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月5万4000円のベーシックインカム実験「働かない人が増える」「タバコや酒に使われる」は誤り、米カリフォルニア州

ベーシックインカムは精神面にも良い影響を与えるという(Unsplashより)

近年、世界各国でベーシックインカムに熱いまなざしが向けられている。人工知能(AI)の進歩はもちろん、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大にともなう不景気や失業率の悪化、少子高齢化や格差拡大などの社会的背景による影響も大きい。

一方で、ベーシックインカムには否定的な意見もある。財源など制度的な疑問のみならず、「ベーシックインカムを導入したら、働かない人が増えるだけだ!」「支給額はタバコや酒に使われるだけだ!」といった声もあるだろう。2021年3月、そのような憶測を覆す結果が明らかになった。

アメリカのカリフォルニア州ストックトン市では2019年2月から、毎月500ドル(約5万4000円)のベーシックインカム実験を開始した。支給対象はストックトン市に在住する18歳以上で、世帯収入が中央値である4万6033ドル(約500万円)以下という条件から、無作為に抽出した125人。受給者の平均年齢は45歳、うち女性は69%におよぶ。

今回、テネシー大学のステイシア・ウェスト博士、ペンシルベニア大学のエイミー・カストロ・ベイカー博士らは「Preliminary Analysis: SEED’s First Year(事前分析:SEED1年目)」と題する調査レポートを発表した。アメリカにおいて新型コロナウイルス感染症がはびこる以前、2019年2月〜2020年2月までの同ベーシックインカムの予備調査結果をまとめたものだ。

>>調査レポート

フルタイム雇用が1年で12%も増加した

まず当然と言えば当然だが、ベーシックインカムを導入したことで、得られたメリットの1つは月収の変動を軽減できたことである。支給を受けていないグループは67.5%も世帯月収が変動したが、支給を受けたグループは変動を46.4%に抑えられたという。

また、受給者はフルタイムの仕事に就くこともできた。支給を受けたグループは2019年2月にはフルタイム雇用は28%で、1年後の2020年2月には40%と、12%も増加した。一方で、支給を受けていないグループは2019年2月にはフルタイム雇用は32%、2020年2月には37%と、5%しか変化しなかった。

タバコや酒類に使われる割合は1%未満

支払いは毎月15日、もしくは毎月15日前後にプリペイド式デビットカードで実施し、総支出データを収集した。その結果、毎月の支出は「食品」が最多で、ウォルマートなどの大型店での食品購入と考えられる「販売・商品」がそれに続く形だ。あわせて約6割におよぶ。そのほか、支給金は公共料金や日用品、交通機関、保険、医療などに使われた。タバコや酒類は1%未満だった。

ベーシックインカムは精神面にも良い影響を与えた。支給を受けたグループは健康的で、うつ病や不安が減少し、ウェルビーイング(幸福)が向上したという。実際に支給を受けた20代後半のパムと30代前半のジムという夫婦は、以前は経済的な状況や育児のストレスにより、2人ともパニック発作を起こすこともあったものの、現在では不安感が大幅に減り、夫婦喧嘩が少なくなったと語る。

本レポートではまとめとして、ベーシックインカムは経済的安定性、精神的・身体的健康の改善との間に因果関係があると結論づけている。一方で、500ドルは家賃、育児、医療などには有効だったものの、生活必需品の法外な費用をカバーするには十分ではなかったと付け加えた。

ニューヨーク市長選にはベーシックインカム実現目指す候補も

今回の支給を手がけたのは、その名も「SEED(Stockton Economic Empowerment Demonstration、ストックトン・エコノミック・エンパワーメント・デモンストレーション」。2019年からアメリカ国内において市レベルで初とされる「ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)」の導入実験を実施したことで知られる、カリフォルニア州ストックトンのマイケル・タブス元市長が立ち上げたものだ。

マイケル・タブス元市長は2020年の市長選で敗北したものの、現在アメリカではベーシックインカムの実現を目指し、2020年11月3日のアメリカ合衆国大統領選挙の民主党候補者の指名争いで注目を集めた実業家のアンドリュー・ヤン(アンドリュー・ヤング)氏が、2021年のニューヨーク市長選に出馬するなど、ベーシックインカム実現に向けた動きは活性化していると言える。

なお、Ledge.ai編集部では、アンドリュー・ヤン氏の出馬報道も含め、2020年に起きた世界各国のベーシックインカムの動きについてまとめている。あわせて以下の記事もチェックしてほしい。

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