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何を今更な「大阪IR、役所優位崩れる?」論

以下朝日新聞からの転載。

大阪IR、役所優位崩れる? 規模・時期めぐり譲歩 
https://www.asahi.com/articles/ASP354S0QP2TPLFA00W.html

大阪府・市は夢洲(ゆめしま)地区に誘致を目指すIR(カジノを含む統合型リゾート)の全面開業時期を白紙に戻した。整備を終える期限が切れなかったのはコロナ禍で経営が苦しい事業者に配慮せざるを得ないためで、役所優位のパワーバランスが変わったとの指摘がある。来場者の見通しも不透明になり、鉄道各社の延伸投資にも影響が出そうだ。
「何を今更」感が満載の朝日新聞の記事でありますが、パワーバランスが変わったのは別に朝日新聞が描いているような「コロナ禍で経営が苦しい事業者に配慮せざるを得ないため」ではなく、コロナ禍発生前の時点において既に大阪への投資意向企業が1社に限定されてしまい、行政と事業者の「1 by 1」交渉になってしまっているためです。私自身は海外の事例も交えながらこのことを、これまで幾度となく指摘しています。以下は2014年2月の当ブログのエントリから。

日本のカジノ開発に一兆円を投じるか? 答えは「Yes」
takashikiso.com/archives/8268483.html

特に行政サイドとして気をつけなければならないのは、こうやって競合業者を振るい落とし、行政との交渉が実質的にone by oneになった時点で多くの事業者は規制のあり方等に関して非常に強硬な条件交渉を始めるという点です。

当然ですが、このような状況の下での行政と民間との交渉は非常に難航します。行政側としてはすでに交渉相手が実質一つなわけですから、投資を獲得するためには大幅な譲歩をせざるを得ない。正当な形で民間の要望が制度に反映されるのは喜ばしいことなのですが、それはあくまで行政側に主導権がある場合に限っての事です。逆に、「唯一の投資企業」として民間側に強力な交渉カードがある中で行なわれるこの種の交渉は、当然のように民間サイドから無理な要求が出てきますし、往々として行政側が制度コントロールを失います。しかも、希望する条件が揃わなければ、事業者側は容易に「やーめた」といって撤退を始めます。
世界各地域のカジノ運営権入札において、民間側がライバルとなる事業者を「振り落とす」為、事前のメディアを使った競争等で開発投資規模の数字を釣り上げてゆくというのは、数多く見られる現象です。そうやってライバル事業者を廃し「1 by 1」の交渉に持っていければ儲けもんですし、一方でそのような事業者のリップサービスに過度な期待をした行政が競争ラインを引き上げまくったまま入札に突入したところで、その条件下では誰がやったって大した収益性を上げることができないですから「やーめた」と言って撤退をすれば良いんです。別に市場はそこだけではないですから。

特にグローバルに展開する企業にとっては、実は上記のような開発投資ラインの事前引き上げ競争を選択することに合理的な理由があり、一方で行政側はそのことを念頭に置きながら事業者のリップサービスに踊らず「現実的な」ラインでの入札運営を徹底し、競争は事前のリップサービスではなく入札を通して行わせる。それが必要なことであったわけです。

大阪に対しては、私自身はかなり早い時期からこのことを繰り返し述べてきましたが、残念ながら入札運営に失敗し、コロナ禍発生前よりかなり早い段階で「1 by 1」交渉の状況に陥ってしまった。また、横浜も実は現在、同じような状況に陥りつつあるギリギリのところにあり、今後どうなるか先行きがかなり不透明であると言えます。

結果的に、関東・関西の大都市圏のIR誘致に暗雲が立ち込めている一方で、従前よりそれよりも市場性が低いとされてきた地方部では、和歌山が2社、長崎に至っては5社の入札希望者を残しており、適正な入札競争がなんとか保てそうであるということは、非常に皮肉な状況。行政による入札運営の能力差が民間事業者の投資意欲の差に直接繋がってしまった事例として、今後、未来永劫に残してゆくべき事例であると言えるでしょう。

【参考】県IR誘致 5事業者の登録完了 8月に1社を選定へ /長崎
https://mainichi.jp/articles/20210216/ddl/k42/020/377000c

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