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サステナブルの時間軸

環境問題が政治課題の中心に据えられて以来、SDGs:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)が一般的な言葉として定着しつつあります。一方で、このS(=サステナブル:持続可能性)を巡っては、さまざまな議論があります。

そもそも「持続可能性」という直訳に近い言葉が直感的に分かりにくく、もっといい日本語がないのか?といつも思案してしまいます。マイヤー=アービッヒが言う「自然的共世界」のような、より強いメッセージが政治的にも必要なのかも知れません。

私は日本ユネスコ国内委員会の委員を務めていますが、そこでも、ESD:Education for Sustainable Development(持続可能な開発のための教育)が重視されています。長期的な視点に立てば、まず教育から変えていくことはもっともな議論。
https://www.mext.go.jp/unesco/004/1339970.htm

金融の世界でも、E:環境、S:社会、G:ガバナンスを重視した経営を行う企業への投資、すなわちESG投資が注目されています。2050カーボンニュートラルを進めていく上で、このESG投資の考え方は、脱炭素を加速化させる有効な手段となると思います。カーボンプライシングや税制などによるインセンティブと組み合わせていくことで、いっそうの加速化が期待できるわけです。

これらの議論を踏まえると、問題はサステナブルを巡る時間軸だと感じています。

2050年までは約30年。欧米では2030年頃、つまり10年後にマイルストーンを置いた議論が進んでいます。新車販売の内、ガソリン車の割合をゼロにするなどのEVシフトが代表的です。

しかし、再生可能エネルギーへの転換などの電力改革にしても、EVシフトの要である新たな蓄電池(我が国がリードする全固体電池が有力ですが)の開発にしても、水素のコストダウンについても、10年というスパンはいずれにも短すぎるという気がします。

原発を巡る議論を例にとっても、東日本大震災から10年を経て、未だに再稼働が難しい状況であり、リプレースや新増設などは、サステナブルの時間軸を見る限り、もはや現実的ではありません。

この現状を考えると、脱炭素の道のりは短期的には厳しく、2050年間際に一気に加速するしかないように見えます。しかし、急激な生活様式の変化を我々が受け入れられるかというと、そこは困難で、一定の時間を要すとも思えます。

結果として、早く脱炭素化が進む分野と、時間を掛ける分野と、しっかり分けて議論すべきと考えます。これらを一緒にして期待だけ膨らませてみても、皮算用に過ぎません。

長期的には教育を通じて人が変わり、短期的には技術開発により可能な分野から脱炭素を進めて行く。それらを加速化させる金融手法や税制などのインセンティブを駆使してカーボンニュートラルを後押ししていくイメージです。

カーボンニュートラルの議論は、まだ始まったばかりです。しっかりと次の世代へ託せる力強い仕組みを残せるように頑張ります。

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