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解呪と供養のためにシン・エヴァンゲリオンを観に行く


『シン・エヴァンゲリオン劇場版』本予告・改【公式】
 
公開情報と延期情報が行ったり来たりしていたシン・エヴァンゲリオン劇場版の日がとうとう近づいてきた。
 
シン・ヱヴァンゲリヲンではなくシン・エヴァンゲリオン。
 
10年ほど前は、こういうカタカナの違いを云々する30代のオタク古参兵みたいな人が仰山いたような気がするが、それも記憶の彼方となった。アマゾンプライムやテレビ波で『新劇場版ヱヴァンゲリヲン』の過去三作が公開され、SNSで話題になることもあったけど、もう、カタカナの違いにこだわって大きな声をあげるような人は稀だ。エヴァンゲリオンを一生懸命に語ること、それも、90年代や00年代のようにエヴァンゲリオンを語ることはとても難しくなっている。  

801ちゃんはこんな風に言うのけど、俺ってエヴァ好きだったのかなぁ……。
いや、好きだったはずなんだ。
エヴァンゲリオンは青春そのものだった。
だけど公開初日の映画館を予約しても気持ちが乗って来ない。
 
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言のために公開が延期になった時も、私はホッとしていた。エヴァンゲリオンの完結編に向き合う気持ちが出来ていなかったからだ。何年も何年も待ったエヴァンゲリオンの完結編をついに観られるとしたら、それはエヴァおじさんやエヴァおばさんにとって宿願であるから、その宿願にふさわしいムードというか、構えがなければならないはずだった。少なくとも10年ぐらい前は、そういう高揚感をもってエヴァンゲリオンの完結編をお迎えしたい熱意が私にはあった。
 
ところが実際に公開が近づいて来ても高揚感は訪れず、気持ちが重たいままだ。 「エヴァンゲリオンの完結編を見なければ人生が完成しない」。
わかる気がするフレーズだ。
『シン・ゴジラ』が公開された頃ぐらいまでは、私もそう言っていたかもしれない。だけどあれから10年近い歳月が流れ、私はエヴァンゲリオンとは無関係に年を取っていた。元号も平成から令和に変わり、私たちは思春期から遠い地点から碇シンジや式波アスカラングレーや葛城ミサトらを観測しなければならない。
  
思春期の残照が残っている状態でエヴァの新作を見るならともかく、思春期が枯れ果てた状態でエヴァの新作を見て、いったい自分は何を得るのだろう?
 
仮に、登場人物たちにとって最高のエンディングがみられたとしても、それでどんな功徳が得られるというのか。実際には、どれほど恐ろしい結末が待っているかわかったものじゃない。エヴァンゲリオンの思い出の晩節を汚されるような事態になってしまうかもしれない。楽しみにするより、怖さが先立つ。
 
ここまで後ろ向きな気持ちになっているのに、「エヴァンゲリオンの完結編を見なければ人生が完成しない」という思いに私はとらわれ、映画館のチケットを買っているわけだ。まるでエヴァの呪いではないか。
 
ああ、そうだ! これは呪いだったのだった。私は思春期にエヴァンゲリオンを見て、そこで心をメタクソに打ち据えられて、人生の20%ほどが変形してしまった。心に刻みつけられた呪い、いや、呪いでないとしたら契約かもしれないが、それを解くために映画館に行かなければならないのだと書いていて気づいた。
 
それと供養。
 
うまく言語化する自信がないのだけど、私はエヴァンゲリオンがの登場人物たちに対して「生きてもらいたい」気持ちと「死んでもらいたい」気持ちの両方を抱いている。
「生きてもらいたい」とは、新劇場版4作の結末として、登場人物たちが大団円を迎えてその後の世界で生きていて欲しいという気持ちだ。でもそれだけでなく、「死んでもらいたい」、もっと言えば「頼むからもう成仏してください」という気持ちもある。
 
1997年の夏に完結したほうの『新世紀エヴァンゲリオン』は、ファナティックな視聴者の心に大きな爪痕を残した。それを補完するかのように始まった『新劇場版ヱヴァンゲリヲン』はエヴァンゲリオンのやり直しのようにも、昔の劇場版に不満のあるファンへの救済措置のようにも見えたけれども、結果として、私たちをエヴァンゲリオンに繋ぎ止める鎖になってしまった。そういう意味では、新劇場版の碇シンジや式波アスカラングレーや葛城ミサトは思春期の亡霊みたいなものだ。あの人たちの物語が終わらない限り、ファナテックな視聴者の思春期が終わりきらない。いや、私たちは中年になったにもかかわらず、心のなかのエヴァンゲリオンだけが思春期の終わらない宿題となって疼いている──。
 
とにかく明後日、解呪と供養を期待して映画館に行こう。これで終わって欲しい。終わっていただきたい。終わってもらわないと困る。お願いですから終わりにしてください。終わらなかったら恨んでやるからなー!

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