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3倍近くも増えた鹿児島市への移住、東京一極集中にも変化の兆し? - 中西 享 (経済ジャーナリスト)

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コロナ禍が長期化の兆しを見せる中で、東京都や大阪府から地方都市への移住に関心が高まっている。特に目立っているのが30~40歳代での故郷の地方都市への回帰移住だ。

(SeanPavonePhoto/gettyimages)

東京都の人口をみると、2021年1月1日現在で1396万236人。20年までは毎年増加してきていた。しかし、月別で見ると昨年の8月1日から今年2月1日現在まで7カ月連続で前月より減少している。昨年8月と9月は前月比較で1万人以上も減り、今年1月は7000人以上減少した。東京都の場合は、埼玉、千葉、神奈川県への転居が多いようだ。

また大阪府は、10月1日時点での国勢調査をもとに大阪府推計人口によると、2010年をピークに20年まで毎年減少を続け、直近の1月は12月より3000人以上減少している。この落ち込みは自然減に加えて、転出人口が転入人口を上回る社会減も増える傾向がみられる。東京都、大阪府の人口が減少した要因がコロナ禍によるものかどうかは、分析にもう少し時間が必要だが、これまで長く続いてきた東京一極集中の傾向にも変化の兆しが出てきているようにも見える。

若者の相談件数が増加

地方移住を支援している、ふるさと回帰支援センターの高橋公理事長によると、「昨年の6月くらいから移住を本気で考える相談件数が増えている。首都圏を取り巻く県への移住希望が目立っている。2020年の同センターへの相談件数でみると、6~12月は前年比で、茨城県が1.8倍増、神奈川が1.4倍、群馬が1.3倍と昨年の緊急事態宣言後に大幅に増えた」と指摘する。

その背景として「2010年ごろまでは移住希望者は50歳以上のシニアが多かったが、この数年は30歳代の若者層の地方都市への移住相談件数が伸びている。センターの利用者を世代別にみると、30歳代の利用者割合が18年は28.9%、19年は26.6%と多くなっている。

大都市の場合、『非正規』の若者労働者は、いくら働いてもなかなか正社員にはしてもらえない。努力が報われないことも影響しているのではないか。重要なのは、この新しい芽を広げるために自治体は移住促進のための受け皿を作ってほしい。政府は移住支援のためのバラまきの補助金をつけるのではなく、移住者目線の政策展開ができるように、各自治体が特徴ある移住施策を展開できる交付金に転換すべきだ」と訴えている。

しかし、相談件数の増えている茨城県の移住担当者に聞いてみると、実際に移住した数の目立った増加はまだ見られないという。県の南西部は、電車が都心に乗り入れるなどして通勤が便利になってはいるが、企業のリモートワークが今後どの程度まで進むか見極めたいという人もいるようで、移住がどのくらい増えるのかをつかみかねている。

また、群馬県の担当者は「移住をサポートするサイトへの昨年のアクセス件数は一昨年と比べて2倍に増えてはいるが、実際に移住した人数は増えてはいない。緊急事態宣言もあるので、移住地を実際に見に行けないこともあり、まだ移住を検討している段階にとどまっているのではないか」とみている。

地元出身者の回帰の傾向

そうした中で、鹿児島市に移住する人が増えている。2019年度の同市への移住者は22人だったが、20年度(21年2月末現在)は63人と3倍近くも増えた。63人のうち、出身地を把握している33人の内訳をみると、鹿児島に縁のあるUターン(市内出身者)が約7割、Jターン(県内出身者)が約1割で、Iターン(県外出身者)が約2割。

「昨年度は、Uターン者が約4割、Iターン者が約6割となっており、今年度は鹿児島市出身者の地元回帰の傾向が顕著になっている」(室田久敏・鹿児島市役所企画財政局企画部移住推進室長)と指摘する。鹿児島市の魅力や生活環境に触れるため、一時滞在する際などに特典サービスを受けることができる「かごしま市IJU倶楽部」の加入者は2月末現在で54世帯115人と、これも増えている。

移住者が増えた理由について室田室長は「相談件数は昨年5月ごろから増えてきている。地方への移住に関心が高まる中で、自然の魅力があり、観光やビジネスで鹿児島を訪問して移住への興味がわくケースなどが多いようだ。テレワークが増加したことから地方でも大都市圏とつながって仕事ができるようになったことも移住が増えている要因の一つではないか。

移住に関心がある人に対しては、鹿児島市に一時滞在する際のホテルやレンタカー利用の特典サービスなどが受けられる『IJU倶楽部』という制度を設けており、これを利用してお試し移住生活を体験してほしい」と話している。

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