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正論、説教について――『ロスジェネ心理学』を書きながら考えていたこと

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 ブログって何を書いても構わないんですが、新規に何かを書き出すのって、意外と難しく感じます。私の場合、特定の誰かの記事に言及したり手紙を書いたりするほうがスッと言葉が出てきます。気づかなかったことに気づいたり、言えなかったことを言語化できたり。

 ブログの醍醐味って、やっぱり「他人と言葉を交わすなかで自分の考えていることが変わっていく」にあると私は思うんですよ。一人で考えるだけなら、自宅のチラシの裏でも、Evernoteでもいいんです。でも、ブログとブログが言葉を連鎖させるうちに、自分の思念が形を変えて、ときに他人の思念すら変えていくとしたら、そこには可能性が眠っていると思うし、少なくとも私は刺激を受けているつもりです。最近は、ブログのトラックバックを時代遅れと言う人もいるらしいですが、そういう人は、言葉のバトンリレーとしてのブログの刺激を認識していないか、著しく軽視しているんじゃないでしょうか。もちろん、不特定多数を相手取って「○○のためのn個の方法」みたいな記事を書くのがいけないというわけではありませんし、私だってそういう記事が書きたい日もありますが。

 そんなわけで、『シロクマの屑籠』の記事のなかには、表面的にはトラックバックが張られていなくても、特定のブロガーや特定の人物に対するピンポイント言及の形をとっている記事がかなりあります。面白いことに、そういう“ステルストラックバック”って、まず間違いなく届きます。こっそり反論書いてやろうとか思っていると、すぐ見つかって「俺のことかー!」とお返事を頂いたりもします。たまに、当人以外の不特定多数が「俺のことかー!」って反応することもありますが。

 前置きが長くなりました。

 今回、コンビニ店長のid:lkhjkljkljdkljlさんに拙著『ロスジェネ心理学』について感想を頂きました。感想を頂いたから言語化できることもありそうなので、お返事を書いてみます。

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ロスジェネ心理学―生きづらいこの時代をひも解く

 1.店長、拙著『ロスジェネ心理学』を買ってくださり、しかも感想までよせてくださり、ありがとうございました。世代も生育環境も異なるであろう人の手許に拙著が届き、読んで頂けるのはとても嬉しいことです。

 この本は、バブル景気が終わってから就職した人達、とりわけ、なんとなく大学に入り、なんとなく大学を卒業したような人達を念頭に置いて書きました。それとバブル世代に属してはいたけれども“フリーター”“とらばーゆ”的言説に乗せられて漂流した挙げ句、30代ぐらいになって着地点が無いことに気づいて慌てはじめた人達とか。「自由な進路選択」「とりあえずいい大学へ」的言説に乗せられて、気づいたらにっちもさっちもいかなくなるような人が、私の視界にはやけに沢山いたんです。これは職業的な視野の偏りかもしれませんし、ゲーセンを私生活領域とし、00年代にあっちこっちのオフ会に顔を出して回っていたせいかもしれません。私にはそうした人々が他人事には見えませんでした。

 「ノマド」って言葉が、いくらか意識の高い*1人達の慰安物になっているのと同様、当時“フリーター”“とらばーゆ”言説に振り回されていた若者ってのは、ちょっと育ちの良い子女だったと私は思っています。少なくとも、(今でいう)ヤンキー・DQN圏域の人達は“フリーター”“とらばーゆ”言説を真に受けたり、そういうフレーズに自意識の慰安物を見いだしたりはしていなかったと記憶しています。

 それと、なんとなく大学・学科に入った人達や「親に言われて」受験戦争を戦った人達にも、親が子どもに塾通いをさせたがる程度に意識の高い家庭*2の出身者が多かったと回想します。医学部同期にはそういうタイプはあまりいませんでしたが、他学部の同期や、オフ会やネットで知り合った人のなかには、そういう感じの人が結構いました。このあたりも、私がオタクで交友関係が偏っていたせいもあるかもしれませんが。そうした人達のなかには、難しい境遇に直面した人達が少なからずいました。2005~2007年の、はてな非モテ論壇周辺にも、そういう表明をしている人や、人生をこじらせているっぽい人の姿を見かけたように思います。

 『ロスジェネ心理学』って、やっぱり「ニュータウン」の本なんですよ。表紙の写真は、埼玉県方面から東京スカイツリーをのぞむアングルですが、こういう風景の、こういう故郷を持つ世代の人達のための本といいましょうか。そういう意味では、店長の境遇は、世代的にも故郷的にも離れているんだろうと推察します。あと、『レジデント初期研修資料』のmedtoolzさん。medtoolzさんも、「同じ時代を生きていても、こんなに見え方が違うのかと驚いた」と仰っていました。育った世代・育った故郷・育った家庭が違っていれば、娑婆の見え方が違う。当然だと思います。“失われた二十年”とは言うけれど、見えている風景も生きている精神も、みんな違うんですから。

 でも、だからこそ本にして良かったなと思ってます。日頃、ブログを色んな人に文章を読んで頂けて、本当にありがたいと思っているんですが、普段ネットを読まないような人達にも手にとって頂ける可能性を秘めた、書籍という伝達手段は、これはこれで魅力的だと感じます。「ふーん」と言ってくれる人の手許に12万字のまとまったテキストが届けられるとしたら、頑張った甲斐があったものです。同人誌でやるという手もありますが、同人誌の場合、シンパシーの射程距離がそのまま書籍の射程距離になってしまいそうです。例えばの話ですが、60歳~70歳の精神科医が、私のブログや同人誌を読むかって言ったら読まないでしょう。でも、書籍なら、ふとしたはずみで手に取って「ほー」と言うかもしれない。その、射程距離の意外性が気に入りました。いつかまた、書籍を出せるご縁があったら、やってみたいものです*3。紙幅の都合で書けなかったことが山のようにありますから。


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