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緊急避妊薬へのアクセスの実態 対面・オンライン診療の現状と課題

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NPO法人ピルコン染矢明日香理事長(左)、遠見才希子医師(右) ⓒJapan In-depth編集部

安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・緊急避妊薬の対面・オンライン診療のあり方や、処方箋なしの薬局での入手に向けた課題について考える集会が3月3日院内で開催。

・国会議員、関連省庁、メディア、オンライン参加者ら約300名出席。

・必要な人に迅速に緊急避妊薬が届く仕組み構築が急務。OTC化の実現も検討を。

最近よく耳にする「緊急避妊薬」。海外では、「モーニングアフターピル」というが、略して「アフターピル」とか「モーニングピル」などとも呼ばれることもある。性被害にあったり、望まぬ妊娠をしたときに服用することで、緊急避難的に妊娠を防ぐ避妊薬だ。

11万筆を超える署名が集まり市民の声を受けて第5次男女共同参画基本計画に処方箋がなくても薬局で入手できるよう検討が盛り込まれた。

今回、国際女性デー(3月8日)を迎えるにあたり、約1万人に聞いたウェブアンケート結果をもとに、各ステークホルダーが連携し、当事者の目線に立った緊急避妊薬の対面・オンライン診療のあり方や、処方箋なしの薬局での入手に向けた課題について考える集会が3月3日、衆議院内で開催された。主催は、緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト。

国会議員、内閣府や厚労省など関連省庁、メディア、オンライン参加者含め約300名が出席した。

冒頭、この問題に取り組んでいる木村やよい衆議院議員は、「女性の健康支援をしっかりやっていくことが重要だ。我が国の持続可能性にとってもそうだ。アフターピルへのアクセスが改善し、女性がいきいきと生きることができる社会にしよう」と呼びかけた。

内閣府男女共同参画局局長林伴子氏は、日本の年間中絶件数が15.6万件あること、その半数が10代、20代であることを紹介、緊急避妊薬をフォローアップしていくと述べた。そのうえで、「性に対する教育がポイントだ。内閣府と文科省で、生命の安全教育を検討している。政府は女性の健康を守ることを重要と考えている。厚労省に働きかける」と述べた。

まず、NPO法人ピルコンの染矢明日香理事長がプレゼンテーションを行った。筆者は染矢氏が大学生時代からの旧知だ。当時はまだ性の問題を取り上げるNPOはほとんど無かったが、地道に活動を続けてきた。こうしてロビーイングを行うようになるまでピルコンを育ててきたことには頭が下がる。

染矢氏は、2020年6月、「#緊急避妊薬を薬局で」プロジェクトを立場の違う2人と立ち上げ、産婦人科医の遠見才希子氏と、#なんでないのプロジェクト福田和子氏と共に、共同代表となった。

緊急避妊薬の適切で安心・安全なアクセスの実現に向けて~周知の課題と展望~」と題するプレゼンテーションで染矢氏は、プロジェクトの活動として、2020年7月自見厚生労働大臣政務官(当時)に要望書を提出したのに続き、関係各所に働きかけたことを紹介した。その後、第5次男女共同参画基本計画において緊急避妊薬を薬局で処方箋なしで入手できるよう検討する方針が明記されたことは周知だ。

染矢氏は、緊急避妊薬の薬局での適切な運用のために、緊急避妊薬の現行診療における課題の解決と、その為の制度設計が必要であると強調した。

そして、当事者の声をふまえた緊急避妊薬のアクセス改善の提言や、関連学会へ現行の診療体制の強化・周知を含めた提言 、緊急避妊薬のスイッチOTC化(注2)への要望を関係各所に申請していくと述べた。そのうえで、意図しない妊娠のリスクを抱えたすべての女性が安心して、適切かつ安全に、緊急避妊薬にアクセスできる社会にしたい、との考えを示した。

次に、なんでないのプロジェクト 福田和子氏が「緊急避妊薬のアクセス改善と制度について ウェブアンケート1万人の声から」(注1)の結果を紹介した。

それによると、緊急避妊薬の認知度は、男性で78%、女性で86.2%の人が「知っている」と答えた。認知度はかなり高まっているようだ。

緊急避妊薬を入手法については、対面診療が1239人、オンライン診療が50名だった。対面診療では産婦人科医による診療が95.2%を占め、その際、内診が5.1%あったことに福田氏は疑問を呈した。

対面診療のケースの回答では、「医療者から低用量ピルやIUD、IUSによる 避妊を勧められたことはありますか?」という問いに対して、33.7%の人が「はい」と答え、「緊急避妊薬服用をきっかけに、低用量ピルや IUD、IUSによる避妊を始めましたか?」との質問には35.0%の人が「はい」と答えた。なお、低用量ピル等による避妊を始めたと答えた人の約半数は、医療者からの勧めではなく、自分から始めたと答えた。

受診前でも患者のプライバシーへの配慮は欠かせない。人前で「緊急避妊薬」と言ったり、患者の名前を呼んだりしなくてよい仕組みが必要だ。また、医師が患者に説教的な態度をとったり、面前服用を求めたりすることを避けることや、診断後避妊法について丁寧に説明することなどが必要だろう。診断後に「いつでもきてください」という声かけがあるだけで、どれだけ患者は安心を得られるだろうか。絶えず患者に寄り添う姿勢が必要だと思う。

一方、オンライン診療を通して緊急避妊薬を入手した50人の回答で、緊急避妊薬の入手法では、産婦人科医によるオンライン診療から自宅に郵送された人が93.9%を占めた。

オンライン診療そのものの認知度は、女性25.8%、男性26.7%と、思ったより低かった。

こちらでも、「医療者から低用量ピルや IUD、IUSによる避妊を勧められたことはありますか?」との質問に「はい」と答えた人は32.0%、「緊急避妊薬服用をきっかけに、低用量ピルや IUD、IUSによる避妊を始めましたか?」という質問に「はい」が26.5%だった。オンライン診療においても、避妊を始めたと答えた人の約半数は、医療者からの勧めではなく、自分から始めたと答えた。

緊急避妊薬を薬局で処方箋無しで入手出来ることについて「賛成」の人は、女性で97.8%、男性で94.2%だった。

また、「面前内服」については、女性の56.8%、男性の60.8%が反対だった。

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