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91歳で退任 スズキ・鈴木修会長「客の動線を見れば経営者の資質がわかる」- 森岡 英樹

 スズキの経営トップを40年以上務めてきた鈴木修会長(91)。2月24日の会見で6月の株主総会をもって代表権を返上し、相談役に退くことを表明した。

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 修氏は2代目社長・俊三氏の長女と結婚し、スズキ入り。とんとん拍子で出世し、1978年に48歳の若さで社長に就任した。83年には他社に先駆けてインドに進出。5割のシェアを占める一大市場に育て上げた。社長就任当時、約1700億円だった売上高は現在、約3.5兆円。世界で知られる大企業となった。


会見の最後に「バイバイ。バイバイ」と手を振った ©共同通信社

 それでも「中小企業のオヤジ」を自認。販売店の家族構成まで知り尽くし、気軽に声を掛ける姿勢は変わらなかった。親交の深い元議員は、酒席でのこんな言葉が印象に残っている。

「客の動線をよく見ておくように。動線を見れば店が繁盛するか、経営者の資質が高いか低いか分かるから」

 自らは「勘ピューター」と謙遜するが、実際は細かな点まで目配りする精緻な経営だったことが窺える。

 そんな鈴木氏にとって、長い間、悩みの種は「後継者」問題だった。

「スズキでは2代目、3代目、そして4代目の修氏まで代々鈴木家の娘婿が社長に就いてきた。京都の商家のような事業承継だったのです」(スズキ関係者)

叶わなかった娘婿経営

 修氏が会長に退いた2000年、初めて創業家以外から戸田昌男氏が社長に就任。だが体調を崩し、僅か3年で退任。後任の津田紘氏も健康上の理由で、08年に退任してしまう。この間、鈴木氏が後継者に見据えたのが、「娘婿」だった。

「元通産官僚の小野浩孝専務です。ところが、07年に膵臓ガンで急逝。52歳の若さだった。当時の津田社長は葬儀で『修会長と2人で、あなたの“将来”を話し合った』と弔辞を読み上げました」(同前)

 結局、修氏が社長に復帰する。15年に長男の俊宏氏に社長の座を譲り、自らは再び会長に就任したが、

「事実上、80代後半の修氏が経営を主導していました。スズキは16年10月、トヨタ自動車との提携を発表しましたが、これも修氏が陰で動いたから。豊田章一郎名誉会長に提携を持ち掛け、章男社長に繋いでもらったことで一気に実現したのです。19年8月には資本提携にこぎつけましたが、その際、修氏は章男氏に『息子を頼みます』と頭を下げています」(同前)

 それでも寄る年波には勝てず、「最近は滑舌が悪くなっていた」(前出・元議員)という。密かに引退の意思を固め、今回の会見での電撃発表となった。

 自動車業界が激動期を迎える中、軽の盟主、スズキの「後継者」俊宏氏に課せられた役割は軽くない。

(森岡 英樹/週刊文春 2021年3月11日号)

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