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(本)石井光太「絶対貧困 世界リアル貧困学講義」

リンク先を見る 絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫)
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石井 光太 新潮社 2011-06-26





貧困問題関連では非常に評価の高い一冊なので読んでみました。一見軽めのタイトルですが、中身は真摯でリアル。読書メモをご共有。

貧困のリアル

・日本人が生まれてはじめて汚いスラムに足を踏み込むと、「よくこんな不潔なところで暮らしていられるな」と感想を漏らします。しかし、実際は、スラムの住人たちもそれによって感染症に掛かり、バタバタと死んでいるのです。ある程度の年齢まで生き残っている人たちは、たまたま免疫力がつよく感染症にかからなかった、あるいは感染したことはあっても運良く悪化しなかったという人ばかりなのです。つまり、スラムでは、免疫力のある人が生き残るという「自然淘汰」がなされているのです。

・日本と途上国の乳児死亡率を比べて見ると、次のようになります。
5歳未満児死亡者数(1,000人あたり)
日本:4人
米国:8人
中国:21人
シエラレオネ:194人
アフガニスタン:257人

・今回の講義で、私は面白おかしく、うんこが川から流れてくるだの、地面に新聞紙を敷いて用を足すだのという話をしました。現地にいると、彼らは当たり前のようにそうやっていますし、そこに多くの笑顔があったりします。しかし、だからといって、それが「安全」というわけではないのです。きつい言い方をすれば、それは「自然淘汰」に勝ち残った者の笑顔にすぎないのです。

・銃の価格が一番安いのがアフリカでしょう。90年代に冷戦が終結した直後の旧共産圏から内線をしていたアフリカ諸国に大量に流れてきたのです。(カラシニコフは)私がスラムで聞いた時は、一時期1,000円にまで価格が落ち込んでいました。信じられないかもしれませんが、携帯電話の方がずっと高いのです。

・スラムの名誉のために申し上げますが、決して恐ろしいところではありません。スラムで働く人々の九割の人が合法的な仕事をし、正義感をもち、立派に生きています。(中略)しかし、どの国でも同じですが、一部の人たちは様々な成り行きから、悪事に手を染めてしまう者です。そしてその人たちがたまる場所が、スラムの中のグレーゾーンやダークゾーンとなるのです。日本における歌舞伎町のイメージだってそうですよね。

・このような「ボーダレス時代」の中で、大きな問題となっているのが、貧しい国から豊かな国への人の流出です。途上国で生まれ育った人々が、富を求めて先進国へと押し寄せているのです。
中東の外国人比率
カタール:約75パーセント
クウェート:約75パーセント
バーレーン:約50パーセント
ドバイ:約90パーセント
オマーン:約25パーセント
サウジアラビア約25パーセント

・そこでアメリカをはじめとした各国の軍隊は、途上国の貧しい人たちをリクルートするのです。先進国の人が月給二十万円で戦場に行くことは少ないでしょうが、途上国の貧しい人なら危険が会っても一攫千金の機会だと思って喜んでいきます。そこで、政府は専門の人材派遣会社を何者も通して途上国から労働者を集めるのです。

・もし東南アジアから何百万人という人々が押し寄せてきてホームレスになったとします。彼らが路上で強姦をしたり、重婚をしたりして、十人も十五人も子どもを産めば、どんどんホームレスが増えていき、やがては日本人より多くなるかもしれません。さて、あなたは、そんな状況を笑顔で見ていられますか?

・生後から28日以内の乳児の年間死亡者数(1,000人あたり)
日本:1人
米国:4人
中国:18人
シエラレオネ:56人
アフガニスタン:60人

・妊産婦の年間死亡者数(10万人あたり)
日本:6人
米国:11人
中国:45人
シエラレオネ:2,100人
アフガニスタン:1,800人

・先進国の団体や途上国の政府の役人によっては、伝統薬売りや呪術師を「迷信を利用した詐欺」として禁止することがあります。しかし、実際はこうした人たちが福祉制度から漏れた人々を助けているという側面があり、国がしっかりと路上生活者のための福祉制度を整えた上でなければ、まったくの逆効果になってしまうのです。

・そもそも、なぜその程度の買い物や喜捨を小難しく、高尚に考えなければならないのか私にはわかりません。(中略)物売りを目にしたら「がんばっているなー」ぐらいに思って、安いものを買ってあげればいいと思うのです。お菓子にしたって、ティッシュにしたって十円とかそれぐらいです。ちょっとぼられたって大した値段になるわけでもありません。もしあなたが買ってあげれば、きっとすぐに彼らと親しくなることができるでしょう。

・大体どの宗教にも「富める人が貧しい人に喜捨をする」という教えがあることをわかっていただけたと思います。私は、これを宗教という名の福祉のセーフティネットだと考えています。(中略)まだ福祉制度が整っていない途上国では、今も宗教心にもとづいた喜捨が物乞いの生活を支えているのです。

・戦争が起きたとき、軍隊やゲリラ組織は兵士集めに奔走しますが、その際にまっさきにリクルートの大賞となるのが、ストリートチルドレンなのです。彼らは守ってくれる保護者がいませんし、警察からも相手にされていませんから、誘拐されて危険な前線に兵士として送り込まれることがよくあるのです。世界には約三十万人の少年兵がいると推測されていますが、シエラレオネなどいくつもの国々でストリートチルドレンが兵士にされていた事実が明らかにされています。



貧困の現場に実際に足を運んだ著者が「リアル」を伝えてくれる貴重な書籍です。この種の本はたくさん読んでいたつもりですが、非常にフラットで、独特の読後感を与えてくれる一冊です。世界の貧困問題に関心がある方は必読の一冊でしょう。

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石井 光太 新潮社 2011-06-26





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