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ブログは発進力の弱いメディア~ペニオク事件に見るブログの可能性と限界

ほしのあきの偽ペニーオークション落札についてのブログ掲載事件が物議を醸している。

ペニオク自体は、コンプガチャと同様、きわめて犯罪性発生率の高い、ネット社会の不整備を突いたマネタイズ方法だ。入札のたびに手数料がかかるのだから、サクラをいれてオークションすればボロ儲けになるのは、ちょっと考えればわかること。でも、近いうちに法律が整備されだろうし、これについてはすでにあちこちで議論されているので、僕はこちらの方はあまり気にかけていない。

むしろ、問題はこれがブログというメディア上での事件だったことだ。実は、こちらの方が問題としては根が深いと考えている。というのも、ここにはブログというメディアが備える「可能性」と「現実」の違いが垣間見えるからだ。そこで、今回はこの事件の原因を考えながらブログの機能について考えてみたい。

ブログに発進力はない!

一般的にブログは「世界中に個人の情報を発信可能」「個人が新聞やテレビなどのメディアと同じ発進力を手に入れることができる」と考えられているが、これは幻想だ。このことは、実際にブログを始めてみればすぐにわかる。

ブログ記事を作成してアップする。これで世界への発信は完了。ところが、これはあくまで「可能性」の域を出ていない。現実的にはどうなるかというと……誰も見ないのだ。アクセス・カウンターをつけておけば、その悲惨な状況はハッキリと解る。一日の間にアクセス数1なんて事態が起こるのだ(ちなみにこの「1」は自分がアクセスしたからで、ということは実際には0)。まあ、がんばってやっていれば閲覧者はだんだんと増えるが、三桁に達するのは結構難しい。二桁程度だと、これを閲覧している人間はほとんどが身内や知り合い、ようするに身内間の通信欄みたいなものということになる。一般的な使用方法ではブログには公的レベルでの発進力はほとんどないといっていい。

ブログが発進力を持つためには

ブログが発進力を持つためにはいくつかの条件がある。ブログのコンテンツにテーマ性があること、またコンテンツに魅力があることがそれにあたる。僕はブログを書き始めて7年目だが、テーマをメディアに絞って展開したにもかかわらず、当初は悲惨なアクセス数だった(まあ、コンテンツに魅力がないということもあるのだろうが)。それでも「継続は力なり」で、その後アクセス数は300程度にまでなったけれど。しかし、実際のところブログを開設する一般人のアクセス数のほとんどは、こういった工夫をしたところで、せいぜいこの程度なのではなかろうか。

ブログのアクセス数が飛躍的に増えるためには外部要因が必要

もちろん、中には多くの閲覧者を獲得しているブログもある。ただし、これ、実はブログそれ自体の魅力とは異なる外部的要因によるものと考えた方がいい。たとえば僕の例。9月の終わり頃からブログがBLOGOSに編集部からの依頼を受け転載(BLOGSの記事は「Yahoo!ブログ」にアップしたもの)されるようになった途端、カウンターの数は時に1000を超えるという事態が発生した。BLOGOSというメジャーで多くの閲覧者が存在するブログまとめサイトに掲載されたから目につくようになり、こういうことが起こったわけで、当然、アクセス数の増加は僕のコンテンツそれ自体の魅力というわけではない。

そして、アクセス数を増やす外部要因の最たるものが、本人の属性だ(ちなみに、これは僕には関係がない)。つまり、セレブであれば何もしなくてもアクセス数は膨大なものになる。言い換えれば、ブログはこういった人たちの営業用の道具として有効的に機能するメディアなのだ。繰り返すが、一般人がブログで強力な発進力を持つことが可能といったような幻想は抱かない方がいい。

セレブにとってブログはプライベートに見せかけた宣伝用のメディア

無名の個人がブログを活用した場合、前述したように結果としてその情報はごくわずかの身内や仲間にしか届かないので、ある程度プライバシーに関わるような内容をアップしてもさして問題にならない。いいかえれば、多少、公共に晒されたらまずいようなことを書き込んだとしても、ほぼスルーされてしまう。

ところがセレブの場合はそうはならない。セレブは名前、姿、行動を逐次大衆にチェックされている公共的存在だ。それゆえブログ閲覧者数は膨大になる。そして前述したように、この数はコンテンツそれ自体によるのではなく、こういったセレブであるという外部的要因=知名度=公共性がなせる業。ということは、ブログにおいてもセレブは私的存在であることを許容されない。いいかえれば、それは不用意にプライバシーを開示してはならないということになる。

ただし、セレブゆえにブログは膨大な数の閲覧者に向かって直接話しかけるメディアでもある。だから、さながらセレブから大衆に向かってのプライベートな発言のようにコンテンツを作成するという「偽装=営業」もノルマとなる。必然的にセレブたちは閲覧者に対してブログというメディアを用いることで自らを「近い存在」と思わせ、親密性を抱かせるように働きかけるが、その一方で「遠い存在」であることを踏まえていなければならない。ちなみに、セレブたちはこういった公共的存在としての振る舞いについて、普段の活動では概ね熟知しているし、取り巻きが公私を分けるよう脇を固めている。

公共的存在のセキュリティーホールとしてのブログ

ところが、ネット上に存在するブログはこういった公共的存在のセキュリティーホールになってしまっている。なぜか?要するにセレブがブログの「遠くて近い」「近くて遠い」メディア性に気づいていない、言い換えればブログというメディアの特性を理解していないからだ。それが結果として今回のペニオク事件を発生させた。ほしのあきたちたちは仲間から商品を宣伝するように頼まれて、それが虚偽であるにもかかわらず安請け合いしてしまった。軽率と言えば軽率だが、これは彼/彼女たちがブログを「私的なもの」と錯覚していたからだ。彼/彼女たちの多くがペニオクで落としたという虚偽の報告をすることである程度の報酬を得ていたが、数万~数十万円程度のもので、実は彼/彼女たちにとっては「はした金」。むしろ仲間たちの依頼にちょっと気を利かせたというのがホンネなのではなかろうか。

しかし、結局のところ彼/彼女たちのブログの人気はブログのコンテンツではなく外部的要因、つまりセレブであることに依存している。だからあくまで公共的存在として振る舞わなければならないのだが、彼/彼女たちは個人的=私的な都合を公共の場で展開してしまった。つまり、ここで彼/彼女たちがやったことは「公私混同」というきわめて単純な混乱にたどり着く。

おそらく、今回の一件で、セレブたちもブログのメディア性に気づかされることになるだろう。そして、これ以降、こういった虚偽の情報をおいそれとは発信しないようになるに違いない(というか、事務所が止めるだろう)。

ブログ、実は限りなく発進力が限定されたメディアなのだ。

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