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吉沢亮の『青天を衝け』が世界的人気の海外ドラマに学ぶべき点とは

大河ドラマの1年でどんな変化を見せてくれるか(時事通信フォト)

 コロナ禍で制作は困難を極めているはずだが、今作のNHK大河の勢いはそれを感じさせない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

【写真】渋沢栄一の妻を演じる橋本愛のドレス姿

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 期待値の高さなのか。例年より1ヵ月遅れでNHK大河ドラマ『青天を衝け』(日曜午後8時)がスタートすると、「初回視聴率が20%の大台に乗った」と話題に。報道によると綾瀬はるか主演『八重の桜』以来何と8年ぶりの快挙とか。すでに第4話まで放送されましたが、まず走り出しで鮮烈な印象が刻まれました。それは数字などではなく、贅沢な布陣による「役者を見る至福」です。

 物語の主人公は……江戸・明治・大正・昭和と激動の時代を駆け抜けた「日本の資本主義の父」渋沢栄一。演じるのは若手のホープ、“国宝級のイケメン”の異名をとる吉沢亮。その栄一の妻になる尾高千代には、朝ドラ『あまちゃん』でダブルヒロインの一人として輝きを放った橋本愛。そして父の市郎右衛門に、いぶし銀役者の筆頭、小林薫、母・ゑいには和久井映見、栄一の片腕となる従兄・喜作に高良健吾が配置されていて、もう文句なしの演技派揃い。

 そして第4話で圧巻の存在感を見せたのが、江戸最後の将軍・徳川慶喜を演じる草彅剛です。ただ佇んでいるだけ、横顔を見るだけで「お殿様」の威厳と品格とが伝わってくる。これを役者を見る至福と言わずして何と言いましょうか? しかも側近・円四郎に堤真一、父の斉昭には竹中直人、そして高島秋帆に玉木宏、橋本左内に小池徹平……とたまらないキャスティングで幕開けです。

 印象的なのはキャスティングだけではありません。

 冒頭の演出がこれまた凝っています。すでに遠い過去の人である徳川家康が堂々と出てきて「こんばんは、徳川家康です」と挨拶、幕末という時代背景について解説してくれるのですから。時を俯瞰し複雑な状況を分かりやすく整理する役回りとして、家康を登場させる手法はアッパレ。演じる北大路欣也も板についている。家康は何と最終回までほぼ毎回登場する予定だとか。

 その上、解説パートで説明だけに終始しない点もすごい。例えば床に敷かれた1枚の白い大きな布が地図や国旗に変わったり、背景の松の絵のふすまが数枚のパーツとなって黒子によってひっくり替えされ移動するとたちまち外国人の顔になったり。動かしたり裏返したり上空に浮かせたり。いわば「舞台的」な演出が目を惹きます。

 「舞台的」というのは、実際のモノ(例えば板や布、紙など)を使って空間をめくるめく変化させていくローテクな手法です。もし、これが「映像的」な演出となればレンズの画角や視点を替えたりCGを使って画像処理したりとなるわけですが、実際の舞台ではまさしくローテクが決め手で、その面白さを大河ドラマの冒頭に活用した斬新さがいい。

 ただ、ちょっと残念な点も浮き彫りになってきました。

 毎回これほど凝った仕掛けを使い、退屈になりがちな説明を上手く聞かせる工夫をしているのに……なぜか本編が始まると、またくだくだと説明的なセリフを役者に語らせてしまう。

「父様は前々から武州藍を日本一にしようとたくらんでいる。来年も高めあっていい藍を作り武州藍を大いに盛り上げたいと思っている」
「一橋様が将軍におなりに遊ばせばきっと乱れたこの世を立て直すことができる」
「母様姉様が育てているお蚕さんは一ヶ月寝ずに繭をとって一つかみでせいぜい一文だ」

 人間の関係を暗示するふとした一言や感情の機微を表すセリフよりも、どうしても状況説明が目立つ印象です。最初から全てを正しく伝えなくては、という意識を感じるのです。

 しかし、視聴者は最初から正確に全てを知らなくても、時代や出来事が細かく把握できなくても大丈夫。特にこの物語は「日本の資本主義の父」という背骨が1本通っているし、役者が画面の中で活き活きと魅力的に躍動してくれれば、視聴者もついていくことができます。

 今世界的に人気を博している数々の海外ドラマを見てみると、長いシーズンの冒頭の話がわかりにくいのはいわば当たり前。その多くが最初の数話を見ただけでは何を描いているのか正確にわからない。わからない部分も残しつつ、まずは登場人物のキャラクターを際立たせ固有の世界観を表現し、視聴者の方も徐々に筋立てを掴んでいく。むしろ手探りでドラマ世界に入り少しずつわかるプロセスを楽しんでいる……。

 そのあたり、日本の大河ドラマももう少し学んでいいのではないでしょうか? キラ星のキャスティングなのに、役者たちにくだくだと説明を語らせるのはあまりにもったいない。しかも、脚本担当は大評判をとった朝ドラ『あさが来た』の大森美香さんです。個々の役者の魅力が際立ってくるような言葉を、ぜひたくさん書いて欲しい。期待しています。

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