記事

水分補給

(この記事は以前運営していたブログどらねこ日誌に2009年に掲載したものを加筆・修正したものです)

 あつ〜い夏が終わると*1、脱水の心配も少なくなりそうですが、高齢者や子供についてはあまり当てはまらなそうです。高齢者はかわきに対して鈍感になってしまい、気がつかないうちに脱水症状なんて事も多いのです。過ごしやすい季節だからこそ、周りの人も油断しがちになるのですね。

 子供について言えば、体が小さいものだからちょっとした病気や食あたりで深刻な脱水を起こしてしまいます。特に、ノロウイルスはワクチンなどで予防する事も困難ですし、非常に感染しやすいため、嘔吐や下痢が起こったあとの対応がとても大事になります。


■ハイポトニックってなあに?

 最近は、水分補給用のペットボトル飲料をお店でよく見かけますが、いろいろありすぎて何を選んだらよいか分からない人も多いのでは無いでしょうか。「ハイポトニック」「オスモル」などなど、なんだかよく分からない単語が並んでいます。

どらねこもイマイチよく分かりませんので、一度整理して勉強しなおそうとおもいます。(この部分はちょっと難解なので面倒な方は飛ばしちゃって次の項目を読んで下さいね)


【浸透圧】

 浸透圧は、水中に含まれる粒子数に比例して増加するのだそうです。

 その単位が mOsm/L (オスモル/リットル)


 例えばグルコース(ブドウ糖)は C6H12O6という構造なので、分子量は約180でして、グルコース1モルは、180 g だとわかります。この180 gのグルコースに水を加えて1リットルにすれば、1 M(いちもーらー)となるんですね。

 

 mOsm には、m=ミリという単位がついてみますので、1 M=1000 m ということで、グルコース180 gに水を加えて1リットルの水溶液をつくれば(メスアップしてね!!)浸透圧が 1000 mOsm/L の溶液が出来上がります。

さて、食塩は NaCl で、分子量は58.5です。先ほどのグルコースと同じように1モルを溶かせば同じ浸透圧になるのでしょうか?

 ところが、食塩は水中では Na+とCl-に分かれて存在するので、浸透圧は2倍の 2000 mOsm/Lの溶液ができあがります。このへんはしっかり抑えておく部分でしょう。こうした手続きにそって計算をすると浸透圧を求めることができるわけです。

 さて、人間の体液の浸透圧はだいたい、280 mOsm/Lだそうですが、アイソトニックやハイポトニックというのは、この浸透圧に注目して液体を分類したものだという事です。


 【体液よりも高いもの】→ハイパートニック

 【体液とほぼ同じ】→アイソトニック

 【体液よりも低い】→ハイポトニック


 そういえば、テレビのスポーツドリンクのCMで、「アイソトニック○○」なんてフレーズを聴いたおぼえがありますが、やっぱりアイソトニックが水分補給に良いのでしょうか?

 

 ところが、必ずしもアイソトニックが水分補給に最適というわけではないようです。実は人間の消化管では一般に浸透圧が低い液体の方が吸収されやすいのです。それなら水を飲めば良いんじゃ無いの?と思ってしまいそうですが、そう簡単にはいきません。脱水は水分だけが失われるわけでは無いからです。水分補給時は失った水分だけでなく、ミネラルを同時に補給しないと体液が薄まってしまうので、水だけ飲むのは危険なのですね。そこで、失われたミネラルを適度に含んだ200 mOsm/L程度の浸透圧(ハイポトニック)の飲み物が奨められるわけです。

なるほど、そういう理屈で最近薬局などでORS(経口補水塩)がおいてあったり、ペットボトル飲料にはハイポトニックを売りにした商品がにぎわっていたのですね。


■ミネラル補給も大事

 脱水からの回復には浸透圧以外の要素も関わっています。汗や嘔吐、下痢などでは水分とともに身体に重要なNa(ナトリウム)などのミネラルも同時に失われてしまいます。そんな状態でNaを十分に含まない水分補給をすると、低Na血症(水中毒)になるおそれがあります。体の小さい子供ではその危険がとても高いと考えられます。いわゆるスポーツドリンクには浸透圧のわりにNa濃度がそれほど多くないものが多いので、その点からも不向きです。

余談ですが、同じ浸透圧では、Naやグルコースがちょうど良い割合で含まれると、水分の吸収が早くなる効果があるのです。栄養学でも教えられるのですが、Naはグルコースと一緒に吸収されるのでした。このときに同時に水も取り込むために吸収が早くなるのです。一石二鳥です。

そんなわけで、病気やひどい下痢の時には、望ましい分量のNaとグルコースが含まれたハイポトニック飲料を与える事が推奨されるわけです。(復習終了)


■自分でつくってみる

 でも、薬局で売ってるOS-1などの経口補水塩ってお値段が高いんですよね。それはともかく、子供が吐いた場合に大人が一人しか居ない場合、買いに出かけるのが難しい、なんて事もありそうです。

とはいえ、飲み物を一から作るのは面倒だし、味の面でも不安があるので、500 mlペットボトル入りの市販品スポーツドリンクを利用します。アクエリアスだと果糖の割合が多いので、今回はポカリスエットを選んでみました。ポカリスエットのペットボトルなら近所の自販機やコンビニでも簡単に買うことができますからね。


 ポカリスエットの主な組成

 【エネルギー】・・・27 kcal/dl

 【炭水化物】・・・6.7 g/dl 

 【ナトリウム】・・・49 mg/dl

 【浸透圧】・・・323 mOsm/L

※ dl→デシリットル。デシは1/10という意味なので、100 mlと同じ。


では、さっそく作ってみましょう。

 

① 500 mlのポカリスエットを麦茶ポットのような大きめの容器にうつす。

② その中に、食塩を 2 g(目安としては小さじすり切りいっぱいの半分よりやや少ない程度、できれば秤で計量したいところ)、あればレモン果汁を数滴垂らします。

③ 空になったポカリスエットのペットボトルで水 500 mlをはかり、ポットに加えます。

④ 軽く振り混ぜて、ちゃんと溶けたらできあがりです。


 500 mlのポカリスエットを薄めて1リットルにすると、浸透圧は 161mOsm/Lです。そしてNaが少ないという弱点は、食塩を 2 g入れることで解決させます。

上で書いた理屈でいうと、食塩2gを溶かすことで浸透圧は 68 mOsm/L増えるはずです。 

では、この飲料の組成を見てみましょう。

 

【エネルギー】・・・14 kcal/dl

【炭水化物】・・・3.4 g/dl

【ナトリウム】・・・103 mg/dl

【浸透圧】・・・229 mOsm/L


どうです、なかなか経口補水塩っぽいでしょう?

夏の猛暑による脱水、冬の感染性胃腸炎による嘔吐下痢による脱水の備えに、経口補水塩に対する知識を多くの方に持って頂きたいと思います。

あわせて読みたい

「健康」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    NHK受信料「義務化」は時代錯誤

    大関暁夫

  2. 2

    菅首相に見る本読まない人の特徴

    山内康一

  3. 3

    パワハラ原因?オスカー崩壊危機

    渡邉裕二

  4. 4

    感染防ぐ日本人 生活習慣にカギ

    中村ゆきつぐ

  5. 5

    伊藤容疑者 事務所破産の可能性

    SmartFLASH

  6. 6

    8割が遭遇する中年の危機に注意

    NEWSポストセブン

  7. 7

    公選法に抵触 毎日新聞の終わり

    青山まさゆき

  8. 8

    任命拒否めぐる菅首相の迷走ぶり

    大串博志

  9. 9

    菅首相を揶揄 無料のパンケーキ

    田中龍作

  10. 10

    河野大臣 コロナ重症化率を解説

    河野太郎

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。