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「法人税率の引下げ」よりも前にやるべきことがある

「衆院選で焦点の経済活性化策の一つとして、各政党が法人税率の引き下げを提唱している。約40%だった法人税の実効税率は約35%に下がることになっているが、企業の国際競争力を高めるには一段の減税が必要との見方があるためだ」(12月11日付日本経済新聞 「法人減税 再び焦点」)

経済対策として、「日銀の金融緩和」とともに各政党がこぞって提唱しているのが「法人税率引下げ」である。11日に開かれた「年末エコノミスト懇親会」に参加した企業経営者ら約350人からも、衆院選後に発足する政権に対して「法人税率の引き下げ」を求める声が相次いだことが報じられている。

しかし、多くの党やエコノミスト、経営者が提唱しているからといって、「法人税率引下げ」が経済対策として有効な政策であるということではない。ユダヤ人の教えに、「多数決で全員同じ意見=満場一致になった場合は、その提案は採択しない」というのがあるが、この教えに従えば、「法人税率の引下げ」は「採択しない」方が良い政策である。

「法人税率の引下げ」の根拠の一つは「雇用促進」である。しかし、少なくともこの20年間、約40%だった法人税率が25.5%まで引き下げられる中で、結果的に国内で起きて来たことは「雇用不安」である。

1992年と2012年を比較すると、「雇用者」は4,877万人から5,511万人へと634万人増加する中、「正規の職員・従業員」は3,639万人から3,327万人まで312万人減少する一方、「非正規の職員・従業員」は897万人から1,829万人まで、実に932万人増加している。こうした事実から言えることは、現時点では「法人税率を引下げても、企業が雇用を増やす保証はない」ということである。「法人税率を引下げても、企業が雇用を増やす保証はない」ということは、「法人税率引下げ」は、単に税収の減少を招くだけである。

みんなの党は「実効税率を20%へ減税する」と、今より4割程度下げることを公約に掲げ、自民党は「国際標準に合わせて思い切って減税する」としている。

日本の租税特別措置法では、「著しく低い租税負担割合の基準を20%以下」とし、そうした国と地域を「タックスヘイブン(tax haven:租税回避地)」と定めている。この定義に従えば、「実効税率20%」という主張は、「日本がタックスヘイブンになる」と言っているようなものである。

この記事では、財務省が公表している「法人税の実効税率」という各国の比較したグラフも掲載しているが、そこに含まれている「シンガポール」は、世界的にも「タックスヘイブン」に含められている国である。こうした国と比較して日本の法人税率が高いのは当たり前で、これを以て「日本の法人税率は世界的に高い」というのは誇大広告である。

「消費者の節約志向を受け、大手スーパーの食品や日用品の値下げ合戦が過熱している。西友やイオンなどに続き、イトーヨーカ堂も今月一日から価格を引き下げた。…(中略)… だが、こうした値下げによっても、売上高全体を大きく押し上げる効果は出ていないようだ。値下げ直後の既存店売上高は、西友が7~9月で前年同期比1.9%減、ユニーが8月で0.4%減、ダイエーが10月で2%減と苦戦が続いている」(12月12日付 東京新聞 「大手スーパー師走の消耗戦 値下げ競争過熱 」)

日本経済の大きな問題点は、この記事に示されているように、「価格弾力性(価格の変動によって、ある製品の需要や供給が変化する度合いを示す数値)の低下」、つまり、価格を下げても需要が伸びなくなって来ていることである。これは、足元の日本経済が完全な「需要不足」、そして「デフレスパイラル」に陥っていることを示したものである。

こうした経済状況から脱却するために、「法人税率の引下げ」による「雇用の促進」を通した「個人消費の拡大」という、この20年間殆ど効果が表れなかった「間接的な政策」をさらに強化していくことに、どれほどの価値があるのだろうか。

「前に進むのか、後ろへ戻るのか」。

野田総理のこの問いかけに準えれば、「法人税率の引下げ」という政策は、「前に進む」政策というよりも、「後ろに戻る」政策である。「前に進む」のであれば、これまで効果が発揮されなかった、法人を経由した「間接的な政策」から脱却すべきである。なお、「需要不足」社会において、「需要不足」をより加速させる消費増税という「直接的な政策」は、最悪の選択である。

「法人税率の引下げ」による「雇用の促進」を通した「個人消費の拡大」。

多くの経済の専門家や識者達は、この20年間日本では実現していない、こうした美しい理屈を掲げて「法人税率の引下げ」を支持し続けている。それは、マーフィーの法則の「ホーングレンの考察 … 経済専門家にとっては、現実世界は特殊ケースである」を地で行く「現実離れした思考」でしかない。

「法人税率の引下げ」よりも前にやるべきことがある。

新政権には、大企業重視の政策とは違う、「次元の違う」経済対策が求められている。

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