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政治に絶望してても投票には行こう

今日は選挙だ。僕はもう期日前投票してしまったんで関係ない。期日前投票って敷居が高いが実は投票券を持たず手ぶらでいっても投票できる。意外と簡単だから一度やってみるといい。手のあいた時に手軽に期日前投票できるのは本当にお手軽だ。閑話休題。

今回の選挙では「誰にも投票する気になれないんだけど、選挙に行くべきか」って相談を受ける。もっともな悩みである。興味のないひとは投票権なんか行使せず、定見を持ってる人だけが投票した方が真っ当な結果が出るのか?否、みんなが投票しないほど組織票で結果が出てしまって時代の空気を反映しない。だから投票には行った方がいい。

政治に絶望してても、誰もよく知らないし信じられなくても、最もマシにみえるひとに投票することこそ、政治が惰性と組織票を支える利益構造に牛耳られないために個々人ができることだ。けれども普通は政治家なんか普段は接する機会がないし、いったい何を信じて投票すればいいんだろう。

公約って言葉が昔からあるが手垢がついてすっかり軽くなってしまった。そこでマニフェストって新語が出てきたが、政権交代後に思うように実現できず、同じように軽くなってしまった。最近はアジェンダって言葉もあるが、どう違うのかよく分からない。野党は何をどう、どこまで実現できるか分からないまま理想の明るい未来を訴求する。それは仕方のないことである。

実際に何をやるかは政権の舵取りを始めてから状況に応じて臨機応変に動く。その政治を委ねる相手を決めるのが選挙だからである。単独過半数を取れなければ連立のために政権協議をしなければならない。与党になってからも、官僚組織を動かして政策として詰めなくてはならない。内閣法制局と法律を詰めて閣議決定を通しても、国会を通すには野党とも相談する。そういうプロセスの中で、様々な利害関係者との調整を織り込んでいくのである。

公約が信用できないんであれば何を基準に投票すべきだろうか?僕は結局のところ個々の候補者の人となりであり価値観だと思う。実際の政策なんて周辺状況やら政権の枠組み次第で変わってしまうものだし、その政策に納得して党に属してる人々ばかりでもない。政策レベルの主張は移ろいやすく、またガラガラポンが起きたら党を移って別の主張をしているかも知れないけれども、ひとりの人間としての価値観や政治手腕は徐々にしか変わらない。党の公約だけでなく、個々の候補者の資質を見極めることが大切だ。

なかなか政治家と直に会うことは難しいが、著書には所属政党の公約とは別の信念が書かれている場合が多いし、ブログやTwitterをやっていればもっと身近にタイムリーな考えや受け答えのセンスを観察できる。それとお勧めなのは動画サイトで過去の講演や演説、国会質疑をみることだ。

最近の演説に先見の明があるかは後にならないと分からないが、古い演説を聴くと後の経緯と照らし合わせて論法や事実認識のおかしさが浮き彫りになりやすい。膨大な文字を読むのが苦でなければ国会図書館のサイトで検索できる議事録もなかなか面白い。放映される予算委員会ではテレビカメラを意識し過ぎて下らないスキャンダル追求や自己アピール、みっともない野次が飛んで立法府の品位を落としているが、他の委員会では地味に真面目な議論もしている。

国会会議録検索システム

世の中は日々動くし、前提が変われば政策の優先順位や実現性は変わってくる。選挙のための公約よりもずっと、これから起こることに対して臨機応変に判断できるか、自分の属する社会の政治を預けられるかって視点で政治家を選んだ方が、よほど納得できる。

自分が一票を投じただけで世の中が変わる訳じゃない。それでも自分なりに悩んで投票するのである。自分が託すからこそ後の経過が気になるし、時には期待を裏切られることもある。票を入れるから裏切られたら後悔するんである。後悔しても自分の投じた一票が反映されてるんだと自分を納得させられるし、次の投票では託す相手をもっと考える。

特に経済が縮小する過程では、耳当たりのいい公約通りに世の中が回らない。どんな政策にも裏面としてデメリットがあるし、特にデメリットの方が国民生活への影響が大きくなりがちなのに、公約で謳われて政策やら業績として訴求されるのはメリットばかりになりがちだ。耳心地よく話を端折ってる場合もあれば、実際やってみて副作用に気付くこともある。

脱原発であれリフレであれ、その裏側には燃料調達やら長期金利上昇のリスクがある。リスクを承知の上で、やると決めたら賢く実行すべきだし、危機が生じれば機敏に対応する必要がある。何事もやってみなければ始まらないし、そういった不確実性に賭けることを候補者に託す、その代わりとして結果としての現実を引き受けるのが民主主義ではないか。

これまで解決できなかった複雑な社会問題がそう簡単に解決することは期待し難いにしても、どういう姿勢で取り組む政治家に託すかを決めるのが選挙であって、投票しなければ絶望し続けるし、投票すれば自分も社会を構成する一員として現実を変えられないもどかしさを抱えながら、次どうするか悩むこともできる。悩み、それでも誰かに託す決断をして、時には後悔し、また悩むプロセスの中でしか個々人の投票行動は成熟しないし、そういった有権者の決断の積み重ねの結果として、徐々に成熟した政治風土を醸成できるのではないか。

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