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特集:「100年目の中国共産党」といかに向き合うか

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 今週から北京で全人代が始まりました。7月に「中国共産党100周年」が控えていることを考えると、しばらくは政治的に神経質な時期が続きそうです。まして来年2月には北京冬季五輪があり、秋には共産党大会で習近平体制が3期目を目指すそうですから。

 他方、米国もまた内向きの季節を迎えている。バイデン政権は何よりも国内の立て直しを優先しなければならず、それ抜きには米国外交も説得力を持ち得ない。米中両大国がともに内向きとなる時期に、米中関係は困難なものになりそうです。

 特に日本のポジションは微妙なものがあります。米国の関与がかならずしも頼りにならない状態で、どうやって中国と向き合っていけばいいのか。中国共産党や日中関係についてあらためて振り返ってみました。

●バイデン外交は嫌でも「内向き」に

 2月27日(土)、Zoomウェビナーによる一橋大学関西・中部合同アカデミア「新局面に入る米中の戦略的競争と日本」にパネリストとして参加した1。400人を超える視聴者が居た、と後で聞いて驚いたが、現下の米中関係への関心はいかにも高いようである。司会は一橋大学の秋山信将教授、それに中山俊宏慶応義塾大教授、津上俊哉日本国際問題研究所客員研究員、それに不肖吉崎という3人の陣容であった。

 あっという間の2時間半で、いろんな議論が交わされた。1週間たった今でも印象に残っているのは津上氏のいくつかの発言で、とくに冒頭のこの部分が心に刺さった。

最近の中国人は米国を馬鹿にし始めた。『コンセンサスを作れない民主主義って何なの?』 『コロナで自国民を50万人も死なせて、他国に説教ですか?』などと」

 いや、まったくおっしゃる通り。バイデン政権が対中関係を再構築しようと思ったら、まずは米国内のコロナ感染を抑制し、その上で民主主義が正常に機能することを示さなければならない。それを抜きにして、”Americaisback.Diplomacyisback.”と言っても対外的な説得力は回復しない2

 一例を挙げれば、ミャンマーでは2月1日に国軍によるクーデターが発生して、民主政権が倒されている。国軍の言い分は、「選挙に不正があったから」。さて、この事件に対して、1月6日のトランプ支持者による米連邦議事堂占拠事件は全く影響を与えていないだろうか?バイデン政権がクーデターを非難して対ミャンマー経済制裁を実施するとしたら、それは他国の眼にはどんな風に映るだろうか。

 あるいは2月19日に米国はパリ協定に復帰した。それは結構なこととして、4年後に再び共和党大統領が誕生した場合、「パリ協定は2度死ぬ」ことになってしまうのではないか。やはり大統領令で抜けたり入ったりできることが変なので、本来は米連邦議会で批准すべきなのである。それでは、パリ協定を上院で正式な承認手続きにかけた場合はどうなるのか。おそらくは合衆国憲法に定められた3分の2どころか、過半数の賛成も覚束ないのではないか。

 思うにトランプ時代の4年間は、「かくありたい」姿の米国と「ありのあまま」の姿のギャップを、世界に向けてさらけ出す効果があった。日本のような米国の同盟国としては、まさしく”Americaisback.Diplomacyisback.”であってほしい。だから、つい過去を大目に見たくなる。「トランプ外交はそんなに悪くなかったじゃないか」と思いたいし、「バイデンはしっかりやってくれるだろう」と受け止めたい。バイアスがかかっているのである。

 しかし、逆に中国やロシアといったRivisionistPowers(現状変更勢力)から見れば、米国への信認が失墜したここ数年は「もっけの幸い」であろう。あるいは「中国と米国のどちらを選ぶのか?」と迫られるような立場の国々も、「米国を以前のように当てにしていいのか」と大いに悩むところがあるだろう。

 しかるがゆえに米国外交の最優先課題は、何はさておき国内のコロナ感染を克服し、社会の分断を癒して民主主義の正常化を急ぐことになる。つまり「内向き」にならざるを得ない

 バイデン政権は、「ミドルクラスのための外交」という課題を掲げている。外交シンクタンクのカーネギー財団は、昨年9月に”MakingU.S.ForeignPolicyWorkBetterfortheMiddleClass”という提言を公表している。その執筆メンバーには今回、国家安全保障担当補佐官となったジェイク・サリバンも入っている3。これまで米国外交を担ってきたのは、党派や思想を越えた「エリート」たちであった。彼らはいつしか普通の国民から遊離していて、だからこそ「トランプ現象」を招いてしまった。まずはそこから立て直さなければならない、というのが今の米国にとっては辛いところである。

●中国が意識する「2つの100年」

 中国側から見れば、彼らが2001年にWTOに加盟した頃には、米国に追いつくことなど「夢のまた夢」に思えたはずである。ところが米国は何度もエラーを繰り返した。イラク戦争を始めて国力を浪費した。リーマンショックでは国際金融危機を招いた。そしてトランプ政権は、自国の信用を貶めるようなことをいくつも行ってきた。そして今回はコロナによる50万人超の死者である。今ではとうとう「米国の背中が見えてきた」。津上氏が言うように、米国への侮りが生じるのは無理からぬことかもしれない。

 今週3月5日からは恒例の全国人民代表大会が始まった。昨年の全人代がコロナ感染のために5月に延期となったことを考えれば、今年は中国が「平常へ回帰」したことをアピールする機会となるのであろう。

 当社調査グループの横尾明彦研究員のレポートを援用させてもらうと、2月26日に行われた中央政治局会議の内容から、全人代のおおよその議題を知ることができる。

 まず第13次五か年計画(2016~20)については、「主要目標は勝利のうちに完成した」。習政権の3大目標は「成長率、貧困撲滅、環境保護」であり、成長率こそ目標未達(6.5%以上のことろを5.7%)となったものの、後の2つの目標は達成している。特に貧困撲滅の達成を、習政権の偉業として強調することになるのであろう。

 本当に中国から貧困が消えたのかどうかは不明なるも、今日の中国が「1人当たりGDP1万ドル×14億人」という巨大な経済を擁していることは間違いない。既に日本経済の約3倍の規模となっている。しかも「中所得国の罠」に陥った様子もなく、高成長を続けていることは「お見事」と言わざるを得ない。

 次に第14次五か年計画(2021~25)については、「小康社会という第1の百年奮闘目標を実現した後、第2の百年奮闘目標に向かう最初の5年」と位置付けられている。考えてみれば、今年は中国共産党の「結党100周年」である。その目標はほぼ達成されたので、アヘン戦争以前の世界最強国家に返り咲くことが次なる目標となる。すなわち中華人民共和国の100周年となる2049年に向けて、米国を超える大国とならなければならない。

 ちなみに日経センターの予想によれば、以前は2035年頃とされていたGDPの米中逆転は、2029年頃に前倒しされるとのこと。コロナ禍によって、タイミングが早まったことになる。もっともGDPをドル換算ではなく、購買力平価(PPP)で比較した場合は、すでに中国が上回っているという見方もできるのだが。

 この「結党100年」と「建国100年」という2つの節目の重みは、外部の人間には想像し難いものがある。いくら平均寿命が延びたとはいえ、政治上の目標とするには100年は長過ぎる。普通は「5か年計画」だって十分に長いのである。

 それでも中国の将来を考えるには、この長い尺度に慣れる必要がある。なんとなれば、中国共産党はこの2つの節目を「物語(Narrative)」として利用しており、逆に彼らはそれに縛られる立場にあるからである。

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