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渚カヲルと『ウルトラセブン』のあのキャラの共通点 『エヴァ』が受け継ぐ昭和名作のDNA 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観る前に知っておいてほしい幾つかのこと - 岩佐 陽一

 苦節数か月、ファン待望の新作映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が来る3月8日(月)にようやく念願かなって公開される。この日をどんなに待ち続けていたか!? という方は少なくない……どころか並大抵の数ではないだろう。

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 最近ちょっと驚いたのは、『エヴァ』の原点たる第1作TVアニメや、そこに込められた庵野秀明総監督の、往年の名匠や名作へのオマージュについて知らずに観ているティーンから20代の世代とのジェネレーションギャップだ。もちろん知っていればいいということでもないが、知っていて損もないだろう。そこで今回、ご存知の方にはおさらい、ご存知ない方にはトリビア的に第1作目TVシリーズのその部分をクローズUPしてプレイバックしたいと思う。


2015年、東名高速下り線足柄サービスエリアに登場した「初号機」 ©時事通信社

岡本喜八、市川崑……随所に見られる昭和の名監督へのオマージュ

『エヴァ』第1作にして原点『新世紀エヴァンゲリオン』は1995年10月4日~’96年3月27日まで、テレビ東京系夕方にて全26回にわたって放送された。その斬新な映像や登場キャラクターにメカニック、何より庵野秀明監督のオリジナリティー溢れる演出が話題を呼び、放送中から今で言う“バズり”、そして放送終了後の映画化決定及び公開大ヒットで社会現象にまで発展した、’90年代を代表する名作アニメのひとつであり、レジェンドとなった。

 キャラクターについては割愛させていただきつつ、第七話のゲストメカ、ジェットアローンが、東宝映画『ゴジラ対メガロ』(’73年)に登場した“正義の意志で巨大化する”ロボット = ジェットジャガーのオマージュで、なお且つこのジェットジャガーのもともとの名前“レッド・アローン”から採られていたり、第拾(10)話のサブタイトル「マグマダイバー」が『ウルトラセブン』(’67年)のウルトラ警備隊配備の地底メカ = マグマライザーを意識していることは明白だったり……程度に留め置き、演出についての簡単な解説に移行しよう。

『シン・ゴジラ』('16年)の演出が、庵野監督敬愛の岡本喜八監督(『シン・ゴジラ』には写真でご出演!)の名作『日本のいちばん長い日』(’67年)や『肉弾』(’68年)を意識している事実は有名だが、第1作目の『エヴァ』は、岡本監督の『ブルークリスマス』(’78年)や『殺人狂時代』(’67年)を強く意識している。特に『ブルークリスマス』の英語タイトル『BLOOD TYPE:BLUE』は、そのまま使徒のパターンに引用されていることはファンには有名な話だ。

 またタイトルやサブタイトル、その他文字クレジット・テロップの書体やデザイン、出し方には、映画『犬神家の一族』(’76年)の市川崑監督、人物のUPや凝ったカメラアングルなどには『ウルトラマン』(’66年)や『帝都物語』(’88年)の実相寺昭雄監督へのオマージュが強く見られる。ただ見事なのは、先の『シン・ゴジラ』にも言えることだが、それらの要素を見事に一体化させていることだろう。一歩間違えばちぐはぐ、わやくちゃになってしまうそれらを、“庵野秀明作品”という、1990~2000年代を担う新しい世界観に昇華させたことが、庵野作品、樋口真嗣監督作品の最大の功績ではないだろうか?

 俗っぽい表現を使えば“いいとこどり”の結晶がまさしく第1作『エヴァ』という作品であり、最大の魅力でもあった。だが、このことで旧『ゴジラ』や『ウルトラマン』シリーズを知らない世代にも、それと気づかせぬまま自然に味わわせ、次世代に橋渡ししたことで世界的評価を得たのだろう。

使徒は成田亨の「ウルトラシリーズ」の怪獣たちのDNAを継承

 そして今(2021年)夏、ようやくこちらも待望の『シン・ウルトラマン』も公開が決まったが、使徒には『ウルトラQ』(’66年)、『ウルトラマン』、『ウルトラセブン』で怪獣及びメカニック・デザインを担当した成田亨のDNAが活きている。

『ウルトラQ』の怪獣バルンガやカネゴンのフォルム、『ウルトラマン』の怪獣ガヴァドンAや、異次元怪獣を体現したブルトン、『ウルトラセブン』のビラ星人やアンノン、ポール星人など、怪獣 = モンスターというよりは、一見したら前衛芸術か? と思わせる、トラウマ的に脳裏に焼き付くデザインが少なからずあった。それは成田の“彫刻家・画家”という肩書きに明白で、生粋の芸術家の作家性が反映された、真のアーティスト性がそこにはあった。だからこそ半世紀以上を経た今でも決して古びることなく語り継がれているのだ。

 特にそれは非人間タイプの使徒に顕著で、第4使徒のシャムシエル、第5使徒のラミエル、第6使徒のガギエル、第12使徒のレリエル、第16使徒のアルミサエル等々にその面影を見出すことができる。

 レリエルの体表に施された白黒のストライプ模様なども、『ウルトラマン』の三面怪人ダダや、『マイティジャック』(’68年)の敵組織・Qのメカなどによく見られる、成田亨が好んで用いる意匠のひとつだった。ここにも成田亨のDNAが新しい形で活きている。

『ウルトラセブン』のマゼラン星人・マヤを彷彿とさせる美少年・渚カヲル

 それら“異形の者”でなく人類、それも“美少年”として登場したのが、人類名・渚カヲル(声・石田彰)こと第17使徒のタブリスだ。人類でありながら異能ゆえにエヴァ初号機のパイロットとなり、それでもなお自分の居場所を見つけられない主人公・碇シンジ(声・緒方恵美)と心を通わせながらも、自らの使命の終焉に気づき、望んで初号機の掌中で、笑顔を浮かべて逝ったカヲル君の最期は、『ウルトラセブン』第37話に登場した美少女宇宙人(この姿が本体か否かは語られず終い)のマゼラン星人マヤ(演・吉田ゆり)に被る。

母星に裏切られ、恒星間弾道弾で地球もろとも抹殺されようとした彼女に、主人公のモロボシ・ダン(演・森次浩司)ことセブンは、宇宙人として共に地球で生きるよう彼女に手を差し伸べるが、宇宙人と地球人、どちらの世界にも自分の居場所を見出せないマヤは、自死を選ぶ……。

 庵野監督がどこまでこの作品を意識していたかは定かではないが、このエピソードの作者で名脚本家の市川森一が終生書き、訴え続けていたテーマ、“永遠に満たされることのない人間の孤独”が、監督の潜在意識に働きかけていたことは確かだろう。

 さまざまな名匠やクリエイターたちのDNAやメッセージを受け継ぎ、新生した劇場新作『シン・エヴァンゲリオン劇場版』への世間の期待値はあまりにも大きい。新型コロナ禍の渦中で、時代がまさに“新生”しつつある現在、昭和の偉大なるクリエイターたちの精神・心と魂を、庵野監督の作家性として新生させて未来へ繋ぎ、見事“新世紀”を築いて欲しい……と、一視聴者・観客として願ってやまない。

(岩佐 陽一)

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