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メーガン妃を嫌うイギリス人は多いけど、それでも見える変化の予兆 - 鈴木綾

From Wikimedia Commons

ネットフリックスが普及して、普通のテレビを見なくなる人が増える中で、かつての日本の紅白歌合戦みたいに、イギリス人が一斉に同じ番組を見ることはなかなかない。でも先週は違っていた。3月8日の月曜日夜9時、ネットテレビがパンクするほどの人がヘンリー王子とメーガン・マークル妃(サセックス公爵と公爵夫人)の独占インタビューを見た。イギリス人の5分の1が観たらしい

日本でも報道されているからみなさまはご存知かと思うが、メーガン妃はオプラ・ウィンフリーのインタビューに応じて自分が自殺を考えたこと、子供の肌の色を巡って王室内から人種差別発言があったこと、王室に入って苦しんだことを赤裸々に明かした。

インタビューの後、イギリス人と他の国籍の人にこのインタビューについて意見を聞いてみた。そして驚いた。イギリス人でメーガン妃を支持していない人が意外と多かったのだ。

自分の周りの人だけかと思ったら、数字は嘘をつかなかった。イギリスの大手調査会社がインタビュー直後に行ったアンケートによると36%の人はメーガン妃とヘンリー王子より、女王と王室を支持すると答えたのに対し、メーガン妃(サセックス公爵夫人)の支持率は22%。あんなにハッピーにロイヤルウエディングを祝った国民なのに、なんでメーガン妃がこんなに嫌いなんだろう。

一つの理由は、半分黒人でアメリカ国籍を持っているメーガン妃に対する人種差別と国籍差別。ジャメリアという有名な黒人歌手はインタビューの翌日にテレビで「ほとんど全ての黒人女性はメーガン妃の経験がよくわかる」と主張したけど、本当にそうだと思う。アメリカや他のヨーロッパの国と同じように、イギリスも白人至上主義がまだ根強い。国籍差別だって変。だって昔の王室の人たちは頻繁に他国の貴族と結婚していたから、王室の人たちはいろんな血が混ざっている。そもそも今のイギリス王室(ウィンザー朝)は100年前にドイツからきた人たちだし、最初の頃はドイツから妃を迎えていた。ドイツはよくてアメリカはダメなの?

結婚してからの実際の報道を見ると、メーガン妃は明らかにイギリスのマスコミ、特にタブロイド誌にすごくハラスメントされていた。バズフィードがすごくいい分析をしているけど、ケイト妃(ヘンリー王子の兄ウィリアム王子の夫人)とメーガン妃に関する週刊誌の報道を比較すると扱いが全然違う。例えば、妊娠中のケイト妃がお腹に手を当てた時にマスコミは「ケイト妃はお腹に手を当てて母性本能を見せている」と報道した一方、メーガン妃がお腹に手を当てた時に「彼女はなんでそんなにお腹触っているんだ」という扱いになった。

メーガン妃が嫌われる理由を少し分析してみた。

イギリスは日本と同じように、目立つ人が嫌われがちだ。だから差別的な意見を持っていない人でも「脚光を浴びたがっている(そう見える)」メーガン妃に対して印象がよくない。こういう風に考えている人にとって、彼女がプライバシーを求める一方、同時にネットフリックスと契約をしてお金儲けをしようとしているのは矛盾していると感じる。お金持ちで美人、ただでさえ目立つ彼女にはプライバシー被害を受けたと言う権利なんてないはず、と考える。

もう一つ、メーガン妃が嫌われているとても単純な理由。単に彼女が騒ぎすぎている、ということ。黒人の間でも「メーガン妃を支持しているけど、彼女はなんで延々と王室と戦いたがるんだろう」という人がいる。

それでも、今回のインタビューを機にイギリスの世論が少しずつ変わっていることがわかった。まず、世代別で見ると、若者ほどメーガン妃を支持する率が高くて、上の世代は王室の支持者が大半。インタビュー後、イギリスのマスコミでは「王室の改革が必要だ」と主張するコラムが明らかに増えているし、イギリスのタブロイド紙の報道姿勢を「人種差別的ではない」と擁護したイギリス報道機関の業界団体「英編集者協会」の会長が、身内の報道関係者から厳しく批判され、辞任した。

「イギリス社会が変わったな」と私が一番思ったのは、メーガン妃の発言を「信用できない、自分は一言たりとも信じない」と番組の中で批判した有名な男性アナウンサーが番組を降板したことだ。彼の発言に対して4万1000件を超える市民からの苦情が殺到した。

EU離脱後に自分の居場所を探しているイギリスは、経済的かつ観光的な大きな財産である王室を廃止することはないだろう。でも若い世代の意見が変わると共に、王室に求められる役割もきっと変わると思う。これから求められるのは、ダイバシティの積極的な受け入れ、寛容さ、そして率直さ。それはメーガン妃が疑いなく提唱している価値観だ。

だからメーガン妃が王室を離れることになったとしても、本件は彼女の勝ちってことだ。

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