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風評被害?

東日本大震災後に、海外の大学や研究機関から東京大や東北大の研究者らにヘッドハンティングを働き掛けるメールが相次いで届いていることが7日、分かった。(......)日本での研究活動に制約があると決めつけた「風評被害」だとして不快感を表明した。
東北大などの相当数の優れた研究者らの元に海外から「被災で大変で研究活動ができないだろうから、これを機に移ってきたらどうか」などと「海外移籍」を持ちかける話が相次いでいるという。(......)日本での研究活動が震災で制約を受けたとする前提に立った内容になっており「実態とは異なる風評(被害)だ」(鈴木副大臣)と不快感を表明。「正確な情報を発信し、研究施設の復旧に取り組み、正面から対応したい」と震災に乗じた"日本の頭脳流出"への警戒感を示した。(「震災乗じ「海外移籍話」、東北大研究者らにメール 「研究できない」は風評」MSN産経ニュース)
いや東北だけじゃなくて都内についても複数のスジから理系の研究が止まっているという話は聞いてますが。もちろん「理系」といってもいろいろあるので理論数学の人とかは関係ないのかもしれないけど、建物の安全確認とかそういう問題だけじゃなくていつ停電になるかわからないからってのがあるみたいでしたね。実験の最中に突然停電したら機器の故障とか、最悪の場合には事故に発展しかねないわけで(まあ本当に問題になる機器は無停電電源でカバーしてるでしょうけど)。

だからまあ、現時点で制約を受けているというのは事実ではないかと思う。もちろんそれが短期的な問題に留まるのであれば、ヨソの大学に移籍して研究室を一から立ち上げて研究環境も整備してというのにかかる手間に比べれば小さいと判断する人が多いと思うけど、本当にそうなのか疑問に思う人も増えてくるんじゃないかな。

というのは、私も関わっている某プロジェクトの新年度予算額が先日通知されたのですが、政府の財政難と震災対策の影響で対前年度比マイナス25%だそうです。新年度早々から実施しないといけないというので対象者とか事業内容とか決めたあとでこういう話になったので、正直頭は抱えている。政府が資金源になっている他のプロジェクトとか外部資金とか、たぶん科研費とかにも同様の影響が出るよねえという予想も、まあしている。もちろん国全体の優先順位として災害復興が重要だというのはよくわかるし、そちらに予算を回すためにこちらを削るという判断についても理解はできるし、同じ高等教育・研究予算の内側でも東北の復興のためにその他の地域から回しますと言われればそうしてくれという感じではあるのだが、しかし理由はどうあれ環境自体は悪化するわけですよ。

加えて公務員給与マイナス5%という話もあり、これも状況を考えたらやむを得ないとは思うわけだが国の側から君たちいらない子だからと言われて独立させられたはずなのに何故か国の給与水準が下がるとこちらまで下げられるという事情の下では我々の給料も下がるんだろうなあと思うと正直気は重い。特に理系の場合にはどこの国に行こうが研究・教育の内容が大きく変わるわけではないので、どういう理由によるのであれ相対的な環境が悪化すればじゃあ移ろうかなあという人が増えても仕方がないと思う。というか震災の前から日本の大学の環境悪化というのは相当進んでいたので、その傾向はすでに出ていたわけですが。

じゃあどうするか、というのは難しい。流出しないように大学の環境維持のためのカネはきちんと使うというのもひとつの選択肢だが、かなりの復興予算が確実に必要になることを考えれば国民感情云々を措いておいても物理的に難しいんじゃないかとも思う。日本国民として痛みを分かち合い環境悪化に耐えるべきだとかいう人もいると思うが、それは結局優秀な研究者を不利な環境にわざわざ置いて無駄遣いするのと同じことで、あまり利口ではないという気がする。結局分けられるパイが小さくなるのが決まってるなら、外で食べられる人は外に行ってもらって、がんばって日本のパイをもう一度広げてから戻ってきてもらうほうがいいんじゃないかという気もする。

ただ問題は、特に理系の人は移転にかかるコストが大きいので一度出たら戻ってきてくれないんじゃないかというのと、たとえ戻ってきてくれてもそのあいだ教育が途切れることによる悪影響が残るという話。サッチャー政権のときにイギリスの大学から研究者が大量に流出して、そのあと復活していない研究分野とかの話も聞きましたな。教育研究のグローバル化を進めるというのは近年の一貫した政策で、それは良いことだと私自身も思うのですが、研究者が海外と競争できるようになるということは雇用する側である大学や国家も海外との競争にさらされるということではあるわけです。

まあそういう可能性も踏まえて、最終的にどうするかは国民が判断すべきことだとは思います。まあ希望の持てる話をしておくとですな、アメリカもイギリスも政府は財政難で文教予算のカットに進んでいてえらいことになっているので(イギリスの新年度予算では大学により最大15%以上のカット(この話はまた書く)、アメリカも一部の公立大でテニュア付き教員のリストラが始まっているそうで、日本に逃げてくる人がいる状況)、財政基盤の強いアメリカの私立大学との競争でなければ大丈夫かもしれないよあはははは。

***


なお私は法律学という、本質的にグローバル化の難しい特殊な学問に属する人間なので日本の大学で生きていくしかないんだぞ基本的に。上記もひとごとであって、なのでまあ正味のことを書いた。ひとごとだということにしといてくれ私は日本で暮らしたい。orz

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