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《3割を打った》財務省職員が口にした「プライドを含んだ隠語」が物語る“霞が関の働き方改革”の難しさ 異常すぎる「378時間残業」発覚 - 山口 真由

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残業378時間の衝撃

 コロナウィルスへの政策立案をする内閣官房の対策室、通称“コロナ室”で、ある職員の1月の残業が378時間に及んだことが明らかになった。想像してほしい。平日ほぼほぼ徹夜をして土日も1日中働かなくてはこんな時間にはならない。長時間労働を常態化している霞が関からも、「非人道的だ」という声が上がるほど異常な長さだ。

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 折しも、サービス残業が横行している中央官庁の実態が明らかになり、それが官僚を目指す若者の減少、さらに官僚になった若者の流出につながると問題視される中で、霞が関の働き方改革は急務となっている。


自らが管轄する「コロナ室」で378時間もの残業をした官僚を出してしまったことを西村康稔経済再生相は謝罪した Ⓒ時事通信社

 フォロワー数230万人近くを誇る河野太郎大臣はTwitter上で、今年の2月から残業時間を厳密に反映した給与が支給されると投稿した。霞が関のサービス残業を問題視した河野大臣は、1月に適切な残業代の支給を閣僚に要請し、その後の最初の国家公務員給与の支払いの日だったのだ。

 サービス残業をなくすという改革には、当然、私も賛成だ。だが「これで手取りが増えた、万々歳」と喜べるほど単純なものではない。残業代を支払うという改革はスタートラインであっても、決してゴールではないからだ。

 それはそうだろう。「378時間残業している人もいます。でも、残業代は全額払ってますから!!」とドヤ顔をされたとして、誰が「よくやった」と手放しで称賛できるだろうか。

サービス残業から闇残業に?

 残業時間378時間を筆頭に、今年1月のコロナ室の平均残業時間は122時間とも報道された。そう、サービス残業の実態が「見える化」されることで、課員全員が月100時間超の残業をする部局の存在も明るみに出る。そのような事態は決してあってはならない。ということで、残業時間そのものを減らすことが次なる要請となるだろう。

 だが、残業代を全額支払う改革に比べて、残業そのものを減らす改革はより困難であると、現役官僚は語る。

 まず官僚にとって、仕事量を自らの才覚だけでコントロールすることはほぼ不可能だ。ひらめきという名の政治家の思いつきによって降ってくる仕事の数々。もちろん、官僚が政治家に忖度しすぎたきらいはあるが、メンツがスーツを着て歩いているような永田町の住人の多くは、要請をスルーされれば「軽んじられた」と激昂する。そんな永田町を相手に、霞が関に「拒否権」はないという。

 次に、仕事量が減らないなら人員を増やすという機動性も、公務員の場合には乏しい。確かに、残業代が問題視されたコロナ室は周辺部署からの「人狩り」によって増員したという噂が流れている。だが、コロナ室に人を送った部署はより少ない人数でそれまでの仕事量をこなさざるをえない。つまり、霞が関全体の仕事量が減らなければどこかにひずみが行く。しかし公務員の総数は厳密に管理され、それどころか「合理化」という名の減員を課されている。

 仕事は減らない。人員は増えない。この二重苦を抱えたまま、残業だけを減らすことをきつく命じられたとする。そうすると、サービス残業の痕跡すら残さない「闇残業」によるしかない。さらに、リモートワークの環境は闇残業を可能にする。リモートであっても残業代を支払うのは当然の制度設計だが、実際には把握も監督も難しいため、うやむやになる可能性も高い。

 だから、サービス残業をなくすという改革はスタートラインに過ぎないのだ。逆に、ここで満足して改革の手を止めれば、サービス残業よりもさらに不健全な闇残業が横行する可能性がある。サービス残業の改革は、業務改革とセットでなければならない。さらにいえば、報酬の基準としてのみならず、一種の評価の指標として労働時間を用いてきた仕組みそのものを変えていくことが、「働き方改革」ではないかと私は思う。

インプットを評価する家族型組織

 中央官庁の官僚は、労働時間というインプットの総量によって評価されてきた。残業代方式は、同じ仕事をより非効率に遅くまで続けた方が給与の面で報われるという負のインセンティブが働くと批判される。

 だが実際には、より速く仕事を終わらせた“デキる人”のところに次の仕事が降ってくる。そうして情報が1人の人間に集約され、それゆえに仕事もさらに集中するというスパイラルが、個人の評価をうなぎ上りに高めていく。

 378時間残業した職員について、「非常に意欲があり、周りから頼られる存在で業務が集中しがちだった」と釈明する西村康稔経済再生相は、評価の高さと労働時間の長さが裏表であることを裏づける。要は、振られる仕事量の多さは各員の能力の証明であり、処理する業務量の多さは各部局の価値の証左でもあったのだ。

 私が新人として勤めていたころから、終電を逃した職員用に財務省は宿舎に向かうバスを走らせていた。財務省の横に深夜にずらっと並ぶタクシーの車列。その中には長距離を帰ってくれる上得意に酒と肴を提供するものもあり、それが「居酒屋タクシー」として問題になったこともある。職員をタクシーで帰すわけにはいかない。だが、仕事は終わらない。職員を乗せて財務省から宿舎へと向かうバスは苦肉の策でもあった。

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