- 2021年03月19日 12:52 (配信日時 03月19日 11:15)
「差別の意図はない」とあえて女性蔑視を口にする人たちの根本的誤解
1/2森喜朗元首相の女性蔑視発言は国内外で多数の批判を集めた。ドイツ出身のコラムニスト、サンドラ・ヘフェリンさんは「蔑視や女性差別は日本だけの問題ではない。男女平等が進んでいるドイツでも大炎上することがある」という――。

女性蔑視、女性差別は日本だけの問題ではない
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森会長(当時)が日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議会で女性差別的な発言をしてから1カ月余り。同氏の後任である橋本聖子氏の会長の仕事は今やすっかり板に付いてきています。
今月3日に橋本会長は元女子マラソンの金メダリストである高橋尚子氏を含む新たに12人の女性理事の選任を発表しました。
このことにより、それまで20%だった委員会の女性理事の比率は42%に引き上げられました。ただ森元会長の発言のような「女性蔑視」や「女性差別」の問題が「日本だけの問題」かというと、そうではありません。
ドイツでは党首の発言が問題に
筆者が出身のドイツは男女平等指数において153カ国中10位です。あらゆる分野において男女平等が比較的進んでいるわけですが、ドイツに女性蔑視の考え方が全くないかというとそうではありません。
ドイツでは、下ネタを含む性的な発言が長いこと「ひねりのきいたジョーク」「気のきいたジョーク」と捉えられてきました。この手のジョークが20世紀の初頭から「老紳士ジョーク」(Altherrenwitz)として市民権を得てきたことに、問題の根深さがあるのです。
日本では夜の酒席などの「非公式な場」でなされることが多くあります。一方のドイツでは「公の場」で、しかもドヤ顔で発言をする著名人や有識者が度々問題になっています。
昨年開かれたFDP(自由民主党)の党大会。党首のChristian Lindner氏が退任する女性の党幹事長Linda Teuteberg氏に別れのスピーチをしました。
Chauvinismus Par excellence, das 1x1:
— Anna Peters (@annarmpeters) September 19, 2020
- ICH habe sie vorgeschlagen damals
- ICH habe ihr einen neuen Vorschlag gemacht, nachdem ich sie von ihren Posten gekickt habe
- ICH mache einen sexistischen Witz, hahaha, das wird man ja noch sagen dürfen
#Lindner pic.twitter.com/BFNfXEG2Ac
スピーチの中で「リンダと私は過去15カ月間のあいだ、300回ぐらい朝を一緒に迎えました」(1分32秒のところ)と語り、あたかも一緒に泊まったかのような言い回しをしました。
この動画を見ると、同氏が発言の直後にあえて間(ま)をおき、会場の笑いを待っていることが確認できます。そして実際に会場で笑いが起きると、同氏は待ってましたとばかりに「毎朝ルーティーンとなっていた政治について話していた電話のことを言ったまでです。あなた方が考えているようなことではありません」と続けています。
性的なジョークを言ったことに対する申し訳なさのようなものは全く感じられず、この手のジョークを言うことに慣れている様子です。
「ジョークのつもり」で辞任に追い込まれたドイツの評論家
この発言は、女性蔑視だという非難の声がドイツのメディアやSNSなどであがりました。ところが辞任した森元会長とは違い、同氏は謝罪はしたものの現在も党首を務めています。
一方で、「老紳士のジョーク」が原因で辞任に追い込まれた人もいます。ドイツの評論家でジャーナリストのRoland Tichy氏です。長年Ludwig-Erhard-Stiftung e.V.(ルートヴィヒ・エアハルト財団)の会長を務め、優秀なジャーナリストに与える賞を決定するDJP(Deutscher Journalistenpreis)の審査員でもありました。
ところが同氏は昨年、自身が発行する雑誌『Tichys Einblick』(「Tichyの洞察」という意味)で、SPD(ドイツ社会民主党)の女性政治家Sawsan Chebli氏の将来性と資質を「僕の友達のジャーナリストたちは『高齢男性が多いSPDの中におけるSawsan Chebli氏の長所はGスポットがあることだけだ』と言っている」と書きました。
政治の話に全くそぐわない、性的な表現を活字にしたことが問題なのは言うまでもありません。さらに卑怯なのは同氏が「自分がそう思う」と発信せず、第三者(「友達のジャーナリストたち」)の発言として堂々と載せていることです。
- PRESIDENT Online
- プレジデント社の新メディアサイト。



