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【読書感想】老後レス社会 死ぬまで働かないと生活できない時代

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老後レス社会 死ぬまで働かないと生活できない時代 (祥伝社新書)

老後レス社会 死ぬまで働かないと生活できない時代 (祥伝社新書)

  • 作者:朝日新聞特別取材班
  • 発売日: 2021/01/30
  • メディア: 新書




Kindle版もあります。

老後レス社会

老後レス社会

  • 作者:朝日新聞特別取材班
  • 発売日: 2021/03/05
  • メディア: Kindle版

待ち受けるのは暗黒の未来か――今から19年後、日本の人口は65歳以上の高齢者35%を占めると推計されている。社会保障費が増大する一方で、労働力不足は深刻化。それが「2040年問題」だ。政府は「一億総活躍」と称し、高齢者の就労促進を謳うが、そこには公的支援を抑えようとする意図が透けて見える。70歳を過ぎてもハローワークに並ぶ。もはや「悠々自適の老後」はなくなった。

死ぬまで働かなければ生きていけない「老後レス社会」が到来する。未来の日本はディストピア(暗黒の世界)なのか。朝日新聞本紙と朝日新聞デジタルで好評を博したシリーズに、新たな取材による加筆を全面的に施し、「老後のなくなった日本の現実」と、避けられない未来をどう生きるかを考える。高齢者はもちろん、高齢者予備軍必読の1冊!

 僕も40代を終えようとしていますので、「老後」という言葉も意識せざるをえなくなってきました。いつのまにかこんなに年を重ねてしまったなあ、本人はそんなに成熟したとも思えないのに、健診の項目が増え、老眼がひどくなり……というのが実感ではあります。

 僕が子どもの頃の「老後」のイメージは、定年退職後は、年金をもらって盆栽や釣りをやり、ときどき孫の世話をしつつ、のんびり暮らす、というものだったのですが、いまや、「悠々自適の老後」なんてものは幻想になってしまっているのです。
 
 老々介護や介護離職などの問題はかなり前からメディアでも採りあげられてきたのですが、60代から70代半ばくらいまでの「身体は元気な高齢者」たちも、ほとんどの人が、優雅な年金暮らしなどはできていない現状が、この新書では紹介されているのです。

 この本の最初の章では、70代で警備員として働いている人たちが出てきます。

 街中の工事現場でよく見かけるように、高齢者が警備員に占める割合は驚くほど高い。そしてその割合は年々、上昇し続けている。

 警察庁が毎年発表する「警備業の概況」によると、2019年末時点で全国57万人の警備員のうち60歳以上は45%、増えているのは70歳以上で全体の15%を占め、7人に1人以上にあたる。

 工事やイベントで道路使用許可を警察から得るためには、一定数の警備員配置が不可欠だ。申請する際には、道路規制図を添えて、警備員の配置を書き込む。安全が確保される人数が配置されないと許可が出ない。もし後から配置されていないのが見つかると、施工業者が処分される。

 こうして生まれる雇用が「年金の足しに」などの理由で働く団塊世代の生活を支える構図が浮かぶ。

 たしかに、道路工事や駐車場の誘導などで働いている警備員さんをみると、「けっこう高齢みたいだけど、こんなに暑い(寒い)のに、ずっと立ちっぱなしの仕事で大変だなあ……」と思うことがよくあるのです。

 以前は、若者のアルバイトが多かった記憶があるのですが、いまは、高齢者が半分近くを占めています。しかも、70代以降が増えてきているのだとか。

 高齢警備員の取材を通して、人生の終盤にさしかかっても働き続けている人、いや、働かなくては生きていけない人が、いまの日本には大勢いるという現実が見えてきた。

 厚生労働省によると、2019年度にハローワークで新たに登録した65歳以上の求職者は約59万人に上り、10年前(2009年度)の約32万人の1.9倍近くになった。また、労働政策研究・研修機構の調査(2015年発表)では、「60代が働いた最も主要な理由」は「経済上の理由」が最も多く、約58.8%を占めた。

 このようなデータをみると、「老後のための2000万円の貯蓄が必要」とか夢物語に思えてきます。
 ただ、当事者たちへの取材からは、あまり悲観すべきことばかりではないのかな、という感じもするんですよね。

 もちろん、60歳で仕事を引退して、あとは年金で好きなことをして暮らすことができる社会であれば言うことはないのだけれど、いまの60代には健康状態が良い人が多いですし、仕事をして社会とつながり、お金を稼ぐことに生き甲斐を感じてもいるのです。
 
 現実問題として、日本の一層の高齢化は避けられず、働き手が不足していくのだから、元気で働ける60代から70代前半くらいの高齢者には、どんどんできる仕事をやってもらったほうが良いのかもしれません。

 会社で偉かった人などは、立場の違いに戸惑ったり、プライドを捨てられなかったりして難しいところもあるようですが、「仕事をして稼ぐ」ことに前向きな高齢者もけっこう増えているのです。

 若者の負担ばかりが増していくよりは、働ける高齢者もできる仕事をしていくほうが、どちらの世代にとっても幸福ではなかろうか。

 そもそも、日本人の(あるいは人類の)歴史において、「悠々自適な老後」なんていうものが存在していた(かもしれない)のは、それこそ『サザエさん』の時代くらいのもので、太平洋戦争くらいまでは多くの人が「老いる」までに寿命が尽きていたわけですし。

 この本のなかでとくに印象に残ったのは、「会社の妖精さん」の話でした。

 東京都内の居酒屋で、記者(35)が学生時代の友人(33)と飲んでいた時の話だ。
 友人は新卒で入社したメーカーを数年前に辞めた。日本を代表する名の知れた大手企業で、給与水準も高く、福利厚生も整い、有給取得率もきわめて高い。

はっきり言って「ホワイト企業」。仮に景気が大きく落ち込んで日本の多くの製造業が苦境に陥ったとしても、きっとこの会社は最後まで生き残るだろう、という会社だ。実際、2020年度にコロナ禍で多くの企業が赤字に転落する中でも、減益ながら黒字をしっかり確保している。そんな条件の良い会社をなぜ辞めたのか。友人はいくつかの理由を言ってから、不思議な言葉を口にした。

「会社に『朝の妖精さん』がたくさんいたことも理由の一つかな」
 朝の妖精さん? どういうこと? というか、妖精ってそもそもなんだっけ?
 辞書を引くと、「(西洋の伝説・童話などに出て来る)動植物や森・湖など自然物の精。たいていは小人の姿をしたもの。フェアリー」(『新明解国語辞典』第五版)とある。
 フェアリー! 大手メーカーにフェアリー?

 後日、友人が提案してくれた。「もし妖精さんのことを詳しく聞きたいなら、名付け親を紹介しましょうか」。ちょうど企業での「働き方改革」をリサーチしていたところだった。いま取材している「老後レス」にもぴったりな話だという。ぜひ、ぜひ、お願いします。

 それから半月後、都内の喫茶店で「名付け親」の女性(34)に話が聞けた。

 この女性も、同じメーカーに勤務していたが、「妖精さん」に嫌気がさして退社したという。いったい妖精さんとは何だ。

 女性によると、妖精さんが生息するのはこのメーカーの関東地方の拠点。運が良ければというよりも、目をこらせば身近にいる存在だった。早朝の食堂に現れ、午前9時には姿を消してしまうという。

「フレックスタイムをフル活用して朝7時前には出社し、タイムカードを切って食堂に移動。コンビニで買った朝ごはんを食べたり、スポーツ新聞を読んだりして1~2時間ゆったり過ごす。他の社員が出社する9時が近づくと、静かに自席に戻っていく。朝の数時間しか姿を見ることができないので、妖精さん」

 そう、妖精さんとは、このメーカーに勤める「50代後半の働かないおじさん」だった。

 女性によると、自席に戻った妖精さんは、管理職の一歩手前で「エア残業」し、パソコン操作は「人さし指だけの一本指打法」、上司も彼らに積極的に仕事を振らないため「日中はパソコンの前でフリーズ」。この拠点にはこうした50代後半の男性社員が多く、「毎月のように送別会が開かれていた」。

 想像とは違い、あまり好まれる存在ではないらしい。いやむしろ、疎まれている。

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