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「依存症は餌やりをやめるといなくなる野良猫のようなもの」最低でも2年かかる“依存症治療”で必要な“3つのルール”とは 『あなたもきっと依存症 「快と不安」の病』より #2 - 原田 隆之

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覚醒剤使用者のうち依存症になるのはたった20% 「ダメ。ゼッタイ。」に隠された“不都合な真実” から続く

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 アルコール、ニコチン、薬物、ギャンブル、オンライン、糖質依存、性的依存……。古典的な依存症から現在研究途上のものまで、人間を依存状態に陥れるきっかけは世界にあふれている。それだけに、“依存症”は誰にとっても関係がないとはいえないものだ。依存症の治療について理解しておくことは、自分自身、そしてまわりの人が依存症に陥ってしまった際のことを考えても、意味のあることだといえるだろう。

 ここでは筑波大学で教授を務め、依存症の臨床研究に深い知見を持つ原田隆之氏の著書『あなたもきっと依存症 「快と不安」の病』(文春新書)を引用。最新の依存症研究でわかった効果的な治療のあり方を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

◆◆◆

噓:依存症の克服はつらくて厳しい闘いである
真実:依存症の克服は楽しみを増やすことである

依存症とは

 依存症とは何かを簡単にまとめると、以下のようになる。
 ・脳の機能障害によるコントロールの障害である
 ・ライフスタイルの病である
 ・記憶の病である
 ・不適応的な学習の結果である

 このように多様な側面のある依存症であるが、その治療においても、それぞれの側面を考慮したうえでの多様な「戦略」が必要となってくる。

 そして、そのためには、本人の主体的な努力が何よりも重要になってくる。それは、「依存症という生き方」から、新しい別の生き方を選び、実践するための取り組みである。とはいえ、それは何も一人でがむしゃらに「反省」「我慢」をするような、孤独で厳しい闘いではない。

 科学の力、仲間の力、スピリチュアルな力などを総動員して、自分に合ったやり方で効果的、効率的に依存症の克服を目指すことができる。そのためにはまた、周囲の支援、社会の支援が大きな力となることは言うまでもない。

 ここでは、依存症の治療について解説するが、煩雑さを避けるために、主に薬物依存症を例に挙げながら説明を進める。しかし、もちろんアレンジをすれば他の依存症にも活用できる。

 さらに、まだ依存症にまでは陥っていない人が、問題性の悪化を防止するためにも活用することもできる。たとえば、自分の飲酒パターンをどうにかしたいという人、甘いものを控えたほうがよいと思っている人、オンラインゲームの時間を抑えたいと思っている人など、いずれもそれぞれの問題に合わせて工夫して活用することができる。

薬物療法

 現在のところ、残念ながら依存症そのものを治してくれる薬はない。しかし、離脱症状を緩和したり、渇望を抑えたりする薬はいくつか開発され、認可されている。

 たとえば、禁煙外来で処方されるバレニクリン(チャンピックス)はよく知られている。これはニコチン受容体の「鍵穴」に先回りして結合し、喫煙してもニコチンがその受容体に結合するのを邪魔する働きがある。そのため、喫煙による満足感などが低下するという作用がある。タバコを吸いたいという欲求も低減するため、これらが相まって効果を発揮する。禁煙外来では、12週間かけて1日1回1錠から始め、徐々に回数や量を増やしていく。

©iStock.com

 アルコール依存症に対しても、飲酒欲求を抑える薬がある。現在わが国ではアカンプロサート(レグテクト)という薬が承認されている。ただし、完全に渇望を抑えるまでの作用があるわけではなく、このあと紹介する認知行動療法などとの併用が推奨されている。

 またナルメフェン(セリンクロ)という薬は、飲酒量低減効果を狙って処方される。飲酒する1~2時間前に服薬することで、飲酒による高揚感を抑制するため、結果飲酒量を抑える働きがある。

 海外ではこれらのほか、ナルトレキソンという薬も用いられている。ナルトレキソンは、オピオイド受容体の拮抗薬であり、これはオピオイド受容体の「鍵穴」に先回りしてブロックすることで、飲酒による「快」を遮断する。したがって、オピオイド受容体に作用する他の薬物に対しても効果を発揮する。

歯止めになりづらい治療法

 アルコール依存症治療では、古くから抗酒剤としてジスルフィラム(ノックビン)が用いられてきた。これは、肝臓のアルデヒド脱水素酵素の働きを阻害するものである。この薬を服用した後、飲酒をすると体内のアセトアルデヒドが代謝されず、発汗、頭痛、嘔吐などの症状が発生する。つまり、お酒が飲めない人と同じようになるのである。

 これは薬物療法ではあるが、心理療法の「嫌悪条件づけ」というテクニックを利用した方法である。飲酒と嫌悪的な反応を条件づけることによって、飲酒行動を抑制しようとするものである。患者さんには、こうした不快な症状が出ることを説明して毎日服用してもらうため、飲酒の歯止めになることが期待される。

 とはいえ、これがなかなか歯止めにはならない。大丈夫だろうと高をくくって飲酒してしまい、救急車で運ばれる人はたくさんいる。また、飲酒を少量ずつ試してみて「これくらいなら大丈夫」と計算する人もいる。何のために投薬を受けているのかと思ってしまう。

 これらの薬は、きちんと服薬すればそれなりの効果があるが、守らない人も非常に多い。そのため、服薬遵守のための心理療法とも併用することが望ましい。

認知行動療法

 依存症の治療において、最も確実なエビデンスがあり、治療の第一選択肢となるのは認知行動療法である。

 認知行動療法とは、元々うつ病の治療から始まった心理療法であるが、今や数多くの精神障害や心理的問題の治療に用いられている。さらには、心身症のような心と身体が大きく影響しあう障害の治療にも効果を上げている。

 依存症の治療に特化した認知行動療法の治療モデルとして、リラプス・プリベンション・モデルがある。「リラプス」とは、再発のことを指すが、依存症治療で重要なのは、問題となっていた物質の使用や行動を単にやめることではなく、「やめ続ける」ことである。作家のマーク・トウェインは、「禁煙なんて簡単だ。これまで何千回も禁煙したよ」と述べたというが、このように単にやめるだけならばいつでもだれでも簡単にできる。したがって、リラプス・プリベンションとは、リラプスを防止し、長く「やめ続ける」ことを目的とした治療モデルなのである。

 リラプス・プリベンションは、複数の認知行動療法的技法を組み合わせた包括的治療モデルであるが、中核的治療要素と周辺的治療要素に分けることができる。前者はほぼ全員に行うべきものであり、後者は各人が有するリスクファクターや問題性に合わせて実施すべきものである。

引き金への対処

 中核的治療要素のなかで最も重要なものは、引き金を見つけ、それに対処することである。引き金とは、まさに問題となっている行動を引き起こす刺激のことである。いくら意志の力で薬物をやめようと固く誓っても、引き金が引かれると快感回路にスイッチが入って渇望が生じ、リラプスへと至ってしまう。

 薬物依存症の場合、多くに共通する引き金は、薬物仲間とネガティブ感情である。薬物をやめようと思っていても、仲間から誘われたり、ストレスのあるときなどには、リラプスのリスクが高まる。

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