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  • 2021年03月14日 09:59 (配信日時 03月14日 06:00)

東京五輪開催を支持する? 大企業2000社への調査に「お金はいいから逃げ出したい」の“本音”爆発

3月3日、東京五輪開催に向けた5者協議で、挨拶する橋本会長(中央)。右は丸川五輪相。モニター画面はリモートで参加の(左から)小池百合子都知事、IOCのバッハ会長、国際パラリンピック委員会のパーソンズ会長

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長による「女性蔑視発言」に端を発し、聖火リレーに参加予定だった著名人たちの “辞退ドミノ” が止まらない。

 ロンドンブーツ1号2号の田村淳(47)が、愛知県犬山市の聖火ランナーを辞退したのを皮切りに、五木ひろし(72)、常盤貴子(48)、斎藤工(39)、棋士の藤井聡太二冠(18)、大関・正代(29)など、多数が追随。表向きは「スケジュールの都合」としているが、辞退したことに変わりはない。

 そんななか、2月に緊急事態宣言が延長されたことを受けて、“世論” を把握する目的で、大手広告代理店が緊急アンケートを実施した。まずは、14歳以上のテレビ視聴者・男女各900人/合計1800人に、「東京オリンピック・パラリンピックの開催を支持しますか?」と質問。

 年代でばらつきはあったものの、全体では「積極的支持」が7.5%。無観客や一部開催など、「条件つきでの開催支持」が9.8%で、両者を合わせても「開催支持」が2割にも満たない結果となった。「どちらともいえない」が12.4%で、最終的には「開催反対」が70.3%にものぼった。

 この結果を受け、ナショナルクライアントをはじめ、関連企業や一般企業の “本音” を探ろうと、大手広告代理店は続けて約2000社に及ぶ大手企業を対象に調査を実施した。

 東京五輪は、多くのスポンサー企業によって支えられている。過去の五輪では「1業種1スポンサー」が基本原則だったが、今大会ではその枠を撤廃。結果、史上最高額となる約3700億円をかき集めた。再延期や中止となった場合、損失は巨額になることが危惧される。ところが、この企業を対象とした調査でも、厳しい結果が出た。

 部分開催や無観客での開催などの「条件的支持」を含めても、東京五輪の開催を支持する回答は、全体でわずか12.7%。対して、「条件的不支持」(再延期や東京以外での開催)と「全面的不支持」の合計は65%となり、前出の一般視聴者を対象とした調査結果と、ほぼ変わらなかった。

 各企業の担当者が寄せたコメントからも、その厳しさは察することができる。まずは、「全面的不支持」の理由から紹介しよう。

「社内で『開催』と『中止』で、それぞれの場合の損失額をシミュレーションしたのですが、『仮に開催されたとしても、広告効果は期待できない』という結果が出ました。今まで多額のスポンサー料を支払ってきましたが、どうやらドブに捨てた格好です。

 コロナ禍で弊社も業績の落ち込みが酷く、もはや五輪を支援するなどの “夢物語” は、口にするのもはばかられる状況。本音を言えば、『逃げ出したい』です」(製造業A社)

 大手医療施設の担当者は、医療崩壊を危惧する。

「絶対に、やめてほしい。現状、すでに医療は逼迫している状態ですし、あと数カ月で一気に好転するとは思えません。当病院のある施設は、五輪会場などからも近く、もしも会場で感染者でも出たら……。それを想像するだけでも、不安でたまりません。

 はっきり言って、政府や東京都の対応には不満だらけですし、真夏の酷暑にパラリンピックだなんて……」

 某メーカーの担当者は、「森発言」で社内のムードが一変したと言う。

「五輪に関わるのは子供のころからの夢でしたが、現状では開催は難しいでしょうね。社内的にも、森さんの発言で一気に冷めた感じは否めません。橋本聖子会長は現実を受け止めて、早く指針を示すべきだと思います」

 インバウンド需要を見込んでいたホテル会社の担当者は、「計画に大きな狂いが生じた」と嘆く。

「コロナさえなければ、五輪開催時期は予約で満室のはずでしたが、軒並みキャンセルで大打撃です。いくつものホテルが五輪をあてに建設され、同じ憂き目に遭っています。

 再延期になっても感染が収まらない状況では、開催に反対です。従業員は感染対策に神経をすり減らしていますし、このような状況で、まだ開催という夢を見ているのは、はっきり言って迷惑です」

 健康器具メーカーの担当者は、パラリンピックの選手の体調を心配する。

「当社はどちらかというと、パラリンピックのサポートに重点を置いています。世間の皆さんの議論は、そのほとんどが、オリンピックの開催についてですよね。

 パラリンピックの選手のなかには、難しい基礎疾患を抱えている方もいらっしゃいます。コロナが蔓延している東京で、“平和の祭典” なんて自殺行為に等しいと思います」

 同じく、大手金融機関の担当者もパラリンピアンを気にかける。

「正直言って、開催は無理だと思っています。弊社はパラリンピアンを応援する立場を担わせていただいているのですが、先日ある選手とリモート会議をした際に、コロナ禍での体調管理を懸念する話をされていました。“勇気ある撤退” も、考えるべきではないでしょうか」

●森喜朗主導の「おつき合い契約」でスポンサーが追った“負の足枷”

 スポンサーの最上位である「ワールドワイドオリンピックパートナー」に名を連ねる2社の担当者は、ともに「断腸の思いですが、開催を全面的不支持」と回答した。

「最近、『多額のスポンサー料を支払う意味は、どこにあるのか?』と、労働組合から経営陣に対して質問されました。コロナ禍で経営が悪化していることもあり、今後は株主からも突き上げを食らうのではないかと、内心冷や冷やしています」(B社)

「当社の立場からすれば、最後まで五輪を支えていくというのは当然のことなのですが、『安心・安全』が保証されない限り、難しいと言わざるを得ません」(C社)

 次に、「条件的不支持」を表明した企業の担当者の声を列挙しよう。まずは、大会スポンサーに名を連ねる、新聞社の担当者。

「会社の立場上は『条件的支持』か、せめて『どちらともいえない』と回答すべきなのでしょう。ただし、現実的には無理だと思います。

 弊社でも、意見広告や社説をいつ出すかを具体的に検討しています。ワクチンが行き渡っても、厳しいものは厳しい。知人の外国人ジャーナリストは、『日本はクレイジーだ』とまで言っています。今の東京での開催は危険です。とくにハンデのあるパラアスリートには酷です」

 飲料メーカーの担当者は、首都圏の緊急事態宣言の延長で、「五輪特需は厳しいものになった」と嘆く。

「私どもの主力商品はアルコール飲料なので、一般の方々が東京五輪を観戦しながら楽しんでいただくという観点から、開催にも賛同していました。

 ところが昨今のコロナ禍で、飲食店の時短営業の影響や、アルコールに対する世間の風当たりもあり、今後は広告などの出稿も慎重に考えております」

 少数ながら、開催を支持する声もある。「条件的支持」とした食品メーカーの担当者は、こう回答した。

「森氏の発言は、東京五輪のビジョンである『多様性と調和』をともに目指すパートナーとして大変遺憾です。ただし、新体制のもと、大会パートナーとしてともに取り組んでまいりたいと思います」

 同じく「条件的支持」とした家電メーカーの担当者は、「無観客ならば、開催可能だと考えています。さらに、日程や規模の縮小も合わせて検討すべきです」と言う。

 今回のアンケートは、あくまでも公式なものではないが、それでも組織委員会やJOC、東京都、とくに森前会長の後任になったばかりの橋本会長にとっては、喉元に刃を突きつけられるような結果になったに違いない。調査をおこなった大手広告代理店の五輪担当者は、今回のアンケート結果をこう分析する。

「じつは、前回のリオ五輪から、大手スポンサーの多くが撤退する傾向がありました。それに危機感を覚えたJOCや組織委員会は、森前会長がトップ交渉をおこなって、国内のリーディングカンパニーの多くを、スポンサーとして獲得したのです。

 しかし、これが見事なまでに日本流の、いわゆる “おつき合い” といわれるものだったんです。交渉の際は、『○○社もおつき合いくださっていますから』と、他社の契約状況を引き合いに出して促したものでした。

 もちろん企業側も、五輪特需を見越しての打算的な意味合いもあったと思いますが、コロナの蔓延で、その情勢が一変してしまいました。各企業担当者の “悲痛な叫び” にも似たコメントが示すとおり、今では五輪スポンサーであることが、企業の経営に大きな足枷となってしまっています」

 追い討ちをかけるように、WHOが3月1日、「年内にコロナの収束を考えるのは、あまりにも非現実的な期待だと思う」という見解を発表した。一方で日本政府は、組織委員会や東京都が無観客での開催を決断した場合、容認する方針を固めた。

 開催自体は譲らない構えであり、菅義偉首相は世界経済フォーラムのオンライン会合で、東京五輪を「新型コロナに打ち勝った証し」とする考えを、あらためて強調。五輪を中止することは、新型コロナ対策の「失敗」を認めることにもなるため、どうしても避けたいようだ。

 各企業の担当者は、胃の痛い日々が続く。

写真・AFP=時事通信

(週刊FLASH 2021年3月23日号)

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