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【小さな政府から大きな政府へのパラダイム転換か】

日本円で200兆円余りの追加経済対策を盛り込んだ法律が12日に連邦議会で成立したアメリカ。これを含めてコロナ対策は計5兆8000億ドル(約640兆円)!

今回の追加対策が「大きな政府」への転換になるのではないかという報道が相次いでいます。

1980年代のレーガン共和党大統領の登場で、規制緩和や減税、公共投資の減少など「小さな政府」に舵を切ったアメリカですが、コロナ禍により共和党支持者も生活が困窮しバイデン民主党大統領の支援に賛同しているということです。

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FTは12日、The BIg Readという特集でJoe Biden and the new ear of big government(バイデンと大きな政府の新たな時代)と題して、先週、共和党の支持なしで成立した1兆9000億ドルの巨額の追加経済対策について、「コロナ禍をきっかけにしてアメリカ政治と経済の左傾化を定着させる」と表現し、1980年代以来の高い経済成長率に弾みをつけるだろうとしています。

1986年8月に当時のレーガン大統領は「最も恐ろしい9つの英単語は『私は政府の者です。支援のためにやってきました(I’m from the government and I’m here to help)』だ」と述べましたが、今の民主党支持者はこれに対抗したいとのことです。

バイデン大統領の元で、年収7万5000ドル(約817万円)の世帯に1400ドル(約15万円)を提供するほか、連邦政府が週300ドルを上乗せしている失業給付の特例加算を9月まで延長し、子育て世帯に対する税優遇も実施し、ワクチン接種に必要な予算を州政府などに配分することにしています。

今月、Pew Research Centerが行った世論調査で70%が家計支援を盛り込んだ法案を支持し、28%が支持しないと回答し、共和党支持者の41%も支持すると答えたことを踏まえて、緊急時にアメリカ国民が政府支援を求めていることを特筆するべきだといいます。

伝統的に共和党を支持する“赤い州”でも追加財政出動は命綱になっているそうです。

大統領選挙戦でバイデン氏は公共事業や気候変動対策、子育て支援、医療保険、教育などに3兆ドル(約330兆円)にのぼる計画を打ち出しましたが、アメリカ国民がここまで受け入れるかは別で、今後、試されると指摘。

さらに、これまでのところ財政赤字はあまり問題視されていませんが、仮に物価が上がってインフレになったり、長期金利が上昇したりすれば、バイデン大統領もそう簡単にこれ以上に財政出動ができなくなるともいいます。

New York TimesはJoe Biden Is a Transformational President(バイデン は転換をもたらす大統領)というDavid Brooksの寄稿文を12日に掲載。

出だしは「この数週間はアメリカ政治にとって静かながらも最も重要な時期になったかもしれない」で、新型コロナウイルスに対応するための1兆9000億ドルの追加財政出動がここ数十年で最も重要な法案になったと表現しています。

所得が下位20%の国民は所得が20%増え、1人が就業しもう1人が失業している4人家族は1万2460ドル(約135万円)を受け取ることになるそうです。

法案には黒人の農業従事者に計40億ドル、医療保険制度に対する補助金などコロナと無関係の財政出動も多く含まれ、子育て世帯の税優遇など恒久化されるものも多いだろうといいます。

しかも、政治的な対立が深刻なアメリカでこの財政出動は人気が高く、Morning Consultの調査によると、アメリカ国民の4分の3が支持し、共和党支持者も60%が支持していて、法案に誰ひとり賛成しなかった共和党議員もこの財政出動を政争に使わない姿勢です。

今の雰囲気は政府の役割を新しい方向に向けたレーガン革命が起きる直前の1981年のようだが、当時と違い、バイデン大統領が動きを主導しているわけではなく、あくまでも波に乗っているに過ぎないといいます。

「政府の役割が再定義されつつある(The role of government is being redefined)」として、経済的な痛みや不平等を是正するために政府が力を入れるべきだという暗黙の了解ができたと指摘。

とは言え「社会主義ではない。連邦政府が経済を管理しようとしているわけではない」ともいいます。

David Brooksは財政赤字の膨張に対する懸念を示しつつも、「所得格差、こどもの貧困の拡大、雇用不安は現代の問題だ。これらを解決するためにリスクをとる価値はある。当初、バイデンはクリントン/オバマのセンターレフトの第3章にも見えた。しかし、これはまるっきり新しいものだ(income inequality, widespread child poverty and economic precarity are the problems of our time. It’s worth taking risk to tackle all this.  At first Biden seemed like the third chapter fo the Clinton/Obama center-left ear.  But this is something new)」と締め括っています。

The Economistの今週号の表紙はBiden’s big gamble(バイデンの大きな賭け)で、ブタの貯金箱にバイデン大統領のトレードマークのサングラスをかけ、5人を小さく配置して貯金箱の大きさを強調!

この中で、1兆9000億ドルの追加経済対策について、多くのアメリカ人が追加で1400ドル(約15万円)を受け取ることになり、アメリカ経済の成長につながるとしつつ、「今の政策立案者はヒーローになるとは限らない」と報じています。

▼歴史上かつてない規模の財政出動、▼物価上昇をより受け入れる国民の姿勢、▼抑えこまれた消費が貯蓄にまわるのか実際に消費にまわるのかわからないことを挙げ、「アメリカと世界にとっての危険はアメリカ経済が過熱することだ(The danger for America and the world Is that the economy overheats)」と指摘。

実際、アメリカの長期金利は去年の夏以降、約1%上がったといいます。

「バイデン大統領の景気刺激は大きな賭けだ。うまくいけば、アメリカは日本やヨーロッパのような惨めな低物価、低金利の罠を回避できる」としつつ「リスクはアメリカの財政赤字が膨らみ、物価が上昇し、中央銀行の信頼性が問われることだ」とのことです。

そして、The Economistとしてはより小規模な財政出動が望ましかったものの、今の民主・共和の深刻な政治対立のもとではファインチューニングは無理だっただろうと認めた上で、「バイデン大統領の賭けは行動しないよりはましだ。ただし、その規模は疑いようがない」と締め括っています。

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