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経営トップに近づくほど不正を隠すようになる?-オリンパス事件刑事公判より

(本日は短めのエントリーです)
ひさびさのオリンパス事件ネタですが、12月11日に開かれた旧経営陣の刑事公判では被告人尋問が行われたようで、事件発覚当時常勤監査役であったY氏の公判での証言内容が報じられています。2001年当時、経理部長だったY氏は、これ以上損失飛ばしを隠すことはできないと考えて、当時の社長であったK氏等に公表を勧めたそうです(財テク失敗で損失が拡大した20年ほど前から、Y氏は歴代の社長に対して強く公表を迫っていた、とも報じられています)。

しかし、昨年公表されたオリンパス事件の第三者委員会報告書によると、このY氏は副社長に就任していた2006年の時点では、内部通報制度(ヘルプライン)に外部窓口を設置することについての社内の提案に対し強く反対をしていた、とあります。「当社は労務問題が多いから、とくに外部窓口を設ける必要性はないのでは」とのY氏の意見だったそうですが、おそらく損失飛ばしのスキームが社外第三者に漏れることを強くおそれたからではないかと思われます。

仮にこのY氏が刑事公判において証言したところが正しいとするならば、どうして考え方がこのように大きく変わってしまったのでしょうか?経理部長という立場からすれば、損失飛ばしによって粉飾する、ということの矢面に立っていたはずですから、もはや不正経理を続けることは耐えられない気持ちだったものと推測されます。辞表を持参して公表を迫ったほどの人なので、もし2001年ころに、オリンパス社にヘルプラインが存在していれば、Y氏自身が内部通報制度を活用していたのかもしれません。

しかし副社長たる地位に抜擢されますと、損失飛ばしを公表しようといった気持ちは薄れてしまって、ひたすら隠すことに執心することになります。自身を副社長に抜擢した元会長への恩義を感じたのか、それとも従業員から経営トップに近い地位になると「会社はつぶせない」といった責任感を抱いたのか、そのあたりはわからないところですが、ともかく同じ人間でも、社内における立場が変わりますと、職業倫理の意識も変わってくることを象徴しているように思えます。経営トップに近づくにしたがって、「全体最適」のためには不正を隠す、いや隠し通すことが有益なのだ・・・という考え方に支配されてしまうのでしょう。なにゆえこのように気持ちが変わってしまうのか、このあたりは是非知りたいところです。

こういった証言内容からしますと、外部窓口を設置する等、やはり従業員にとって活用しやすいヘルプラインを作り、非業務執行役員のところにも、重要な通報事実が(社長に届くのと同時に)届けられるような仕組みこそ、不正の早期発見のためには必要ではないかと改めて感じます。

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