
3月7日放送の「R-1グランプリ 2021」で4度目の決勝進出を果たしたことが話題を呼んでいるお笑い芸人・ゆりやんレトリィバァ。これまで数多くの賞レースで好成績を残してきた彼女は、今もなおコンテストに挑み続けている。
関西大学文学部在学中の2012年、吉本興業の養成所・NSCに第35期生として入学したゆりやん。翌2013年の卒業時には「NSC大ライブOSAKA」で同期生とのネタバトルを勝ち抜き、見事に優勝を獲得。芸人として華々しいデビューを飾った。
テレビやラジオでの活躍を通じて徐々に世間に知られるようになるが、転機が訪れたのは2017年だった。2月に若手芸人の登竜門として知られる「NHK上方漫才コンテスト」に出演するとライバルを抑えて優勝を果たし、すでに50年以上の歴史を誇るコンクールで女性ピン芸人としては初の快挙を成し遂げた。
さらに同年12月、第1回となった「女芸人No.1決定戦 THE W」にも挑戦。抜群の英語力を織り交ぜたトークスキルと、特技のダンスを活かしたキレ味鋭い動きを武器に、600組を超える参加者の中からトップに選ばれることになった。
評価と知名度を手中に収めたゆりやんだが、その後も賞レースへと挑み続けることになる。2015年、2016年と第3位にまで上り詰めていた「R-1グランプリ」では、2018年に準優勝を獲得。2019年にはアメリカのオーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント」に出演し、海外からも注目を集めた。
賞レースに挑み続けることにはリスクもある。優勝という輝かしい功績を持つにもかかわらず、予選敗退に終わることで世間からの評価が下がってしまう可能性もあるからだ。実際に初代王者に輝いた「THE W」では、2018年、2020年ともに決勝には進出したものの、1stステージ敗退という結果に終わっている。
あくまでも知名度を上げるためのステップアップの一つとして賞レースを捉えるのであれば、すでに世間からの評価を確立したゆりやんには必要がないように見えるかもしれない。ではなぜ、彼女はアスリートのように戦いに挑み続けているのだろうか。お笑い評論家のラリー遠田氏は、その意義をこのように解説する。
「ゆりやんレトリィバァさんは、ああ見えて意識が高いストイックな芸人です。バラエティ番組ではどんな状況でも細かいボケをねじ込んでくる度胸があるし、タレントとして有名になってからも相変わらず新しいネタを作り続けています。最近、大幅なダイエットに成功したのもそんな意識の高さの表れでしょう。賞レースに出続けているのも、そんな彼女にとっては当たり前のことなのだと思います」
賞レースに挑み続ける理由について、ゆりやん本人はインタビューで「自分を更新していきたいから」と語っていたこともある。コンテストで優勝するかどうかは、最終的な目的ではなく、あくまでもストイックに自分を更新するための過程の一つなのだろう。そしてそのように彼女が自分自身と勝負し続けることこそが、新しい世代の女性ピン芸人の像をも更新することに繋がっていくのかもしれない。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)