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「日本はコロナ対策で周回遅れの国になった」英国在住作家が嘆く理由

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日本のコロナワクチン接種率は世界最低レベルだ。これに対し、英国は毎日30~40万人という急速なペースで接種が進んでいる。自身もワクチン接種を済ませたという在英作家の黒木亮氏は「日本は政治家が人気取りのパフォーマンスなどにうつつを抜かしている間に、周回遅れになった」と指摘する――。

英中部シェフィールドで新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける男性(左)英中部シェフィールドで新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける男性(左)=2021年02月20日、イギリス・シェフィールド - 写真=AFP/時事通信フォト

感染者数は10分の1まで激減

日本では、担当の河野大臣まで巻き込んで、コロナワクチン一瓶あたりの接種回数に一喜一憂しているが、先進国で今頃こんな議論をしているのは日本だけである。また1回目のワクチン接種者数も、日本は人口の0.2%にすぎず、英国(37.2%)、米国(31.6%)、EU(11.0%)、カナダ(7.8%)などと比べても、ダントツの「周回遅れ」になっている。いったいなぜこのようなことになってしまったのか? 筆者が住む英国と比較して、その原因を考えてみたい。

英国は今、毎日30~40万人という怒涛の勢いでコロナワクチンの接種を推し進めている。その効果により、1月には日々の感染者数が5~6万人、死者数が1500人程度いたのが、感染者数は10分の1、死者数は7~10分の1にまで激減した。ボリス・ジョンソン首相は6月21日にほとんどの制限を解除するとぶち上げている。

英国の接種プログラムの開始は、昨年12月2日にファイザーのワクチンを世界で初めて承認し、その6日後に90歳の女性に最初の接種を行ったときにさかのぼる。今年1月9日には94歳のエリザベス女王と99歳のフィリップ殿下も1回目の接種を受け、国民に安全性をアピールした。

接種は、医療・介護従事者、80歳以上、介護施設入居者、基礎疾患のある人などから始まり、その後、5歳刻みで対象年齢が下げられ、今は55歳まで下がった。

外国人の筆者にも案内状が

63歳の筆者にも3月4日にNHS(国営医療サービス)から接種の案内状が届いた。

NHS(国営医療サービス)から届いた接種の案内状
NHS(国営医療サービス)から届いた接種の案内状 - 筆者撮影

予約のためにNHSのウェブサイトを開き、NHS登録番号、生年月日、郵便番号などを入れると、トイレの有無、点字による表示の有無、車いすの有無など、自分が必要とする設備について選ぶことができる。続いて、自宅から半径5マイル(約8キロメートル)以内にある接種センターが10カ所ほど表示された。

筆者は、その中で一番近い薬局を3月8日の午前10時5分に予約した。サイトには「必ず2回目の接種も予約してください」と書いてあったので、2回目は一番早い5月下旬の日にした。ちなみに英国全土に3100カ所以上(イングランドで約1500カ所)の接種場所が設けられている。

場所は近所の薬局、スタッフはボランティア

NHSからの案内状には「高齢者のためのコロナワクチン接種ガイド」という12ページの冊子も同封されていた。書いてあるのはごく基本的なことで、接種をすると、腕の痛み、倦怠感、頭痛、インフルエンザ類似の症状といった副反応が起きる人もいるという。飲酒に関する制限はないが、副反応が出たとき、酒で身体が弱っていたりするとまずいので、筆者は2日前から禁酒した。

当日、家から歩いて7分くらいの薬局に出向いた。普段何気なく通り過ぎている小さな薬局で、こんなところも接種場所になっているのかと驚いた。3、4人が並んでいて、ボランティアと思しい中年女性が名前や生年月日を確かめていた。数分で店内に入ることができ、入り口のそばの受付デスクで、やはりボランティアと思しい高齢の婦人に名前などを確認され、その後、別の高齢の婦人に「ここで待って、次の人が出てきたら、2つある部屋の一つに入ってください」と言われる。

貴重なワクチンを余さず使うスピード感

感心するのは、数多くのボランティアが接種会場で働いていることだ。イングランドでは、総勢約10万人のボランティアが動員されており、日本人も少なからずいる。受付、会場整理、データ入力、医師や看護師のサポートだけでなく、注射打ちのボランティアもいる。

英国では法律を改正し、素人でもワクチン注射が打てるようにした。ワクチンの取り扱い方法や応急措置などに関して10時間のオンライン学習、丸一日の実技研修、試験を経て、実際の接種に当たらせている。イングランドでは注射のボランティアだけで3万人超の応募があったという。英国は専門資格にこだわらず、「素人でもやれることなら、やらせたらいいじゃない」という融通無碍な文化があり、筆者も以前、2~3カ月間、人に注射を打ったことがある。

英国のワクチン接種ガイド
英国のワクチン接種ガイド - 筆者撮影

もう一つ感心するのは、薬を無駄にしないようにしていることだ。例えばファイザーのワクチンは、マイナス75度程度の超低温から通常冷蔵(2~8度)にした場合は、5日以内に使いきらないといけない。英国では、予約に来なかった人が出ると、すぐに別の人に連絡し、接種を勧めている。筆者の日本人の友人も、携帯にいきなりテキストメッセージが送られてきて「今日の夕方か、明日の午前中、接種に来られないか?」と聞かれたので、面食らったという。

また、政府がワクチンを前倒しで病院や接種場所に送りつけ、担当者が必死でそれを消化するという状況もあるようで、接種プロジェクトを一日も早く進めようという政府の執念が垣間見える。

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