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自民党「大勝」の歪み さて今後をどのように展望する?

2012年12月17日の総選挙。
自民党が、大方の予測どおり、「大勝」しました。自公で300議席ですか。
これで、自民党憲法改正草案が承認された?
そんなわけがありません。
どの自民党候補も、憲法改正草案について、特に「国防軍」については黙りでしたから。
しかも尖閣に公務員を常駐させる?
このようなことを正面から声高に叫んでいた候補者って、いたのでしょうか。
もちろん、いやしません。
影に隠れるようにして、「公約隠し」をしていましたから。

それにしても、2005年の郵政選挙といい、2009年の民主党が大勝した選挙、そして、今回の選挙は、小選挙区制の特質をまざまざと見せつけました。
多くの死票を出す、小選挙区制度。政党に対する得票率とは大きく異なる結果を出すのが小選挙区制度です。
それだけではありません。小選挙区ということになると、1人しか当選しませんから、投票者の行動として、当選しそうな候補に流れます。
その結果、さらに比例区との得票率と乖離させることになります。
(本来、A党の候補者に投票したいのに、A党は当選しない、のでB党に投票。比例区ではA党に投票、というように。)
しかも、衆議院選挙の場合の比例区は、全国一区の参議院の比例区とは異なり、地方ブロックごとに細分化されているため、比例区でも死票が出やすくなっています。
そのため、参議院比例区の政党の議席占有率との乖離もさらに広がります。

さらに投票率です。今回は、70%を切るようで、前回選挙よりも低くなりました。
恐らく民主党に期待した層が、投票先なしということで棄権も増えたことでしょう。
政治不信という言われ方もしますが、小選挙区制の元では、支持する政策を持つ候補が当選しそうもなければ投票行動にも結びつかなくなるということの表れでもあります。

そのような小選挙区制度の特殊性もあり、今回の選挙は、政党が乱立し、そして、民主党が分裂して自滅した結果、自民党は相対的に浮上しました。

今回の選挙結果をみて(というよりは当初から言われていたことなのですが)、まずは小選挙区制度こそ廃止されなければならない、このような民意を正確に反映しない制度が許されようはずもありません
そして、このような民意自体を歪め(投票行動に影響を与えているということ)、民意を切り捨て(死票の増大)というやり方で、構造改革やら軍事大国化の途を推し進めることは、早晩、国民との間に大きな矛盾を生み出すことは必至です。

橋下氏率いる維新会が躍進できなかったことも当然といえば当然です。
準備期間がなかったというよりも橋下氏の薄っぺらな化けの皮がはがれただけといえば、それまでですが、それ以上に大きいのは、政策が構造改革を推し進める(橋本派)、王政復古的な軍国主義を推し進める(石原派)の政策は、2009年の選挙で自民党にノーを突きつけた有権者の求めるところではなく、自民党ノー、民主党ノー、だから維新というようにはなりえないのは当然の流れでした。
当初、維新の会の支持率が上がったのは、「何かしてくれるかもしれない。」という期待以上のものではなく、自民党以上の存在にはなり得なかったということです。
関西圏での支持がまだあるのは、地盤沈下した関西圏、特に大阪の地位を復活させることができるのではないかという期待があるからでしょう(その期待も裏切られるものですが。)。

民主党は、結局、小沢派との分裂により、もはや陣地を回復することができず、また維新の会のような「第三極」が登場し、さらには共産党が全選挙区(1区を除く)に候補を立てたこともあって自滅していきました。
北海道では、鈴木宗男氏率いる大地と民主党が「分裂」し、自民党(+公明党)が得をしたという構図がはっきりと出ました。
もともと、TPPと消費税に反対の大地、民主党の地元の議員は反対であるにも関わらず、党本部は全く逆の選択をした民主党ですから、いくら民主党候補者が「反対」などと言ってみたところで、どうにかなるものでもなく、「分裂」の結果、民主党王国と言われた北海道でも、民主党北海道は自滅しました。
民主党北海道こそ決断せよ!党本部に反旗を翻せ!」

このような歪められた民意によって自民党が大勝し、しかも、憲法改正草案をひた隠しにした選挙だったのですが、問題なのは、安倍自民党総裁が、軍国主義復活に意欲、満々だということです。
前回、安倍氏が首相の座についたときには、本来、復古的な軍国主義政策を実施したかったにも関わらず、小泉純一郎氏の跡を継ぐにあたっては、構造改革をさらに推し進めるという制約がありました。
さらには、小泉純一郎氏のときに靖国参拝で冷え込んだ日中関係の修復をすることが財界から求められていたこともあり、その結果、安倍氏にとっては思うように復古的な政策を推進することができなかったという過去があります。
安倍政権は、その後、支持率を落としてきたことから、復古的な政策へと転換し、さらに財界から見限られるという事態にもなり、政権継続が厳しくなりました。安倍氏に持病もあったというのも1つの原因かもしれませんが、政権が継続できなくなったのは、既に構造改革推進路線が国民から見放されていたからです。

しかし、今回、安倍氏は、自民党が安倍総裁の下で大勝したということで、自信に満ちあふれています。
経団連の米倉会長が、安倍氏に対し、消費税増税のことで「謝罪」したそうですが、安倍氏のことですから、それによって財界すらも、自分の復古的な軍国主義復活路線を批判できないだろうという自信を与えてしまいました
このような状況下で、尖閣に公務員常駐などということをしたら、当然、どのような結末になるのかは、分かり切っているにもかかわらず、軍事大国化の途を進めるにあたっての格好の口実を作り出していくことでしょう(安倍氏自身は口実とは思っていないでしょうが。)。
尖閣問題などは、国民の関心事ではありません。少なくとも、尖閣のために、軍事力を増強せよ、国防軍を創設せよ、などという国民は、一部のウヨク連中を除けば少数(ウヨク連中のプロパガンダに欺された層)です。

しかし、一旦、動き始めると、反対派の意見は、抹殺されていきます。
まさに公安警察が幅をきかせるようにです。
未だに思想取締に奔走するのか、公安警察
そして、それは、反対と言うこと自体が弾圧されていきます。最初は、公務員の君が代の強制として。
最高裁の懲戒処分に対する抑制的な判決など、全く気にもせずに推し進めていくことでしょう。
自民党憲法改正草案の恐ろしさ国歌、国旗への忠誠

さて、このような安倍自民党に、どのように歯止めを掛けるのか、今後の課題は大きいといえます。
公明党は抑止になりません。国防軍には反対しているようですが、公明党は支持母体である創価学会の意向すらも無視しているからです。
私たち一人一人が考え、そして、声を出していくこと、今後、ますます一層重要性を増したといえます。

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