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尖閣の領空侵犯に対する対

中国機が尖閣周辺空域を領空侵犯しました。
この事件に対するアプローチには、何をすべきかという話と、何ができるのか(できないのか)という話があると思います。

(自制の効いた)何をすべきなのかという話を書ける人はいくらでもいるので、私は(自制などせず)何ができるのかについて書いてみます。
久々のロング記事です。分割掲載も考えましたが、本日の選挙に間に合わせたかったので、一挙掲載します。
おつきあい下さい。

まず最初に、一部で問題視されている航空自衛隊が領空侵犯に気が付かなかった事について、触れておきましょう。
自衛隊、中国領空侵犯探知なぜできぬ 「レーダー死角」解消策は2年前から「検討」」(JCASTニュース12年12月14日)

   政府の発表によると、海上保安庁の巡視船が2012年12月13日11時6分頃、中国のプロペラ機1機の領空侵犯を確認し、無線で領空外に出るように求めた。4分後の11時10分頃、領空外に飛び去ったという。航空自衛隊では海保からの連絡を受けてF15戦闘機8機とE2C早期警戒機1機を現場に向かわせたが、現場に着いた時には、すでに飛び去っていた。




この尖閣上空の監視に問題があることは、以前の記事「与那国島上空のADIZ再設定は大したニュースじゃない」(10年5月31日)でも簡単に触れました。

それよりも更に問題なのは、与那国だけでなく、尖閣上空なども含めて「見えないし、間に合わない」と言う事です。
言うまでもなく、これは与那国に一番近いレーダーサイトが宮古島であり、スクランブル発進する飛行場が那覇だということです。
レーダーサイトが遠すぎるため、高高度でも近くに来てからでなければ見えないし、低高度であれば全く見えません。




そして、同年10月には防衛省も重い腰を上げ始めます。
那覇へE-2Cローテーション配備 尖閣周辺防空網の欠陥を改善」(10年10月7日)
この時には、尖閣上空では、2000m以下が宮古のレーダーで監視が不可能であることが明らかにされています。

が、実際に措置が講じられ始めたのは、やっと今年になってからです。

那覇基地における早期警戒機(E-2C)の整備基盤を整備(空自)(2億円)
・南西地域において早期警戒機(E-2C)を常続的に運用し得る態勢を確保するため、整備器材等を取得



24年度の予算の概要」から

この措置は、25年度も継続される予定で、概算要求には同じ内容で少額(7千万円)が計上されています。

なお、23年度にも移警隊展開関連の予算が投入されてますが、石垣島への展開なので、平時の尖閣上空の監視強化にはあまり有意な変化がない施策でした。

この措置によるE-2Cの配備で、今回の領空侵犯事案でもE-2Cが飛行したようですが、以前の記事で指摘した通り、常時監視には程遠い状態で、監視の間隙を突いて領空侵犯されています。

今回の事案を受け、岩崎統合幕僚長は、「できるだけAWCAS(早期警戒管制機)、E2C等を使った補完をしていかなければならない」と述べたそうですが、”できるだけ”と逃げの言葉が挟まれているとおり、空自の全AWACS、E-2Cを投入しても、尖閣上空に常続的監視網をしくのは、まず無理です。(器材的にも、要員的にも、とてもローテーションが回りません)

物理的に、安定的な常続監視網を敷くためには、魚釣島にレーダーサイトを設置するか、海保あるいは海自艦を尖閣周辺に常に遊弋させ、いわゆるレーダーピケット艦として活用しないと不可能です。
しかし、政治的に問題もある海自艦艇の投入ができればいいですが、海保の場合は次の2点が大きな問題として残ります。
①識別:海保は自衛隊、米軍が使うIFF(モード4)による識別ができない。
②連接:データリンクできない。

という訳で、海自の人には「また仕事を増やすつもりなのか!」と怒られそうですが、海自艦艇を尖閣周辺に貼り付けるべきだと思います。

続いて、監視ができたとしても、対処の問題が残る事について書きます。
前掲の過去記事でも、尖閣上空の対領侵には、那覇からでは間に合わないと書きました。
これについては、下地島の必要性を書いた次の記事で詳述しています。
下地島空港を自衛隊が使用する効果

興味のある方は、この記事を読んで頂きたいところですが、この時に作成した次の地図を見れば、大体事足ります。
リンク先を見る
那覇-尖閣間の距離は、中国大陸-尖閣間の距離とほぼ同じです。
つまり、例え尖閣周辺に海自艦をピケット艦として配置しても、那覇から対領侵機が上がったのでは、まず間に合わないのです。

これに対し、もし現状の体制で対処するなら、尖閣までとは言わずとも、那覇と尖閣の中間地点あたりで、常にCAP(戦闘空中哨戒)を行なわなければなりません。
しかし、普通に地上待機を行なうのでさえ、現在の83航空隊の勢力では困難で、そのために2個飛行隊化して航空団に格上げしようとしているのですから、常時CAPなど、2個飛行隊化したところで不可能なことは分かって頂けるでしょう。
ちなみに2個飛行隊化に向けては、25年度の概算要求でも「那覇基地における戦闘機部隊の2個飛行隊化に向けた所要の施設整備を実施(34億円)」となっており、施設整備さえこれから行なう状態ですから、如何に道のりが遠いか分かると思います。

政治を無視して書けば、前掲の地図を見て分かるとおり、対領侵機は、下地島を利用して前進待機させなければなりません。
沖縄(特に先島)の方は、尖閣の実効支配が危うくなり、いずれは自分達が脅威にさらされる事を良しとするか、屋良覚書を破棄するか選択することが必要です。

ですが、最初に政治を無視して書くと言ったのですから、他にも策があることを書いておかなければなりません。

それは、前述のレーダーピケット艦とすると書いた海自艦艇に対領空侵犯措置まで行なわせてしまう事です。
現在、海上自衛隊は対領空侵犯措置を行なっていません。ですが、空自に対領空侵犯措置を行なわせている根拠である自衛隊法84条には”自衛隊の部隊”と書かれているだけで、海自がダメとは書いていません。

(領空侵犯に対する措置)
第八十四条  防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法 (昭和二十七年法律第二百三十一号)その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる。




正確には、対領空侵犯措置ではありませんが、空自のパトリオット部隊も、いざという時に備えて地上待機を行なっていますし、過去には陸自のホーク部隊さえ地上待機を行なっていました。

防衛大臣が、海自部隊にも対領空侵犯措置の任務付与をしてしまえば、海自艦艇でも対領空侵犯措置が可能なのです。

法律の問題に触れたので、法的に物理的な対処が可能なのかも書いておきましょう。
まず、国際法的には、大韓航空機撃墜事件への反省から、民間機についてはハイジャックされたのでも無い限り、撃墜する訳にはいきません。
ですが、今回のように中国政府が運用する機体は、国際法的には撃墜することさえOKです。この点は、公船に対して、一切手出しできない船とは全く状況が異なります。

一方、国内方的には、現状の自衛隊法84条に関する政府見解では、今回のように領空を侵犯しただけでは撃墜することは不可能です。
ですが、射撃を含む警告を行なうことは可能です。
撃墜もできるよう、自衛隊法の改正も必要でしょう。

次に、海自艦艇が物理的に対領侵を行ないうるのかについて考えてみます。
イージス艦はこんごう型、あたご型6隻しかなく、先日の北朝鮮のロケット騒ぎにも駆り出される中、それこそローテーションが無理じゃないかと思う方もいるかもしれませんが、対領侵を行なうだけなら、イージスなどのミサイル護衛艦(DDG)だけではなく、汎用護衛艦(DD)でも十分です。

DDの中でも艦齢の古いはつゆき型でも、射程26kmのシースパローを備えており、12マイル(21.6km)の領空を守るには十分です。

それに、対領空侵犯措置は、警告射撃を行なう必要からも、ミサイルよりも艦載砲の砲が便利です。
はつゆき型などは、76ミリ砲しか備えていないため、射程が少々苦しいですが、撃墜するよりも警告として使うケースの方が遙かに多いことを考えれば、76ミリ砲でも事足ります。
それこそ、発煙弾をばらまいてやれば、肝を冷やすでしょう。
たかなみ型以降は127ミリ砲を搭載していますから、尚良しです。

最初に断った通り、今回の記事は政治を無視して書いています。
ですが、逆に言えば、政治決断さえできれば、今回の事件を受けて一部報道が示したような、領空侵犯されながら、何もできないことで実行支配が危うくなる事態は回避できます。

それを政府が行えるようになるか否かは、本日の衆院選挙で決まります。
投票に行きましょう。
でも、くれぐれも日本の防衛をズタズタにした某党に投票しちゃダメですよ。

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