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東日本大震災から10年、あの災害から何を学んだのか

田原総一朗です。

東日本大震災、そして、あの福島第一原発の事故から10度目の3月11日を迎える。かつては全世界が、「エネルギーは原発でいく」という時代だった。それが福島の事故によって一変したのだ。今も約3万6000人の方が、故郷福島に帰れずに暮らしている。

僕は原発事故の後、政治家はもちろん、東京電力関係者、学者と数多くの人に取材した。僕が何より驚いたのは、東電が一度も避難訓練をしていなかった、という事実だった。

「なぜ避難訓練をしなかったのか」と私はある東電関係者に問うた。すると彼は驚くべきことを言った。「避難訓練をするということは、事故が起きるかもしれないということ。事故の可能性がある前提では、誘致できなかった」。つまり、「事故は絶対あり得ない」という安全神話のもとで、あの事故が起きたのだ。

だから住民は混乱し、逃げまどった。原発から約4.5キロメートルの場所にあった双葉病院の患者ら44人が、避難中の車内や搬送先の施設などで亡くなるという、いたましい犠牲もあった。いざというときの避難訓練を徹底されていれば、防げた事故だろう。

当時の原発事故の収束及び再発防止担当大臣だった細野豪志氏は、「事前の危機管理が極めて不備だった」と語る。たとえば、事故後の処理をするのに、作業員の被ばく線量の上限は、100ミリシーベルトだった。しかしこれでは到底事故処理ができないと、当時の菅政権は250ミリシーベルトに引き上げた。「アメリカにはすさまじい仕組みがあるんです。事故処理に志願した方の被ばく線量は、上限がなしというものです。原発事故もですが、アメリカは核戦争を想定して、危機管理をしているんです。まさに国家としてやっている」

今の日本にその危機管理ができているか、と問うてみたい。あの大震災に真に学んだのならば、地震ではなく、「疫病」という災害をも想定し、徹底した危機管理をしておかなければならなかった。去年から今年、新型コロナウイルスのパンデミックが起き、右往左往する政府の姿は、とてもあの大事故に学んだとは思えない。

政治は、危機から目を背けることなく、東日本大震災、そして新型コロナウイルスから学び、国民を守るべく、徹底した危機管理をしなければならない。

東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福を改めて祈りたい。生き残った私たちが早急にしなければいけないことは、山積しているのだ。

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