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「アスリートだけが特別じゃない」五輪メダリストが指摘する“オリンピック関係者の深刻なズレ” - 広野 真嗣

「東京五輪は何のためにやるのか」

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 開催まで4か月と迫った東京五輪の準備が迷走している。

「海外からの一般客受け入れ断念」「中国製ワクチンの選手団への提供」など、開催を前提とした新プランやサプライズ発言が次々と急浮上している。ところが前者については「結論が出たわけではない」(橋本聖子東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長)、後者については「聞いていない」(丸川珠代五輪担当相)と、国際オリンピック委員会(IOC)、組織委や東京都などの調整不足は明らか。


東京五輪組織委員会の前会長森喜朗氏と、現会長橋本聖子氏 ©共同通信社

 どこで何が、どんな基準で決まるのか。開催地である日本の国民にはさっぱりわからない。国民の不信感は伝播し、内定していた聖火ランナーからは辞退の申し出が相次ぐ。挙句、パラリンピック金メダリストからも辞退者が出た。

五輪関係者と国民の“意識のズレ”

 五輪に出場し、大会への思い入れもあるアスリートたちは、問題の根源をどう見ているのか。「文藝春秋」編集部は、五輪メダリストであり、忖度ない意見を表明してきた2人のアスリートによる対談を行った。

「『情報の出し方』や『見せ方』は、これまで失敗し続けてきた最大の弱点」と指摘するのが、ソウル五輪女子柔道銅メダルの山口香筑波大学教授(日本オリンピック委員会理事)。検討過程や決定事項など情報を出し惜しむIOCや組織委のやり方に問題があるという。バルセロナ五輪で女子マラソン銀メダルの有森裕子氏(元マラソン選手)も、「発言が『それ覚悟を持って言った? やった?』と言いたくなることばかり」と山口氏に応じる。

 山口氏は五輪関係者と国民の“意識のズレ”をこう指摘する。

山口 コロナ禍で図らずも炙り出されたのは、オリンピックを優先的に考えるより「1回ぐらいやらなくてもいいのでは?」という国民も多いということ。もちろん、同時に「選手にとっては一生に一度のこと」と理解してもらってもいるんです。

 ただ、両者を比べると「苦しい時でも応援したい」と言ってもらえるような状況を勝ち得るほどではなかった。「努力が十分ではなかった」ということをまず感じなければいけないと思うんですよ。

「どういうかたちであろうと必ずやる」に感じる鈍さ

山口 体操の内村航平さんの「お盆も正月もなくやってきた」「この舞台のためにアスリートは命をかけている」というような発言が注目されました。本当にそうだと思う。でも、国民の目線だと、「すごい覚悟。でも好きでやっていたんだよね」になる。「誰かにやらされてやっていたんですか」と。そこに尽きるんです。

 皆、それぞれが、自分が好きなこと、生きることを頑張っている。アスリートだけが特別じゃないんです。

有森 陸上女子1万メートル代表の新谷仁美さんが「アスリートとしては賛成だけど一国民としては反対という気持ち。命はオリンピックよりも大事なもの」と話していましたが、その葛藤はとてもまっとうで、痛いほど伝わってきました。

山口 ところが、オリンピック関係者は、そのことに少しセンサーが鈍い。これはIOCにも共通しています。森喜朗さんの「どういうかたちであろうと必ずやる」という言い方がまさにそれなんです。

◆ ◆ ◆

「東京五輪、国民は望むのか」と題した山口氏と有森氏の対談の全文は「文藝春秋」4月号と「文藝春秋digital」に掲載している。「無観客でも開催すべきか」や「森発言で明らかになった最大の問題点は何だったか」など、2人の女性メダリストが、封印されてきた問題点をタブーなく摘示している。

(広野 真嗣/文藝春秋 2021年4月号)

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