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新司法試験(2・完)

さて前回「表面的な数字」と書いたのにも多少背景があって、まあ以前にも合格者数ランキングを各社が報道しては「学年定員がぜんぜん違うじゃん」とツッコまれていたりしたわけですが、合格率にも実は結構お化粧があるのよねというお話。

数年前に新司法試験の結果分析をやっていて気付いたことなんだけど、(1)学年定員・(2)志願者数(受験しますよ、という届を出した人数)・(3)(実際の)受験者数に大きな違いのあるLSというのがところどころ見受けられたのですね。基本的にこれは(1)=(2)=(3)になるのが正しい数字で、もちろん前年度以前の不合格者が再受験するから(1)<(2)になるのですが、しかし(2)と(3)に大きな乖離があるのはおかしい。ところが一部LSでは、(3)が(2)の60%にまで減少している。これは何か、というのが問題だったわけです。

端的に言うとこれは直前での「受験回避」がメインであろうと。新司法試験の受験資格が修了後5年間に3回と限られていることを考えれば実力不足の受験生にとっては合理的な行動ですが、しかしそのような受験生が大量にいれば報道の基礎となった合格率(合格者/受験者)の信頼性は大きく低下する。一般的に受験回避した受験者の実力は合格できない水準であることが多いでしょうから、十分な実力のある修了生をどれだけ出せたかを考えるためには実質合格率(合格者/志願者)ないし累積合格率(特定学年から5年目までに合格したものの数/その学年の修了者数)の方が適切だと考えられます。

でまあ、後者はまだその時点では(結果の確定している学年がなくて)計算できない数字だったし、ヨソの結果が入手できないので、とりあえず前者を全LSについて計算してみたわけです。

そうしたところ、実はその年は本学の合格率が大きく下がったと報道されて新聞が法科大学院長のコメント取りにきたりしたのですが、実質合格率で見るとぜんぜん下がっていませんでしたというのがわかって一安心というのが一つ目の話。もう一つはこの受験回避の割合にLSによって非常に大きな差があり、つまり合格可能性の低い受験生に対する指導が行なわれた可能性があるなという話になった。まあ、医師国家試験と同じような話ですな。

しかし問題は、第一に回避した修了者は要するに実力不足である可能性が高く、その後画期的な改善がない限り(そしてその可能性は結構低いのですが)最終的には「不合格者」に計上される可能性が高いだろうということ。もちろん受験を断念して別の職業キャリアに転換すれば話は別ですが、正直いまのところそのルートは狭い。そして第二に、受験回数・年数制限がある以上いつまでも回避していることはできないので、最終的には受験→不合格として表に出さざるを得ないだろうということ。

つまり「隠れ負債」である、という露骨な表現を私は使ってしまったのですが、それの多いLSと少ないLSのあいだには表面的な「合格率」には現れない実力格差がある、というのがポイントだったわけです。「遅くとも5年後には表面化するから、それまで健全経営で頑張りましょう」とまあ、そういう話。そういえば当時、東海地区で本学を上回る合格率を記録したということで話題になったLSがあって、しかしたとえば今年などはランキングに見当たらないような気がするのですがどうしてでしょうね(棒読み)。

ちなみに本学の場合この受験回避率が全国で2番目の低さでしてこれはこれで困ったというか、「無謀受験はやめましょう」とかポスターを貼りに行こうかと思ったよな。しかしまあ現状を見ると、やはり健全経営に基軸を置いた甲斐もあったということでしょうか。数字を操作できるほど学生に対する影響力がないとも言うな。orz

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