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「金融リテラシー後進国日本」で進められる危険な大学ファンド計画

「政府が21年秋にも創設する10兆円規模の大学ファンド(基金)の活用にも言及した。同ファンドは政府出資などを元手に株式や債券で運用し、収益を大学の研究開発資金などに充てる仕組みだ」(15日付日経電子版 「国立大に資産運用会社 収益力強化「22年に法改正案」」

損失は誰が負担するんでしょうか。政府が出資するということはその財源は税金。ということは損失が出た場合にそれを実質的に負担するのは国民ということになる。国民は大学ファンドで損失が生じた時に、その損失を負担することに同意しているのだろうか。

資金調達、資金運用のプランニングをする際に最初に行うことは、誰がどのような順番でどの程度の損失を負担するのかを決めることだ。リターンを得られる可能性だけを強調して損失を負担する投資家を決めない運用プランなど現実の世界ではあり得ない。これを決めないで資金調達が出来るなら、資金調達などに苦労することはないし、幾らでも資金運用が出来てしまう。

この大学ファンドからはGPIFが保有する多額の株式の受け皿にしようという政府の魂胆が見え隠れする。

また、大学ファンド構想の恐ろしいところは、異次元の金融緩和やGPIFによる過剰な株式投資といった誤った政策に対して、大学関係者が批判しにくくなることだ。基金から研究開発資金を渡さないよと言われたら政府に忖度する研究者が続出することは、今の総務省の接待疑惑をみれば明らかだ。

「将来は大学自身が自立し、自らの資金を確保できるようにしたい」(同日経電子版

大学には資産運用に関する知識と人材が集積しているから運用失敗などあり得ないと考えているのだとしたら、それは大き間違いだ。駒澤大学がデリバティブを使った運用で154億円もの巨額損失を出したことが明らかになったのは、僅か13年前の2008年のことだ。ちなみに駒澤大学は違法な勧誘があったとして証券会社を訴えたが訴えは認められず敗訴している。

さらに、1997年にブラック-ショールズ方程式を理論面から完成させノーベル経済学賞を受賞したマイロン・ショールズとロバート・マートンやFRB元副議長らを集め「ドリームチーム」と呼ばれたロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)が1994年の運用開始から僅か5年間で破綻に追い込まれたのは1999年のこと。

学術的な研究レベルの高さは必ずしも資産運用の成功に結び付かないことは歴史が示している通りである。日本人は資産運用でリターンを出す夢物語を語る前に、歴史から学び、金融市場に対して謙虚になるべきだ。政治家が損失負担を決めないでリターンの話だけをするところが「金融リテラシー後進国日本」の悲しい姿が現れている。

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