しているのが今までにない特色で、支持率はコロナの感染者が減れば上がり、拡大すれば「後手後手」と批判されて下がります。春になれば湿度が上がって飛沫の飛距離は短くなり、暖かくなって換気は冬場よりは頻繁になり、ワクチンの接種数の増加もあって感染は当面収束に向かうものと期待されますが、その間に、弾力性や機動性の確保、このような感染症に際しての行政の指示権の付与など、医療の体制を医療法の改正を視野に見直すことが解決すべき課題です。

 21日日曜日に、首都圏の緊急事態宣言は解除されることとなりました。この一年で新型コロナの解明は大きく進み、治療法も随分と進歩したはずなのですが、国民の恐怖感はあまり減っていないのではないでしょうか。「正しく怖れる」は必要ですが、「ただただ恐れる」であってはならず、AIを活用し、症例を収集・分析・共有することによって治療法の普遍化を図るべきです。30年前に教わった「名医という言葉があるうちは、医学は科学ではない」との状況は、今もあまり変わってはいないように思われます。

 同時に、この一年で進んでしまった「負の側面」にも目を向けるべきです。女性の自殺増や人々の孤独化、「この一年で少子高齢化は10年前倒しになった」という危機的な状況、認知症や鬱、糖尿病などの生活習慣病の増加、がん検診を控えることでの将来的ながん患者の増加などにも、早急に対策を講じなくてはなりません。

 新型コロナは地方創生の必要性を強く示唆するものでもあります。Go to キャンペーンの再開による関連産業の下支えは、あくまでカンフル的なものであって、終了すれば反動もまた大きくなります。地域を限ったマイクロツーリズムの振興をもっと図るべきですし、オフピーク運賃にも大きな意義があります。地元の人が地域の魅力を知らなくて地域の発展はあり得ませんし、テレワークやワーケーションも日本の形や日本人の生き方を変えるものです。

 バイデン大統領が菅総理を世界の首脳で初めて招いて会談することや、今週開催された日米2+2の共同発表は、米新政権の日本に対する期待の表れであり、同時に日本に責任と負担、覚悟を求めるものでもあります。

 中国の台頭を睨んだ「ポストINF」の時代にあっては、日本の主体的な取り組みこそが問われます。イージスアショアの代替策の決定、敵基地反撃能力保有の判断、アジア・太平洋地域における同盟の在り方の再構築は喫緊の課題です。バイデン政権は損得やディールを重視したトランプ政権とは異なり、同盟重視と言われていますが、それだけ日本には、単なるアメリカ追従ではなく、負担と責任が求められます。

 中国にとって、台湾の独立を阻止することは死活的に重要で、香港に対する対応はその布石と考えるのがある意味自然です。「漢民族」ではない「中華民族」と言う概念を打ち出し、「中国の夢」を唱え、力による現状変更を躊躇しないのは、「戦略的国境」(国力が大きければ国境線も膨張する)との考えに基づくものであって、今に始まったものではありません。

 味方が相手の五倍の兵力なら攻撃し、二倍ならば相手を分断し、勝てない時は戦わないのが「孫子の兵法」を信奉する中国の伝統的な手法ですが、戦力バランスが激変しつつある今、中国海警法の持つ国際法的な問題点をともに懸念する国を増やすとともに、法的・能力的な海上保安庁及び自衛隊の強化により、相対的な抑止力を向上させなくてはなりません。

 2月19日、バイデン大統領は就任後初のG7オンライン会議で、同盟の強化につき「一国に対する攻撃は全加盟国に対する攻撃である」とNATO体制に言及する形で強調しましたが、NATO条約と日米安保条約のコミットメントについての規定ぶりには明らかな相違があることにも注意が必要です。

 NATO条約においては「その必要と認める行動(兵力の使用を含む)を個別的に及び他の締約国と共同して、直ちに執る」とありますが、日米安保条約においては「自国の憲法上の規定と手続きに従って共通の危険に対処するように行動する」という国内法の留保がついています。

 すなわち、米国大統領は戦争権限法による制約(議会の同意が無ければ60日以内に軍を撤退させること、議会が撤退の議決をした場合にも撤退させること)を受けることを明確にしています。

 このように、日米安保条約は日米地位協定、同盟国に防衛力の増強を求めるバンデンバーグ決議、および戦争権限法とセットで理解しなければならないものであり、外務・防衛当局のみならず、我々政治にもこの事実を踏まえた上での政策立案が今後さらに強く求められます。

 東京の桜も間もなく見頃となります。来年のこの季節には、大勢で楽しい花見が出来るようになっていることを心より願います。

 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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