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「不倫に陰口、いばる妻たち」年収1000万超の裁判官たちのオンボロ官舎生活

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法の番人である裁判官は、どんな生活を送っているのだろうか。明治大学法科大学院教授の瀬木比呂志氏は「法と良心に従う人物像をイメージするかもしれないが、実情は官舎と裁判所を往復する人生で、暮らしぶりは意外と小市民的だ」という——。

※本稿は、瀬木比呂志『檻の中の裁判官 なぜ正義を全うできないのか』(角川新書)の一部を再編集したものです。

アパートの部屋の歩道
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Torsakarin

裁判官の世界は「官僚型ムラ社会」

裁判官といえば、普通の人々にはまずは黒い法服を着た姿しか思い浮かばないし、それは諸外国の裁判官と同じことなので、日本の裁判官も、「法と良心に従って裁きを下す独立の判断官」なのだろうと考えている人々が多い。

しかし、実際には、日本の裁判官は、その精神のあり方からみても、果たしている機能からみても、「閉じられた世界の役人」という部分が非常に大きい。つまり、一枚岩の性格の強い「司法官僚」であり、「裁判所という組織、機構、権力の(重要な)一部」なのである。

もちろん、個々の裁判官の中には、公的には独立心をもって職務を行い、私生活では普通の市民であるような裁判官のかたちをめざしたいと考えている人々もおり、私もその1人だった。しかし、現実には、司法エリートによって構成される強固なムラ社会、しかも裁判所当局の厳重なコントロール下にある官僚型ムラ社会の中でそのような志向を不断にもち続けるのはきわめて難しい。それが、日本の裁判官の「リアル」なのである。

官舎と裁判所を往復するだけの人生

私の知っている80年代以降の裁判官の生活といえば、それは、驚くほど変化や起伏の少ない、かつ小市民的なものであった。

日本の訴訟の進め方は、多数事件の同時並行審理方式であり、個々の事件については1カ月ごとぐらいに期日が入ることもあって、審理裁判は、いきおい訴訟記録に頼ることになる。つまり、書面重視の傾向が強い。だから、裁判官は、法廷のない日には、裁判所で記録を読んでいる。家にも記録を持ち帰って読み、審理のためのメモ(手控え)を作ったり、判決を書いたりする。

法廷、和解(民事の場合)、記録読み、判決起案、民事執行・民事保全・破産等の民事訴訟以外の民事事件、令状処理。裁判所で仕事が終わらなければ、家へ帰ってまた記録読み、判決書作成。だから、職場からの帰りにどこかに寄ることも少ない。官舎と裁判所、後には自宅と裁判所の往復でほぼ人生が終わる。それが日本の裁判官である。

昇進を待ち望むような精神状態におちいっていく

記録を家に持ち帰る場合には、なくすと大変なことになるから、電車の中でも気が抜けない。大きな記録を風呂敷等に包んで網棚に載せていて貴重品と思われ盗まれる例があるためだ。

こうして何年も単調な生活を続けるうちに、多くの人々は、次第に、地家裁所長や高裁長官になって、記録から解放されてほっと一息つけ、同時に居並ぶ裁判官や職員たちから頭を下げられる時期を楽しみに待つような精神状態におちいってゆく。

しかし、そうした管理者裁判官としての期間も、確かに昼間は楽だが、夜はあちこちと会合に引っ張りまわされ、あいさつと宴会の連続なのである。また、最高裁や上位の裁判所からは、管理者として有能かどうか、裁判官や職員をきちんとコントロールできているかを監視され続けている。だから、権力をもつことを好む人間以外にとっては、それほど楽しいわけではない。

法廷と小槌
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imaginima

転勤がとにかく多い裁判官の異動

日本の裁判官の特異な精神構造の形成に大きく影響しているのが、官舎生活だろう。人間は要するに意識をもった動物にすぎないのだから、その精神生活も、身近な環境から大きな影響をこうむることは否定できない。

日本の裁判官生活になぜ官舎がつきものかといえば、日本の裁判官には異動、転勤がつきものだからである。そして、実はこうした裁判官の異動、転勤は、日本特有のものなのだ。少なくとも欧米では、裁判官は「空きができる裁判所の裁判官」として任用されるのであって、原則として異動はしない。

裁判官のこうした異動システムは、これも後に論じるが、裁判所当局にとって、裁判官たちを地域社会から隔離し、かつ、いつどこへ転勤させられるかわからない根無し草の不安な状態に常時置いておけるという意味で、きわめて都合のよいものなのである。

裁判官は、3、4年程度で転勤を繰り返す(なお、検察官は、より異動の頻度が高い)。東京中心に勤務する裁判官でも、事務総局等の勤務が特別に長い人でない限り、裁判長になるまでに、3回ぐらいは地方に出る。これでも往復で6回の転勤になる。多くの裁判官ではそれ以上であり、8つある高裁管内のうち6つ、7つまでまわったという人も少なくない。「自分はずっと特定の地方勤務でいいからなるべく遠方には動かさないでほしい」といった希望すら、若いころには絶対に聞き入れられない。

大型官舎での生活はすごく息苦しい

今はもうさすがにそこまでのことはないと思うが、昔は、裁判官が自宅をもって官舎を出ると遠くの裁判所に異動させられるといった意地悪人事が多かった。これは、「まだ若いくせに家なんかもつとこうなるよ」という見せしめだ。そして、周囲の裁判官も、その多くは、陰で、「それみたことか」と面白がっている。実に日本的な、抑圧された感情の発露である。

以上のような理由で、多数の裁判官は、40代後半ぐらいまでは自宅をもちにくく、官舎生活が長くなる。

この官舎生活は、外の世界から完全に隔離されていて、近隣との付き合いは一切ない。精神的な壁で周囲から隔てられた集合住宅なのである。そうはいっても、地方であれば、官舎の規模もしれているから、その中での付き合いもまずまず常識的なもので、それほど特異なものはない。

しかし、東京の大型官舎は別である。4棟、5棟のアパート群となり、住んでいるのは裁判官とその家族だけだから、右のような官舎の特質が、何倍にも濃密になる。個々の裁判官やその妻の抱えている精神的なひずみも、同様に増幅される。もちろん本当に問題のある人々の割合はそれほど大きくないはずだが、何というか、総体としての閉塞感、息苦しさが非常に強くなるのだ。

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